「超英会話コミ力」がいい本であるという話

こんにちは、井上です。

今日は、「超英会話コミ力」という英会話の本について話していきます。

この本は著者の嶋津さんから献本してもらいました。アジアNo.1英語講師であり、普段はIELTSを主に教えている嶋津さんが資格試験じゃない本を書いたのが興味深くてじっくり読もうと思ってたんですが、学会発表や論文執筆が忙しくて、せっかく献本してもらったのになかなかきちんと目を通せませんでした。でも、時間ができたのでやっとある程度時間をかけて読めたんで感想を述べさせてもらうと、一言で言えば愛を感じるいい本です。

なぜそう思ったかというと、日本で英語を勉強してある程度「英語できるぜ!」と感じた人が実際に海外に行くと直面しがちな悩みの解決策になるようなことが書いてあるからです。これは、日本でTOEIC900とか英検一級とかいわゆる「(日本だと)英語できる」って言われる資格取って、それで英語圏の国に行ったことがある人だととみんなわかると思うんですけど、全然上手にコミュニケーション取れないんですよね。正確に言えば、一対一とか大学の授業とかなら話せるけど、ネイティブ同士のコミュニケーションに全く入れない。

なぜそうなるかと言えば、もちろん語学力的な問題もあるけど(資格試験の英語はフォーマルな英語に偏っているので、普通の日常会話で使うような語彙が出てこない)、そもそも論としてどうコミュニケーションとっていいかわからないというのがあるわけです。

これは英語に限らずすべての言語でそうですが、会話ってかなり細かくプロトコルが決まってて、その決まったプロトコルに基づいて話は進行します。なので、プロトコルを身に付けてないと、そのプロトコルを身に付けている人が沢山いる場所には入れません(なので一対一なら話せても、ネイティブが複数いる場所には入れなくなる)。

そして、自分がそのプロトコルを身に付けているかどうかは資格試験だと試されません。なぜなら、先ほども述べたように試験の英語というのは基本的にはフォーマルな場でのセッティングだし、たとえ面接があるとしてもそこには面接官と受験者というフォーマットが存在するので、普通の会話で必要とされるプロトコルとはまた違うからです。

ちなみに、ネイティブ講師と会話練習をしていても、実際に現地に行くと苦労するのも同じことで、結局英語の授業である以上最初からそこには先生と生徒というフォーマットが存在するわけです。でも、現地に行って英語でコミュニケーションする場合、生徒と先生以外のフォーマットでコミュニケーションしないといけない。けど、その方法論を習ってない。だから、たとえネイティブの先生に習っていても、現地に行くと苦労するわけです。

別の言葉で言えば、日本だと語学学習者としての立ち位置で語学を使うというのが前提に組み込まれている。でも、現地に行くとその前提から抜け出し、自分でコミュニケーションの枠組みを組み立てないといけなくなる。でも、その方法論を習っていない。だから、資格試験の点数が高くても、上手くコミュニケーションが取れないという現象が多発するわけです。

この辺りは、言語学のジャンル的には語用論や会話分析と呼ばれるものです。英語の学参で言えば、「知られざる英会話のスキル」という本があり、これは英語での会話のプロトコルを学ぶ上ですごくいい本でした。ただ、難しくて(そしてたぶん理解してくれる人が少なくて)絶版になってしまいました。また、書き方自体も大人向けでした。そのあたり、嶋津さんの本は自身が教えている中高生でもわかるように書かれているので、英語がそれほど得意ではない一般の人でも利用しやすいのではないでしょうか。

井上自身も、海外ドラマで使われるフレーズを集めた本を昔書いたんですが、その本でも取り上げたようなフレーズが出てきて、「あー、やっぱりみんな同じようなこと感じるんだな」と思って面白かったです。


上記のような理由から、資格試験でいい点取って授業はそれなりについていけても、実際のコミュニケーションに苦労するってのは国内で英語を学習した人あるあるだと思うし、そうした人が必要としている情報を提供することで自分と同じような苦労をせずに海外で活躍してほしいというパッションを感じるいい本でした。

中に出てくるエピソードも、海外行ってやりとりしてると「わかるわかる」的な体験談が多くて共感できるものでした。 海外に行きたい人は色んな意味でいい予習になると思うので、今IELTSやTOEFLの対策してて、その後は海外に行きたいという人はぜひ買ってみてください。

使い方ですが、個人的には、このくらいの長さであれば、例文見ないで付属の音声を聞きこんで口で言えるようにして、例文ごと覚えるのがいいんじゃないかなと思います。実は、今日このやり方で教えてみたんですが、なかなかよさげでした。ただ、その人はカナダの人で本自体を変えるかわからないので(この本には電子書籍もありますが、カナダで電子書籍が買えるかはわからない)、ほかの人に教える時に試してまたレポートしようと思います。

とりあえず、海外に行きたい人、日本にいるけど外国人の友達が欲しい人は買いの一冊です。解説の日本語読んでるだけでも、コミュ力あがるので、「どうやって英語を話せばいいかわからない」という人はぜひ購入ください!


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外国語怨念解消note
高度な外国語力を身につけたい人、テストで結果を出したい人に向けて役立つ情報をつぶやき中。TOEIC980点。早稲田英文→早稲田仏文修士→上智外国語学部修士→上智大学博士課程在学中。英語・仏語・西語・伊語の参考書&翻訳書も出版。著書一覧→http://amzn.to/jzUDtr