会話フランス語の主語に名詞はほぼ来ない!
こんにちは、井上です。
このnoteの目的
今日は下記の本を使って、会話のフランス語の一つの特徴である、「主語に名詞はほぼ来ない!」と言うことについて話していこうかなと思います。
で、いつものブルデューの解説が途中なのに、なんでそんなことを話すのかですが、これを理解していないと、仏検で消耗してしまう可能性があるからです。仏検を目指して学習している人は多いし、それはそれで意味があるわけですが、しかし、あの試験は会話力を伸ばすのに向いている試験ではありません。
なぜかはこれから話していくわけですが、でも最初に「仏検対策≠フランス語の会話対策」ということを理解していないと、「せっかく仏検に合格したのに思ったようにフランス語が話せない…」や、「仏検勉強していても、フランス語話せるようにならないけど、このまま続けていいのかな…」と悩んでしまうからです。
そう言う人を減らしたいので、きちんとフランス語会話について理解してもらう一旦として、このnoteを書くことにしました。
勉強する上での二つのポイント
最初に指摘しておきたいのですが、勉強には二つのポイントがあります。それが何かというと、下記の二点です。
1:正しいお手本を選ぶ
2:そのお手本を正しく真似をする
当たり前ですが、お手本を真似するときに、お手本が間違っていたら意味がありません。また、お手本が正しくても、正しく真似できてなければ、やはり無意味です。
なので、勉強する上では、次の二点に気をつける必要があります。
1:真似しようとしているお手本は正しいか?
2:自分はそのお手本を正しく真似できているか?
この二点が重要なわけですが、1に関していうと、そのお手本が正しいかどうかを常に検証している人がいて、それが研究者です。なぜそんなことをするかというと、繰り返しになりますが、「真似ようとしているお手本が正しくない」となってしまうと、「そのお手本を正しく真似ようとしても無意味」になってしまうからです。
なので、研究者はお手本、つまり教科書に書いてあることを検証するわけですが、フランス言語学の部分でも、そういうことをやっている人がいます。それが例えば、下記の本なわけです。
で、こういう会話フランス語の研究をした本によると、必ずしも書き言葉と話し言葉のフランス語は同じではありません。むしろ、文体レベルでは大きな違いがあり、文法自体は共通していても、その文法をどう使うかになるとかなり話し言葉と書き言葉で違いが出てきます。
そして、今のフランス語の文法であり、資格試験は主にフランス語の書き言葉を中心に作られていますし、特に仏検は上の級であればあるほど、その傾向が強いです。ですので、そこを理解しないまま、「フランス語を勉強するなら、やっぱり仏検!」と思って勉強を始めると、そこで使われているフランス語が話し言葉ではなく書き言葉のものである、つまり自分が理想としているお手本と現実が違うので、頑張ってお手本を真似たにも関わらず、望ましい現実が得られない…。そういうことになってしまう可能性があると。
で、こういうことは当然フランス語学業界では知られているのですが、そういう知識はどうしても属人的なので、ついつい大学の仏文学科周辺で止まってしまい、仏文科などに所属せず、一人で勉強している人のところに届かない。だからこそ、そういう人にも届けようと思って、こういう記事を書いているわけです。
仏検の元ネタ(多分)
ちなみに、そもそも論として仏検準1級、1級の名詞化問題なんですが、僕はあれはあれとして必要だと思っています。なぜかというと、フランス人もああいう訓練しているからです。
上記の本に下記のStylistique françaiseという本が引用されていて、その中に仏検的な名詞の書き換え問題が載っているんですね。
例えば、こういう書き換え。
Il est indispensable que la question se règle avant que votre bail expire.
↓
Le règlement de la question s'impose avant l'expiration de votre bail.
僕はこの本自体は読んだことないんですが、でも下記の本の旧版にも出てくるし、京大の「フランス語中上級向け教材・参考図書リスト」にも”正確で厳密な文章表現に必要な文体の習得を目的とした一冊。平易かつ的確な書きかえ を中心とした用例が豊富に含まれている点が特徴的。1972 年の時点で 20 版を重ねたロン グセラー。ただし絶版のため、入手は古書で。”と書かれてますし、まあ、有名な本なんだと思うんですよね。
なので、上記のstylistique françaiseそのものじゃなくても、そういうフランス語の書き言葉の文体対策マニュアル的なものがあり、それが巡り巡り仏検に影響を与えてるんだと思うんですよね。ちなみに、さっきフランス語学習の世界が属人的であり、フランス文学科などに所属していない人には届きにくいと書いたのもこういいうことで、探せば色々出てくるんですが、普通に本屋さんで買える売れ筋の本とかに、こういう上級者向けの情報が書かれてなくて、ほぼ初級・中級レベル向けの情報なんですよね。言い換えれば、英語と違って上級者向けの情報が商品化されていないので、お金で買えない。だから、勉強している人も手に入れられない。なので、上達しない…。そういう理由もあり、このブログを書いているわけです。
話し言葉では主語に名詞はほぼ来ない
いよいよ本題です。
例えば、さっき紹介したApproches de la langue parlée en françaisのp.73では、話し言葉では動詞が、書き言葉では名詞が用いられるとした上で、こんな文章が紹介されています。
話し言葉:il a parlé et il a été applaudi
↓
書き言葉:Les applaudissements ont succédé à sa prise de parole, sa prise de parole a déclenché (provoqué) des applaudissements.
これを見るだけでも、話し言葉と書き言葉は全然違うし、仏検って書き言葉対策なんだなというのがわかると思います。上記の本のp. 118には対面の会話では、名詞が主語として用いられるのは、平均15パーセントを超えないと書いています。で、その場の勢いで話していると、下記の文章のように主語に名詞が全く用いられないこともあると。
−l'automne qu'est-ce qu'on fait il fait pas encore trop froid on fait des ballades euh qu'est-ce qu'il y a encore -- bon on reste un peu au coin du feu quand il fait quand il fait un peu frais autrement bon après l'automne i y a l'hiver alors l'hivers bon comme j'ai dit tout à l'heure il neige pas beaucoup hein là-bas - c'est vraiment si il neige c'est ça recouvre juste le sol euh euh l'hiver bon là on reste dans la maison
上でも書きましたが、句読点がないのは、会話をそのまま再現しようとしているからです(僕ではく、上記の本の筆者がこの形式を採用している)。で、i yとなっているのはil yで、ilのlの音が省略されたことを示しています。多分、確認したわけではないですが、easy frenchがこういう話し方なんじゃないかなと思います。
読めないのにリスニング訓練しても無駄!
いかがでしたでしょうか? 簡単ながら、これだけでも仏検の問題と会話って違うのがわかるんじゃないかと思います。ただ、だから無駄かというとそうじゃなくて、これを踏まえた上で学習しよう! そういうことです。
あと、これ見てもわかると思うんですが、会話のフランス語と言っても結構長いし、これを会話スピードで読むのってそれなり難しいと思うんですよね。最低仏検2級とってないと無理だし。下手すると、準1級レベルないと無理なんじゃないかな。そういう意味でも、結局読解力なんですよね。
みんな耳が慣れてきたとかいうけど、あれほど無駄なことなくて、読めないのに聞き取れないし、その読めるのレベルはほとんどの人が思っている高いよと。そんな感じです。
では!
井上大輔
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