
「AIを使って仕事する」より大切なのは「AIのアウトプットを誰が見せるか」という話
こんばんは。
akiです。
今日はAI時代の人間性の話について深めてみます。
はじめに
最近、AIを活用したコンサルティング案件がますます増えています。私の場合はデータ基盤の設計や分析環境の最適化など、以前はとても時間と手間がかかった検討事項を、AIを使うことで効率よくまとめられるケースが目立ってきました。
しかし、そんなプロジェクトを進めるうちに、不思議な現象に気づいたんです。同じAIの分析結果であっても、「誰が提示するか」によってクライアント(あるいは上司・レビュアー)の受け止め方が大きく変わるんですよね。
同じアウトプットでも“説得力”が全然違う?
若手コンサルタントがAIを活用してレポートを提示したときのことです。
先日、ある大手企業のデータ基盤リプレイス案件をお手伝いしていました。
プロジェクトでは契約時からAIを用いて情報を分析整理することを前提として動いていたため私のチームに所属する20代後半のコンサルタントが、生成AIを使って現行システムの課題やツール選定の比較検討を丁寧にレポートにまとめてくれたのです。
過去の経緯から取り残されているオンプレ環境を段階的にクラウドへ移行するシナリオや、主要ツールのパフォーマンス比較など、非常に優秀な内容でした。
ところが、クライアントの反応は少し冷ややかです。
「AIが出した結論ですよね? うちの担当チームでも、工夫すれば似たようなことはできそうですね」
その言葉からは「AIがやったなら大差ない」というニュアンスも感じられ、せっかくの報告が活かされないまま終わってしまいそうでした。
私が別のタイミングで提示したら…
ところが数週間後、私が同じクライアントに対して別の分析結果を提示したときは、まったく違う反応を得られたのです。実際は同じAIでの分析を使っており、7~8割は同じロジックで導き出した結論でした。
「さすがにakiさんの視点は一味違いますね!」
「これはうちの事情にフィットしそうです。詳しくお話を聞かせてください」
同じ生成AIのアウトプットにもかかわらず、評価されるかどうかに大きな落差があるのはなぜか。そこで痛感したのが、「アウトプットをどう整理して、誰が見せるか」という要素の大切さでした。
「AIの分析結果=ただの素材」という考え方
私が思うのは、AIが出す分析結果は成果物そのものではなく、あくまで“素材”にすぎないということです。以下のように、複数のステップを踏むことで価値ある提案に仕上げています。
AIに既存システム構成や移行パターン、各種ツールの比較を分析させる
「この企業・組織にはどこが当てはまるか?」を自分の過去経験と照らし合わせる
「本当にこのプランは現場が実行できる?」「コスト面・運用面のネックは?」を精査する
ロードマップや具体的施策に落とし込む(担当者・ステークホルダーの巻き込み方含む)
そうして“素材”を最適化してあげることで、はじめて「なるほど、これなら現場で実行できそうだ」とクライアントや上司が納得してくれるわけです。(実際のところこんなにスムーズに行かず当然紆余曲折ありますが...)
AIそのものはただの道具であり、そこに人がどういう文脈で価値を付加していくかが鍵なのです。
“誰が言うか”はコンサルティングの現場だけの話ではない
実はこの現象、クライアントの前だけで起こるわけではありません。たとえば社内でも、上司やレビュアーが同じアウトプットを提示されたときに、どのメンバーが持ってきたかによって評価が変わることってありませんか?
Aさんが出した場合:「この人は過去の実績もあるし、間違った方向には進まないだろう」
Bさんが出した場合:「なんだか理屈はわかるけど、ちゃんと検証したの? どこか抜け漏れがあるんじゃない?」
同じレポートや提案書であっても、そこに至るまでの信頼関係や日々の態度、レビュアー側のバイアスなどが色濃く反映されます。これは“人間性”が大きく関係する部分で、AI時代になっても決してなくならないでしょう。
さらに言えば、提案書を作る段階でも「この情報は上司が重要視している」「この背景はクライアントにとって痛いところだ」という事前理解や洞察がなければ、AIが出す情報をうまく“整理”できません。そこにコンサルタント(あるいは業務推進者)の存在意義があるのだと思います。
具体的にどう違うのか
同じAIの分析結果でも、提示の仕方・文脈次第でクライアントや上司への響き方がまるで変わるという例を挙げます。
若手コンサルタントが提示した場合
「AIの分析によると、オンプレを段階的にクラウドへ移行するプランBが、トータルコストが◯%削減できてリスクも低いようです。グラフを見るとこのあたりが有利ですね」
私(aki)が提示した場合
「実は他の企業でも似たような分析をAIで行ったのですが、移行過程でセキュリティポリシーをどう取り扱うかが最大の課題になるケースが多かったんです。
ただこの企業さんは既に関連部署と合意形成を進めているので、プランBが最も効率的に進められます。具体的には◯◯と××に優先して着手し、移行プロセスを3フェーズに分割して進めるとスムーズですよ」
両者ともAIが示す大枠の方向性は同じ。しかし、過去の事例や企業固有の事情、人間関係を加味した情報整理が行われているかどうかで、“信頼に足る提案”になれるかが変わってきます。
これからの時代は「人間性」がより問われる
AIの性能がいくら上がっても、「誰が何をどういう背景で語るか」という部分は、むしろ重要度を増していくでしょう。
• クライアント(あるいは上司)に寄り添う態度
• 過去事例と照らし合わせる経験値
• 相手のバイアスや事情を汲み取るコミュニケーション力
これらはすべて“人間性”と言い換えてもいいかもしれません。AIの時代だからこそ、人の持つ人間的要素が引き立つ──というのは、なんとも皮肉にも思えますが、これは必然なのだと思います。
結論:「AIのアウトプットをどう整理して、誰が提示するか」が肝
AIの分析結果=素材にすぎない
単に見せるだけだと「AIがやっただけ」と思われ、付加価値は薄い。
人の経験や知見を加えて、最適な形で情報を“整理”するのがポイント。
誰が言うかが大きな差を生む
クライアントや上司が「この人の提案なら信頼できる」と思うかどうか。
社内レビューでも、日頃の態度や実績、相手のバイアス次第で評価は異なる。
より“人間性”が大切になる時代
AIが便利になればなるほど、対人間の信頼関係やコミュニケーションがモノを言う。
ただの情報提供者ではなく、“提案を形にして前へ進める力”を持つ人の価値が高まる。
私たちコンサルタントやビジネスパーソンに求められるのは、「AIの使い方」ではなく、「AIのアウトプットをどう価値に変換し、誰にどんな文脈で伝えるか」にほかなりません。これは、AIの進化によって効率化できない領域であり、いつの時代も“人間”が担うべき重要な役割だと思います。
注意書き(守秘義務および事例の脚色について)
本記事で取り上げた事例や企業名は、すべて守秘義務契約に基づき個別特定ができないよう配慮しています。また、本文の内容は実在の組織や業界を示唆するものではなく、一部脚色を加えたフィクション的要素を含んでおります。実際の企業名・事例とは一切関係ございませんので、あらかじめご了承ください。