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灯台守gahouの手記 - BPLS2 DDR

2023年7月1日、BEMANI PRO LEAGUE SEASON2 DanceDanceRevolution(以下BPLS2DDR)のFINALS(準決勝・決勝)が行われました。
BPLS2DDRではバイリンガル解説という立場で皆様の前に登壇させていただいていましたが、実はその枠を超えて様々な形でこのBPLS2DDRに携わらせて頂いていました。
BPLS2DDRにおいてはプロ選手、そしてそれを率いるオーナー企業様が主役である、と考えていますが、BPLS2としてみても一区切りついたところなので、少しだけこの記事で自分のことを書き記させてもらえればと思います。

DDRプロリーグ発足発表前

公式大会の引退宣言をしてからおよそ6年、プレイヤーとしての立場から離れる決意をした時に思い描いていたのは「誰かと誰かをつなぐきっかけを作る、ハブになる」ことでした。

https://twitter.com/gahou/status/830417891887456257

あのゲームを大好きな彼らが繋がり、違うゲームを好きな彼らと繋がり、そのシナジーでどんどん世界が広がっていく。そんな世界だったらいいなぁ、とぼんやり思い描いていました。
でも、それをするには自分はあまりにも無知で、無力で。それでも、何もしないよりはなにかしてみよう、そんな気持ちでまずYouTubeのチャンネルを動かすことを決めました。
DDRだけじゃない、音楽ゲームだけじゃない。いろんなコンテンツが転がっている中で、一つでも誰かの心に残ってくれて、それが次につながればいいなと。
そんな甘い考えで、でも何もしないよりはマシかな、なんて思いながら「なにかすること」を始めた記憶があります。
それでも、たくさんの方に協力してもらいながら、いろんなコンテンツをまず作り始めることができました。本当にありがとうございました。

それと同時に、既に始まっていたbeatmania IIDXのプロリーグを見て、これは一つのチャンスかも、と思っていました。
音楽ゲームのプロが生まれ、その選手やチームにファンが付き、その姿を見て、憧れて、目指す人達がいる。その先人たちの力を借りない手はない、と。
もちろんその時点ではDDRの開催なんていうのは微塵も考えていなかった(S5とかS10くらいで出てきたら嬉しいね、くらいに思っていた)ので、もしその時が来た時に、彼らの口からDDRという単語が1つでも出てきたら嬉しいな、くらいのつもりでいました。
そして、それと同時に「彼らの力を借りたい、とお願いするのであればそれ相応の態度を示せる、失礼のないことができる状態であるべきだ」というのが自分の中にありました。
プロ選手は本当に難しいポジションだと思います。企業を背負い、チームを背負い、ファンを背負い、やりたくないこともやる、逃げたくても逃げない、時に厳しい判断もする、一挙手一投足が注目される中で、でも何もしないではなく「プロとしてあるべき姿」を見せ、語り、ゲームへの夢を語らないといけない。
本当に、本当に難しく大変なポジションだと見ていても感じます。そんなとてつもない嵐の中にいる彼らに、別の嵐も手伝ってくれないか、と言うのです。こちらにも礼儀と覚悟は必要でしょう、と。

そこで自分に定めたラインが「ドラフト候補者とそのゲームで会話できるレベルの実力を持つ」でした。
スコアやオプションの話をする時に、基準点が100点や200点ズレていたら話にならない。実力が違いすぎるとオプションは噛み合わない。プロ選手が「なぜ凄いのか」を自分の言葉で説明できない。自分の言葉で説明できなければ、相手にも伝わらない。
他の機種でちょっと有名になったことがあるから、程度で天狗になってプロ選手と会話するのは、あまりにも失礼じゃないかと。自分に対してそう思っていました。
その思いで、ここ2年くらいはかなりIIDXに力を入れて上手くなろうとしていました。打算的な考えで、それはそれで失礼と思われるとも思いましたが、それよりもその先にWin-Winの世界線があるのではないかな、と。
正直、今のIIDX BPLはどんどんレベルが上っていてそれこそ追いつくのは非常に大変なんですが、ギリギリ話ができるくらいのレベル感にはいられているのかな、という自負は一応あります。

(プロレベルの戦いが行われている大会でも解説を務めさせていただいている中で、そこまで素っ頓狂なことは言わずに済んでいるのかな…という気持ちです)

DDRプロリーグの開催発表後

その後、S2では3機種が対象であることが発表されました。

自宅でバカでかい声出ました

その時に感じたことは「IIDXとDDRの間を繋ぐものがない」。
開催順はIIDX→SDVX→DDR。IIDXとSDVX、SDVXとDDRはシーズンが連続しているので、同じチームのプロである期間が被っている。通年契約であれば話は別ですが、シーズンが終わって割とすぐに契約満了になるのであれば、IIDXの選手とDDRの選手がプロとしてかぶる期間がない。期間が被っていれば、各チームで機種間の交流イベントをやることも可能。でも被っていなければ同じイベントに呼ぶことすらできない。
この、3機種間の関係で唯一存在しない「IIDX-DDR」の橋を作ることができれば、よりBPL全体の相乗効果を生み出せるのではないか。そんな思いで、「IIDXプロ選手とDDRプロ候補のインタビュー企画」をすることにしました。
各チームのオーナー様や選手の方々に連絡を取らせていただき、多くのチームから真摯に回答を頂けたことを、本当に感謝しております。その結果、4本のインタビュー動画を公開することができました。ご協力いただいた皆様、改めてありがとうございました。

それと同時にやらないといけないことは、「プロが守るべきことの共有」でした。ここでも「先人たちの力を借りる」という点が大きくなります。
正直、DDRのプロテストエントリー時点で最も多くのIIDXプロ選手と会話したことがあるのは自分であった、と思います。そして、それをプロを目指す人達に最低限のレギュレーションとして共有する。それが「プロにならないことが確定している」自分ができる仕事であり、その先に「事故のないプロリーグの実現」があると。

正直自分でも「何様だよ」と思ってます。でも、そんな恥ずかしいことをしてでも、DDRのプロリーグ、そしてBEMANI PRO LEAGUEという取り組みを守りたかった。IIDX,SDVXが繋いでくれたバトンをここで落としてはならない、と。
DDRのシーズンが始まればあとはプロ選手on stage。きっと彼らがなんとかしてくれる。その始まりまでをなんとかしなければ。
DDRは1年目、プロリーグ初心者なんです。であれば、先人の知恵は全力で使おうと。そして、それを更に次のシーズンにつなげようと。
そんなことを思いながら、自分の「最後の仕事」をしようと思っていました。

DDRプロリーグの解説者としてなすべきこと

そう、最後だと思ってたんですよ。そこに衝撃の仕事が舞い込んでくるわけです。
「JAEPOでBPL ZERO DDRの解説、MCと実況は英語メインのバイリンガル」。
Panic。まじでPanic。この辺からBPLへの携わり方が大きく変わってきました。結果BPLZEROでは様々なトラブルが起きましたが、そこにも概ねスマートな対応を選手みんながしてくれたお陰でなんとかイベントを終えることができ、また本戦に向けての課題感をかなり洗い出すことができたと思います。本当にありがとう。そして、あの場で様々な声を上げてくれた皆様にも感謝しかありません。まじでアンケート大事だからみんな書いてください。
BPL ZEROに呼んでいただいたタイミングで感じたのは2つ、「おそらく本戦も声をかけていただくことになるだろう」と「国内と国外を両方守らないといけない」でした。
でも主役は選手。絶対にでしゃばってはいけない。とにかく選手を引き立て、彼らがどれだけ凄いかを視聴者に伝える。それも国内と国外の視聴者に対して。
自分史上最高に難しいオーダーでした。それに対して自分が出した答えは以下でした。

  • 国内向けにはプロ選手にフォーカス、選手の思いやエピソードは日本語中心

  • 国外向けには競技にフォーカス、試合中の技術面やリアクションは英語多め

100%できてはいなかったと思うし、何ならあんまりできてなかったかもしれない。でも、こんな思いを持ちながら解説を務めさせていただきました。そして、この解説兼実況に集中できたのは、MaxさんとAliさんの強力な体制があったからです。

現場での急な変更にも臨機応変に対応し、なんならこうした方がいいのではと台本の流れまでもその場でどんどん提案してくれるプロフェッショナルMax。
そして、手元の資料が真っ黒になるくらいびっしり書き込みを入れ、休憩時間には動画で譜面を確認してまで勉強をして後半は何なら自分よりも詳しい解説をしつつ明るいリアクションをしてくれたAli。

この二人がいたからこそ、自分がある程度日本語よりになっても国内・国外双方を完全に置いていくことなく、なんとかつなぎとめるような配信・放送を実現することができたと思っています。
本当にありがとうございました。
そして、急な依頼・難しいルールにいきなり対応してくださったピンチヒッターのStuart Oさんもありがとうございました。めちゃめちゃ明るいし「なんでもなんとかなる」という雰囲気に助けられました。

そして、解説をすると決まった時に心に決めていたことがもう一つあります。それは「プロ選手との関わりを必要最低限までなくすこと」です。
解説者は公平な立場でプロ選手を盛り上げ、視聴者により良い視聴体験を与えるために情報を提供する。そのためには非常に多くの情報を持つことになります。その結果、解説者とプロ選手が関わっている状況は「不正」や「贔屓」という印象を生む可能性があります。これは誰も幸せにならない。
なので、シーズン期間を通して、選手と自分が持つ情報量が一致している瞬間以外は、極力雑談等も避けるようにしていました。これはプロリーグにおける公平性を保つために、自分が最も気をつけるべきことだと位置付けて守っていました。
自分も元々プレイヤー。馴染みの選手もたくさんいる。色々なことを話したい。新しく入ってきてくれた選手もたくさんいる。たくさんの感謝を伝えたい。でも、それは全部終わってから。

これからのこと

という感じで、この記事を書いているタイミングでは「全部終わりました」。
今回プロ選手になった24名は、シーズンが終わったとはいえまだまだ「プロ選手」の看板を背負って前に進んでいくことになると思います。それは、たとえ次の機会にプロになれなかったとしても、ずっとついていくものです。
逆に言えば、DDRにはもう「プロ選手」が居る。この先は、きっと彼らがDDRを引っ張って行ってくれる。そういう世界を作るために、自分はその走り始めるための道を整備するべく、この数ヶ月走り続けました。
もっと言えば、公式大会からの引退を決めたときから、この思いでした。他の皆が輝けるように自分は動いていこう、それがきっと、DDRへの恩返しになるから。そんな思いや行動を振り返った時に"灯台守"という言葉が出てきました。

灯台守(とうだいもり)とは、有人灯台に滞在して灯台等を維持・管理する、またはその職にある者のことである。灯台員(とうだいいん)ともいい、身分によっては灯台職員(とうだいしょくいん)ともいう。

元々大海原に居た一人の人間として、その知識経験をもとに、今大海原で戦っている彼らがなるべく迷わないように、行動しやすいように明かりを絶やさない。

「公式ではないけれど公式みたいな立ち位置の人間」。これだけ長いこと公式大会の解説を務めさせていただいたら、こう見られていることは認めざるを得ません。でも、これからは24名のプロ選手、そしてこれからプロになる新たなプレイヤーがこの「公式ではないけれど公式みたいな」プレイヤーとして、DDRをどんどんプッシュしてくれるんじゃないかなと信じています。

これは、自分がよく言う言葉です。「より良い選択肢があるのであれば、その選択肢を取ればいい。自分が選択肢として挙がり、選ばれるのは喜ばしいことだが、自分である必要はない。」
極論、自分なんて居なくていいんです。もっと素晴らしい実況解説が出来る方が出てきたら、イベントによりマッチした実況解説の方がいらっしゃれば、その方に任せるべきです。
その、任せるべき人を見つけていかないといけない、というのが自分に残された課題なのかなと思っています。「自分の居ない世界を作る」。これだけ見ると後ろ向きな発言に見えますが、これは今後のDDRに必要であり、これからgahouという一プレイヤーが目指す最後の目標、なのかなと思っています。積極的に自分を消すのではなく、自分が居なくても素晴らしいといってもらえる状態を作る。そのために、引き続き自分が出来ることを考え、ただ今までよりは少しゆるく、色々やっていけたらなと思います。

まずは11月。次のKACが予定されていると思いますので、少なくともそこまでは少しゆっくりしようかなと思います。
しばらくお休みしていた月曜のゲーム配信、INFINITAS配信もやりたいしまたラジオ配信でみんなと話をしたい。選手の人達とも色々会話したいし、BPLS3のIIDXや(きっとあるであろう)SDVXも楽しみ。それ以外の趣味も色々やっていきたいし、遠出もしたい。
引き続き、イベント等への出演依頼や企画へのお誘いもお待ちしてます。出演じゃなくても、「こういうことやりたいんだけど」みたいな企画相談もお待ちしてます。解説の相談でもいいです。自分は出演コスト10、相談コスト1です。お気軽にご相談ください。

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