Flash back Part2

　天使は昔、死にかけた事がありました。意識が薄れる中で、天使は走馬灯を見ました。

疾風、走る、壁、壁、駆け抜ける、また走る、風、馬、光、嵐、稲妻、タコ、も一つタコ

天使は自分の中から離れようとするその記憶を懸命に掴み、一命を取り留めました。

　だから天使は、記憶に触れながら旅をする私を放っておけなかったのでしょう。

　記憶というものは、そこら中にあります。ふわふわと漂っていたり、物に付着していたり、人の背中にあったり、或いは人の足の裏にあったり。
　私は自分の中にある記憶が好きでした。過ぎ去った美しい記憶は私を肯定してくれます。私を否定する現実から、私を守ってくれます。
　そんな記憶が好きだから、私は記憶ばかりを見つめていました。記憶だけを見るうちに、私の中にない記憶たちも、私の目に映るようになりました。

飛ぶ、飛ぶ、雲、ムササビ、雷、カラス、
ハムスター、これは飛ばない、光、ジェット機、空、イモ、タコ、ナンキン

私の記憶と、共鳴しているようでした。記憶たちは、私の手を優しく掴み、此処ではない何処かへと連れて行ってくれようとしました。

泳ぐ、潜る、海、波、ウミガメ、光、サザエ、アワビ、カバ、それは川、イルカ、マナティ、人魚、タコ、タコ、タコ

　そうして旅を続けるうちに、私は私自身を、記憶にしようとしました。

　それなのに、天使は、私の気持ちなんか知りもしない癖に、私を強く抱きしめてくれました。天使が流した涙のせいで、私はまた、この現実に連れ戻されました。

仕事、銭、小遣い、少ない、アル中、肥満、ダイエット、タコ

　天使のせいで、私は思い出しました。無機質で冷たいこの世界が、ほんの少しだけ好きな私のことを...。

（おしまい）

オマージュ元の作品はこちらです。

おもちさんテーストを残そうとすると、ほぼほぼパクリになってしまいます💦

流氷の天使の手法も取り入れてますが、オマージュです！

二回目ですが、こちらの企画に参加させていただきました。

素敵な企画、ありがとうございます♪

#おもちのパロディー