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1年でピザ窯をつくった話 4 「GW後編:基礎から土台へ」
平成が終わる
4月29日。
平成も残すところ
、あと3日。令和という新たな元号になろうとしていた。
平成と言えば、昭和から改元した時の記憶がある。テレビや新聞からは、平成の大きな2文字が連日のように目に飛び込んできたし、「平成おじさん」こと小渕氏の改元発表もインパクトがあった。
僕は昭和生まれで、当時小学生。まだバブルと呼ばれた好景気の勢いもあり、これから新しい時代に突入していくワクワクとした空気を幼心に感じていた。
これまたテレビに映し出される、ジュリアナ東京のお立ち台で踊るセクシーなお姉さんたちの印象も強烈だった。運動会でもその流行は取り入れられ、学年の生徒全員で踊る扇子を使った演舞中、先生がマイクで「ジュリアナ〜!」と叫ぶと生徒たちが突如ジュリアナダンス風にクネクネと扇子を舞わせるという謎演出が追加され、校庭を囲む観客たちの笑い声をかっさらっていった。
教室で体操着に着替える時も、ブリーフをTバック風にお尻を出しながら椅子の上で扇子を舞わせていた男子たちもチラホラいたなぁ。まぁ、僕もその中の1人だったのだけれど…。
思い返すと、お調子者の性格はその時から何も変わっていない。
基礎の続き
昨日に引き続き「基礎を打つ」作業。
残りの箇所にコンクリートを作って流し込んでいく。砂利などを混ぜながらコンクリートを作る際の塩梅は、前日よりも少し感覚を掴んできたように思える。
順調に残りを埋めた後、表面上の差異を無くし、見た目をきれいにするべく砂の比率を多めにしたコンクリートを表面全体に薄く塗っていく。
あとは全体が乾くのを待つ。やる気的には次の作業にすぐ移りたいところだけど、大事な部分でもあるので中途半端にせず、しっかり固まるのを待ってからが良さそうだ。
この後は、特にやることが無くなってしまったので、この日は早めに切り上げ。義母に車で自宅まで送ってもらう際に、GW中にもう一度作業で伺わせていただく約束をして、一旦お開きとなった。
GW中は、妻とたまたま家に遊びに来ていた僕の妹と3人で、公開されたばかりの『アベンジャーズ/エンドゲーム』を映画館で観たりした。
前作『インフィニティ・ウォー』では、強敵サノスがヒーロー達を退けた後、人知れぬ惑星で農園を開き、自給自足の隠遁生活を送るラストだった。ピザ窯を作りはじめた身からすると、この生活はちょっと羨ましい光景だ。
今作はその続きからだったのだが、サノスは早々に農場から引っ張り出され、シリーズに登場してきたヒーローたちが大集結し、死闘の末にサノスは倒されてしまう。
アベンジャーズの世界では、スローライフは許されないのだ。
土台を作る
5月6日。
基礎のコンクリートを確認すると、しっかりと乾いて固まっていた。
次はこの上に、ピザ窯を支えるための土台を作る。
手始めに、ホームセンターであらかじめ買っておいた重量ブロックを基礎の上に並べ、見当をつけていく。
ブロックについて
ブロックには「重量ブロック」と「軽量ブロック」という種類があり、見た目が同じに見えても、持つと重さが全然違う。
土台はピザ窯を支えることを考えると、出来るだけ重い方が良いので「重量ブロック」を選択。
いくつかのブロックを組み合わせ、「ヨ」の字型にし、3段に積み上げていく。角の直角に交わる部分に関しては、1/2サイズになっているコーナー用ブロックというのも売っていたので、それを活用した。
ディスクグラインダーとハンマーで、ブロックの道筋を作る
ディスクグランダー。先端のディスク部分はアタッチメント式になっており、付け替えることで研磨・切断・磨きなど用途によって使い分けられる便利な電動工具だ。
ディスクは使用していくうちに磨り減るので、ある程度使用したら交換が必要で、単体で別売もしていたりする。
「ヨ」の字にしたブロックの溝の上を、鉄筋で這わせてつなげていく作業。これは、鉄筋を入れることで全体を固定し、地震などで倒れた時にブロックがバラバラと倒れるのを防ぐための補強の役割がある。
ブロックの一部に鉄筋を通すための筋が塞がっている箇所があるので、ディスクグラインダーで切れ込みを入れていく。
そして、切れ込みの間をハンマーで叩いて壊す。これを繰り返していく。
鉄筋を切り分ける
親方(義父)から倉庫に余っている古い鉄筋が何本かあるとのことで、それを高速切断機という別の電動工具で切って使うことにした。
ちなみに、ディスクグラインダーと高速切断機は、共にDIYが趣味の親方が既に持っていたものをお借りして使用している。
切断している作業時間自体は短いのだが、大きい刃が高速で回転するのと、火花が飛び散るので、周囲などに細心の注意を払う必要がある。しかしながら、工事現場などで見かける作業を今自分がやっているんだという実感と達成感があり、切り分られた鉄筋をみると気持ちが高揚した。
ブロックと鉄筋をコンクリートで固める
最後は、加工したブロックと鉄筋をコンクリートで固めていく。
まずは基礎の上にコンクリートを塗り、ブロックを地面に押し付けるように置いていく。
そして、ブロックの上の溝に鉄筋を這わせ、さらに2段目、3段目のブロックとも結合させることを考えて、縦にも刺していく。
ブロックを積み上げ、コンクリートで溝を埋め、そんなこんなで土台は作業は完了した。なかなかいい感じにできた。
そういえば、ひとつ伝え忘れていたことが。前回来た時には無かったが、ピザ窯の周りには妖精様(義母)の手により、新たにレモンの木などが植えられていた。
はじめは何も無かった庭の一区画だったが、皆の手によって少しずつ開拓されてきたように思える。
BBQ in 倉庫
片付けを終えると、親方から「夕飯はBBQをやる」との提案が。妖精様が用意してくださった風呂から上がると、そのまま倉庫へと足を向けた。
倉庫では、トラクターの出し入れなどに使われている大きなシャッターが開けられ、その下にBBQ台とアウトドア用のテーブルが用意されていた。
パタパタと団扇をあおぎ、先に火の準備をしていた親方から「ほい」といつもの調子でアサヒスーパードライの缶ビールを手渡される。
「肉焼くから適当に呑んでて」
そう言うと、ジュージューと手際よく肉と野菜を焼きはじめた。
親方とたわいの無い会話をしながら、ぐびりぐびりとやっていると、僕の後に風呂に入っていた妻と妖精様も合流し、4人で夕涼みをしながらBBQがはじまった。
しばらくして、一通り料理を焼き終えた親方が「そういえば、面白い酒を買っておいたんだ」と、どこからともなく日本酒の瓶を取り出し、テーブルにドンと置いた。
瓶を見ると、ラベルにはデフォルメされた小渕氏と菅氏の似顔絵が添えられ、大きく目立つ文字で、
「ありがとう平成 ようこそ令和」
と書かれていた。「令和」記念限定ラベルとのことらしい。
なかなかのインパクトで思わず笑ってしまった。
平成から令和への改元。
4月30日から5月1日に切り替わるタイミングのカウントダウンや、「剣璽等承継の儀及び即位後朝見の儀」もテレビで観たりした。でも、新しい元号になったんだと本気で思えたのは、作業後のBBQで親方とこのお酒を一緒に呑み交わした、この瞬間だった。
昭和から平成。改元された30年前に小学生だった自分と比べれば、情勢は目まぐるしく変わっていったし、新しい時代に突入していくワクワクとした空気も幾分減ってしまったように思える。
それでも、こうやって全く経験ゼロからはじめたピザ窯作りを通して、毎回発見をしたり、大人になった今でも新しい楽しみを見いだすことができる今は、それほど悪いものではない。何かのきっかけを通して、自分にとって楽しいと思える空気を見つけたら、無理せず、少しずつでも続けて育てていくのが良いのかもしれない。
一方で、変わらないものといえば、いつも調子に乗ってしまう僕の性格だ。これは次の改元の時でも変わっていない自信がある。もう性として、諦めるしかなさそうだ。
そんなこんなで、僕の中の令和がこの日からスタートした。
倉庫を吹き抜ける夕風が、4人の笑い声を乗せて通り過ぎていった。
(つづく)
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