2019年徳島ヴォルティスの振り返り④夢の終わりとはじまり

成熟した戦術とかつてない一体感。徳島は、なるべくして躍進した。8月中旬からの13戦無敗。特に、残留を争っていた栃木に敗色濃厚まで追い込まれながらも執念で同点に追いつき、上位との3連戦を連勝した流れは圧巻だった。しかし第40節の横浜FC戦で痛恨の敗戦。これで自動昇格が一気に遠のいてしまう。だがまとまりをもったこのチームはこれ揺らぐこそなく、鬼門の味スタで開催された第41節の東京V戦(○2-1)を乗り越えると、最終節の山口戦(○3-0)も勝利。他会場の結果により、昇格プレーオフをホームで迎えられる4位でシーズンを終了した。
プレーオフ、そして参入決定戦がハイライトのように思われるかもしれないが、正直ここについて語ることはあまりない。その3試合も、チームはいつものように戦っていたからだ。シーズン中と変わることなく、各々がチームのために一体となりやるべきことをやる。その姿勢こそが、今シーズン最大の収穫であった。
ただ欲を言うならば、このすばらしいチームをもう少し見ていたかった。夢破れた湘南戦、あの瞬間、“それ”に慣れてしまった徳島サポーターは分かっていた。「来年この全員が揃うことはありえない」。
あのときピッチに立っていた11人のうち5人の選手が旅立ったが、クラブの補強は順調だと言っていい。それぞれ抜けた選手の穴を補える、あるいはそれ以上のものをもたらすことができる選手たちが徳島に加入してくれた。選手の質は今年以上、ならば、今年と同じかそれ以上のチームとして成熟できるかが、2020シーズンの鍵を握るだろう。それは容易いことではない。2019シーズンの熱量は夢か奇跡の産物にも思えたからだ。だが、それを現実にしてくれたクラブだからこそ、またできる。それをサポーターたちは信じている。

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