見出し画像

パリーブレストーパリ出走⑧ シークレットポイント(PLAYBEN)から

■光のプレバン(Playben)
落ち着いて寝ることが許されなかった折り返し地点ブレスト(BREST)から50Km。予想しておらず突然現れたプレバン(Playben)のシークレットPCには本当に助けられた。寒くて眠くて今日1日走り続けらるのか不安であったのと、睡眠マネジメントが上手くいかなくてリズムが狂っていくことへの焦りが同時に起きていたからだ。暗い森を抜け、暗い灯りの街を走っている途中で現れたシークレットPCは明るく疲れたライダーたちを癒す夜のオアシスのような場所であった。スタッフからブルベカードにサインをもらい「メルシー」と言った後、仮眠がホールでとれると聞いて急いで向かった。ブレスト(BREST)では満床であったが、ここは広いホールで暖房が効いていてとても暖かく、ブレスト(BREST)とは違って空いていた。外の気温はおそらく10℃前後だったと思うので冷えた体にはとても優しかった。おそらく30名程度は寝ていただろう。私はおそらく2時間〜3時間程度ここで寝ていた。いい睡眠をきっととったんだろうなあと思うぐらい夢も見ず、起きた時に冷え切ったこともなく、だるさもなくスッキリとして起きることが出来た。外にコーヒースタンドがあったので迷わず温かいコーヒーを注文して再出発に向けて体に流し込んだ。あたりはまだ暗かったがもうすぐ夜明けになることは間違いなかった。この建物は新しくとても綺麗で普段はコンサートや劇など様々な催しが行われている。街の人々が大切にしている場所をPBPで使わせてもらえるとは本当にありがたい。この街の自転車に対する愛をありがたいぐらい感じた。

■ピンクの空とゴシック様式の教会
空が闇からピンク色になる頃、カレ(CARHAIX)に向けて再出発をした。朝の7時だった。フランスの朝はやはり日本に比べて遅い。まだあたりは暗かった。ブレスト(BREST)での中途半端な睡眠と、バス停での失敗をリカバリーするためにこの休みはとても大切だった。「さあ今日も一日始めよう!」そう思ってペダルを踏みこんだ。こうやってPBP2回目の朝は始まる。ルートに戻り道を曲がっていくととても立派な石で作られた大きな教会がこのプレバン(Pleyben)の中心になっていることに気が付いた。通る町の中心にはだいたい教会があるが、ここの教会はぱっと見た感じ400年以上の歴史があるようなゴシック様式の立派な教会だ。背が高く、遠くからでも分かるような鉛筆のように細くとがっている屋根も特徴で、外側からリブの様な柱で支えられている。力が上手に分散されていることからステンドグラスなどを広く大きく入れることが可能になったそうだ。ロマネスク様式からゴシック様式に、そしてルネッサンス様式へと変わっていく。調べてみたらサン・ジェルマン教会(L’église Saint-Germain)は1530年から建てられ1642年に完成した歴史ある教会であった。100年戦争が終わってフランスが統一された時代から少し進みブルターニュ公国がフランスとして組み入れられた時期であったと思う。街を通ると立派な教会が必ずと言っていいほど街の中心にある。教会が権威のあった時代だったからこの時代の建物は立派で沢山残っているのではないかと安易に想像できてしまう。教会の中はとてもきれいなステンドグラスの窓や様々なストーリーがあるような彫刻で飾られている。もしPBPに参加していなかったら、きっと中に入ってゆっくりと見ただろう。そして椅子に座り礼拝にでていたかもしれない。

サンジェルマン教会と浮腫んだおじさんの顔

■綺麗な朝焼けからはじまった朝
昨朝は霧の中迎えたが、今朝は天気が良く立派な朝焼けが見えていた。朝7時ぐらいだと明るくはなってきているが、太陽を見るまでにはいかない。いつ暖かい光を届けてくれるのかそれを楽しみにしていた。まだ寒かったので雲の隙間からでもよいから届けてほしいなあと願っていた。この区間は惰性で力も入れず走っていた。ペダルを回しても止めても進んでいるような感覚があった。そうやって走っていると黄色いPBPベストを着た参加者たちに追いついたり、抜かれたりして特別なイベントに出ているんだなあという感覚に戻ってくる。日本人には走っている最中会うことはなかなかなかったが、寂しいという気持ちは全くなかった。太陽の陽が差して少しずつ体が暖かくなってきた。体がほぐれてきてペダルも楽に回すことができる。カレ(CARHAIX)まではあと40㎞ぐらい。信号は全くないのでノンストップだと平均時速25㎞で走っても1時間45分ほどで到着する。PBPの最中は時間と平均時速で次のチェックポイントまでどれぐらいなのかを常に頭に入れて走っていた。私は見通しが見えないロングライドはあまり得意ではないが、こうやって区間ごとに頭の中で計算することによって見通しをある程度建てることが出来るので力のコントロールもできた。

2回目の朝はとても綺麗な朝焼け 


■素パスタなカレ(CARHAIX)
カレ(CARHAIX)には8時40分前に到着した。朝ご飯が楽しみだ。しかし少し胃が疲れてきているっぽくて、食事の内容も少し気を付けることにした。でも、楽しみだ。濃い味はなんとなく欲しくなくなってきていた。あっさりしたシンプルな食べ物が食べたい。そのためRADIO RUEDA姫井夫妻の回で聞いたあの素パスタをチョイスして塩をかけることにした。小麦の味を感じながら食べる朝食なんてなかなかいいものだ。まだ外は暑くはないが塩分はしっかりととらなければと思ったからだ。幸いなことに各テーブルの上には塩が置いてあったのでキープしてかけることにした。それと人参のサラダに、プリン系のタルトっぽいものを選んだ。あとチーズなどの乳製品もとることにした。走るためにはエネルギーが必要だ。これらを食べたらお腹いっぱいになったため、バナナはポケットの中にいれることにした。この時間帯はトイレが混雑しており建物内のトイレは10分ぐらい待ちそうだったので、屋外のトイレを利用した。トイレはしっかりとクリーニングされていて利用もしやすかった。きっとボランティアの方々が綺麗にしてくださっているのだろう。感謝をして自転車が停めてある場所に向かった。

素パスタ登場 だんだんと胃を意識してきている

サイクルラック(柵)に向かって装備などを確認して出発準備をする。
日本人の参加者たちも往路の参加者だろうか、真っ暗闇の夜間のライドを超えてきた方々とも歩いてすれ違う。これからブレスト(BREST)へ向かうのだろう。明るいブレストを見れるのは羨ましいなあと思った。ここからのチェックポイントは往路と共通する場所がいくつかあるので、往路の参加者とも会うのが楽しみであった。次に会えるのはルデアック(LOUDEAC)かな。

■朝のすっきり爽やかライド
走っていたら太陽がしっかりと昇って、青空がどんどんと広がってきてた。次のポイントであるグアレック(GOUAREC)までは約30㎞とおそらく1時間半ぐらいの距離であった。もう2回目の朝を迎えているのに走っている参加者の表情はとても元気で明るい。今年のパリブレストは雨に降られず天気にはとても恵まれている。気温も15℃~20℃ぐらいとこの地方の涼しさもあって高原を走っているような気分になる。15㎞程走っているといつの間にか最大10人ほどの集団になってきて一緒に走ることになっていった。イタリア人やどこの国籍か分からないジャージなど色々な人がいる。みんな単騎のようだ。この中で目立っていたのは赤いオーストリアジャージを着ていた筋肉質な自転車乗りで、彼とはペースが合いそうであった。アップダウンが出るたびにこの集団は崩れていった。そんなに速いペースではなかったが脚の疲労はたまりつつあるのであろう。オーストリア人と一緒に並んで気持ちよく走れた。そして気が付いたらペースアップをしていてほぼ2人だけで走ることになっていた。なんとなく朝練的な気分になった。

彼と一緒に走り始めてから40分ぐらい経ったところで、メインの道路から少し外れることになった。ちょっと進むと少し小さなグアレック(GOUAREC)のポイントについた。グアレック(GOUAREC)は青空がとても広く清々しい気持ちになった。

青空が広がり清々しい気持ちになったグアレックの小さな休憩ポイント

ここはチェックポイントではなく立ち寄る必要はないが、朝のペースアップで少し足を休めたくなって入ることにした。太陽の光が差す中、オーストリア人の彼としっかりと挨拶をして少し話をした。「いい汗かいたな。ここから頑張っていこう」という話をしていたと思う。ここで休むのか?と聞かれてイエスと答え、彼は「コーヒーを飲む」と言ってレストルームの方へ行ったが。朝ご飯を食べてなんとなく胃に負担感があったので、エネルギー補給のためバナナだけを胃の中に入れることにした。バナナはあまり得意ではなく、多く口に含むとおえっとなりそうになって涙目になるが、ここはしっかりと食べなくてはならない。がんばって残りのバナナを口に入れることに集中した。トイレに行ったり少し補給をとることも考えたが、先に進みたいと気持ちが切り替わった。黙って進むのも悪いような気がして、オーストリア人の彼に「先に行くよ」と挨拶をしようと思ったが、自分のペースを大切にするのがPBPかなあと思ったので、そのまま水を飲んでリスタートすることにした。これから暑くなりそう。次はルデアック(LOUDEAC)だ。

なんとなく気が合い、ペースを上げたり一緒に楽しんだオーストリア人と一緒にパチリ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?