パリーブレストーパリ2023出走①
パリブレストパリのスタートは夕方
この伝統的なイベントにはパリと名前はつくが、パリから電車で南西へ40分ランブイエという郊外の街からスタートする。
スタートの会場はランブイエ城の広い広い公園からスタートする。受付はこの公園内の別の所にあり、そこへ行くだけでもスタート地点から徒歩20分ぐらいかかる。フランスはもちろんのこと、ヨーロッパ中から参加者が集まっており、キャンピングカーがそこら辺中に置いてあり家族でリラックスしている様子が伺えた。
フランスは北海道の稚内より高い緯度にあり、8月は涼しくなると聞いていたが、温暖化の影響なのか気温は32℃ぐらいあった。気温も夕方にかけてどんどんと上昇する。蒸し暑さはないがとにかく暑い。スタート地点横にはウェルカムフードを提供する白い屋根の大きなテントがあり、参加者はそこで出走前にご飯をいただく。私は今回こういう所のご飯をとても楽しみにしていた。エネルギーをしっかり蓄える事も必要だが、味は旅にとってすごく大切。普段食べれないものを食べる事が出来るから、海外での何気ない食事をとることはとても有難い。テントに入ると参加者でごった返していた、おそらく500人はここで食べれるだろうそれぐらいの広さはあったと思う。事前にもらったミール券を係りの人に渡して木綿と一緒に食事をとった。
それにしてもテント内はあまりにも暑かった。
暑いテントの中でPBPを今回走る多摩ポタリングクラブのバントゥーさんと席を一緒にすることになり最後の情報交換が出来るかなと思ったが、あまりの暑さに熱中症になりかけそうになったので、一足先に出て木陰で寝転がって休む事にした。目を閉じてしばらくすると沢山の拍手が聞こえた。なんだと思ったら、先頭にAの旗をかかげた自転車の行列が堂々と行進していた。この伝統的なイベントに並ぶグループAはなんだか存在が勇ましい。グループAは一番速いメンバー。おそらく50時間切るだろうと思われる。この中には記録を狙う三船さんもいるのだろう。彼らは全く寝ないで走り切ると言われている。超人の中の超人と言える人たち。彼らの偉大なる冒険はこれから始まる。
■検車
私はDグループ16時45分の出走であった。Aグループから1時間ごのスタートである。AグループからのB、Cグループと長い行列が続きDグループの旗を見つけてその最後尾に並んだ。途中ゲートをくぐるがそこまでの間に検車を受ける。私の担当してくれたお姉さんは一つ一つ丁寧にチェックしてくれた。番号の書いてあるヘルメットシールを貼っていなかった事を見つけて「どうしたの?」と指摘をうけたが、運よくブルべカードに入っていたため、その場で貼る事になった。お姉さんは安心して「ラブリー」と言ってくれて送り出してくれた。ヘルメットシールは小さくてこれ貼るの?と勝手に思い込んでいて、とりあえずブルべカードの所に挟んでおいたのが良かったようだ。とりあえず検車が認められ出走OKの印を貰って良かった。「ラブリー」と言われて送り出されて少し微笑んでしまい、一瞬子どもになってしまった。
そんな訳でスタート前のオフィシャルな儀式を全て終えてスタートラインに立つ。そこには沢山の人でごった返していた。いよいよ始まるんだなあと。このスタートラインに立つ前にずっと木綿が付き添ってくれた。木綿はライブ配信をしてみんなに発信してくれている。無事に帰ってこないとなあ。
■そして出走 これから長い長い冒険がはじまる。
ゆっくりとパレードのようにスタートしていくのは白い未舗装路迄。そこから先はぐんぐんとスピードが上がっていく。とても暑かったが走ると湿度が低いので涼しくなってくる。どんな参加者がいるのかなあと見ながら走ってみている。各国仲間とまとまって走っていてた。フランスは各地域でクラブがあるようでまとまっていたようだ。序盤は速いとは聞いていたが予想以上に速かった。気が付くと大きな集団が出来ていて時速40㎞とロードレース並だ。日本と違い並列になって走っていた。当然対向車線からも車も来るし、後方から車が抜いていく。こういう大きな集団になっていても車は優しくしっかりと待って手を振りながらクラクションを鳴らして抜いていく。対向車もスピードを落とし手を振ってくれた。
参加者みんなが集団走行に慣れているかというとそうではなくぴったりとくっついて走る訳ではない。当然中切れなども起きる。早い集団は前方を飲み込み、そして分離していく。そんなことの繰り返しをしていた。長い長い冒険が始まったばかりなので、自分のペースを探してどれだけ無理も出来るかなあと考えていたが、中切れを埋めようと踏んだらその後長い登りがあり、今季最大の心拍数を示していた。スタートして2時間ぐらい経過していたのでこれ以上無理したら後が辛くなってしまうので、ペースを緩めて走ることにした。先は長い。
この頃になると日が少し落ち着いてくる。暑く照らされていた田園の風景が少しずつ落ち着いていく。そして集団のペースにフィットした集団になっていた。タキシードのようなジャージを着ているフランス人、奥さんと子どもと自身が映った大きめの家族写真を自転車のステムに貼っていているイタリア人。女性のメンバーを守りながら走っているようにフォーメーションが組まれているドイツ人集団。どのメンバーも各国を代表して走っているようだった。日本人含んだアジア人がこの中にいるかなあと思ったが誰もいなかった。「私日本に居たことあるよ」と「こんにちは」とAUDAX JAPANの記念ジャージを着ていたイギリス人が挨拶してくれた。みんなお互いに、ちょっとペースが合わなくなりそうになると顔を見て「頑張ろう」と言っていた。私にももちろん声をかけてくれたり、ニコって笑ってくれた。
■生まれて初めて生の「マンマミーア」を聴く
私の走っている集団にはイタリア人の夫婦がいた。奥さんはおそらく自転車に乗りこんでいる人だろう。体つきがそんな感じだった。眼鏡をかけた旦那さんと常に同じ場所で走っていた。町の中に入り、ちょっとだけ坂がきつい所になったとき、奥さんがダンシングをした時にリアのバッグが旦那さんのハンドルに当たってしまった。すると「マンマミーア!」と旦那さんは驚いた声を出した。奥さんは「ごめん」と返すもの、旦那さんは気難しそうな顔をしながらしばらく「マンマミーア、マンマミーア」とぶつぶつ言っていた。こういう場面の時に言うのか。「マンマミーア」は直訳すると「私のお母さん」と訳せるが、色々と調べてみると「OH MY GOD」のような感じで驚いた時に表現するようだ。聖母マリアに由来するようだ。キリスト教の文化を感じる。初めて生く聞く「マンマミーア」に私は鳥肌が立ってしまった。この言葉は映画やミュージカルのタイトルになるほどだが、スーパーマリオの主人公「マリオ」がよく使うセリフの方が日本では知られているだろう。CMでもよくこのセリフは流れそれで知っている事が多いのではと思う。日本のサブカルチャーが少し愛されているフランスではそっちの方が頭に浮かんだ。いずれにしても生きた「マンマミーア」を聞けて感動した。
■MORTAGNE-AU-PERCHE (120㎞地点最初のポイント)
モルターニュ・オ・ペルシュ ブラックプディング(ブラッドソーセージ:フランス語でブーダンノワール(Boudin noir)の祭典で有名だったらしい
最初のエイドポイントMORTAGNE-AU-PERCHEモルターニュ・オ・ペルシュに到着 沢山の人が拍手をして迎えてくれた。
モルターニュ・オ・ペルシュはフランスノルマンディー地方のコミューンであり、文化遺産、自然遺産などがある素敵な所である。年に1度ブラックプディングの世界的な祭典がありこの町に世界中から沢山の人が集まるそうだ。この情報まで実は行きつくことができなくて、多分知っていたらブラックプディングを食べれる方法を探していたかもしれない。
https://shinshu-navi.com/the-essential-guide-to-normandys-black-pudding-festival-2a20e64b
120㎞地点のこのポイントではNO CONTROL(チェックポイントではない)とのことであった。ペースは集団のおかげで上々で約4時間でここに着いた。平均スピードシミュレーションだと6時間かかるから約2時間稼いだことになる。陽はだいぶ落ちてきていてとてもいい夕暮れをこの場所で過ごすことが出来てなんだか嬉しい。補給食はサンドイッチとコーラを頼んだ。サンドイッチの種類は良く分からなくて、フランス語でJambon(ジャンボン)と聞かれたので、ジャンボなソーセージが入っていると思い込んで頼んでみた。すると白いハムが入ったサンドが出てきたので、ジャンボンはハムの事だとそこで理解をした。