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令和2年設計製図の課題の考察
こんにちは。あみくみです。下書きになってた記事をアップ。
過去問のマガジンにも入れましたのでご参考に。
今日は令和2年製図試験の課題発表がありました。
いよいよスタートです。
気を引き締め直して10月までかけぬけましょう。
はじめに
昨日、令和2年設計製図の課題が発表されました。今回の課題発表は例年と違って何階建てかが不明です。
2階でも3階でも基準階でも成立するプログラムになっています。
ここ数年基準階の課題は出ていないので、基準階の出題が濃厚かなとは思いますが、どのケースで出題されても対応できるように準備しておきたいですよ。
ただ、最もエスキスが難しいのは基準階の考え方になりますから、前半戦で取り組んでいないという受験生は、一度しっかり基準階のエスキスの進め方について理解しておく必要がありますね。
さて、ここで令和2年設計製図の課題について、試験元が公表した情報をもとにどんな施設が想定されるか考察していきたいと思います。
令和2年設計製図の課題の考察
課題発表の内容を整理していきましょう。
【課題名】高齢者介護施設
【要求図書】
▶1階平面図・配置図(縮尺1/200)
▶各階平面図(縮尺1/200)
※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定します。
▶断面図(縮尺1/200)
▶面積表
▶計画の要点等
(注1)居宅サービスを行う施設及び居住施設で構成する建築物の計画とする。
(注2)「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に規定する特別特定建築物の計画とする。
(注3)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)とする。
【建築物の計画に当たっての留意事項】
▶敷地の周辺環境に配慮して計画する。
▶バリアフリー、省エネルギー、セキュリティ等に配慮して計画する。
▶各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
▶建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
▶構造種別に応じた架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
▶空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。
【注意事項】
「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにして下さい。
なお、建築基準法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
読んでパッと気がつくこととして、
まず一つ目
冒頭でも触れましたが、この内容からは建築物の規模が何階建てか予測することができません。
高齢者介護施設の特徴から、2階、3階、基準階とどのパターンもありうるわけで、その心づもりで準備しておく必要があります。
そして二つ目
(注1)居宅サービスを行う施設及び居住施設で構成する建築物の計画とする。
とあります。
居宅サービスという言葉が出てきました が、ここで「居宅サービス」「居宅サービスを行う施設」「居住施設」の定義を整理しておく必要があります。
「居宅サービス」については介護保険法の第8条に定義があります。
建築基準法とは関係はありませんが、今回のこのザックリとした課題内容を考察するには、そもそも介護保険法の目的というものを少し知っておく必要があるのでみていきましょう。
介護保険法
(目的)
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする
ここに重要なキーワードがあります。
▶要介護状態となり 入浴排せつ食事等の介護機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者
▶有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう
つまり、高齢者が介護が必要な状況になっても能力に応じて自立した日常生活を営むことをサポートするために必要なサービスにかかる給付を行うために定められた法律ということが分かります。
介護保険法の目的を確認したところで、居宅サービスという言葉の定義について第八条をみてみると、
第八条 この法律において「居宅サービス」とは、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売をいい、「居宅サービス事業」とは、居宅サービスを行う事業をいう。
これを読み解いてみると、「居宅サービス」には大きく
・スタッフが訪問してくれる
・お年寄りが施設に通所する
・お年寄りが施設に短期入所する
という3つのサービスに分けられることがわかります。
まとめると、令和2年の設計製図の課題で明示されている「居宅サービスを行う施設」は
① 訪問介護
② 通所介護
③ 短期入所介護
を行う事業者が運営する施設ということになります。
そして「居住施設」に関しては、その名の通り居住施設なので、言葉通りに捉えるならば
・短期入所介護(上記居宅サービスの③)を受けるお年寄りの居住施設
・それ以外のお年寄りの居住施設
が考えられるというわけです。
ここでもう少し第八条を読んでいくと、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院という施設名がでてきます。
第八条 25 この法律において「介護保険施設」とは、第四十八条第一項第一号に規定する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び介護医療院をいう。
第八条 26 この法律において「施設サービス」とは、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護医療院サービスをいい、「施設サービス計画」とは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設又は介護医療院に入所している要介護者について、これらの施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画をいう。
第八条 27 この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。
第八条 28 この法律において「介護老人保健施設」とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者(その治療の必要の程度につき厚生労働省令で定めるものに限る。以下この項において単に「要介護者」という。)に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第九十四条第一項の都道府県知事の許可を受けたものをいい、「介護保健施設サービス」とは、介護老人保健施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう。
第八条 29 この法律において「介護医療院」とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者(その治療の必要の程度につき厚生労働省令で定めるものに限る。以下この項において単に「要介護者」という。)に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第百七条第一項の都道府県知事の許可を受けたものをいい、「介護医療院サービス」とは、介護医療院に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう。
いろいろ紛らわしい言葉が乱発されていてなんのこっちゃですが。
「介護保険施設」には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院がある。
「介護老人福祉施設」とは、特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上)で入所する要介護者に対し、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設。(つまり生活支援)
「介護老人保健施設」とは、要介護者で心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、都道府県知事の許可を受けたもの。(つまり居宅生活ができるようになるための医療支援)
老人福祉法
ここで、老人福祉法の目的と「居宅サービス」に関連する条文を確認してみましょう。
(目的)
第一条 この法律は、老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もつて老人の福祉を図ることを目的とする。
(定義)
第五条の二 この法律において、「老人居宅生活支援事業」とは、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業及び複合型サービス福祉事業をいう。
第五条の三 「老人福祉施設」とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターをいう。
介護保険法で定義される「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する「特別養護老人ホーム」(入所定員が三十人以上であるもの)なんですね。
マジややこしい。
第10条の4を読んだら居宅における介護とという項目で居宅と 施設の違いが理解できます。居宅はあくまでも施設ではないお年寄りの住まいとなります。
最後に
ということで、公開になった課題発表の中の記載においては、施設にお年寄りが住む ということに関しては居住施設という言葉で出題がされていますので、ひとつの建物であるけれども機能としては居宅サービスの機能と住居施設としての機能があるということ。
このあたりを整理すると、どんなプログラムで出題される可能性があるかすこーし読めてきそうですね。
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