狭くてマニアックけど儲かる「羽根業界」! 極小冷却ファン、おいしく混ぜる羽根、超巨大扇風機…「ものづくり技術」が集結!
「羽根業界」こと、今週の『がっちりマンデー!!』は…せまい業界シリーズ第18弾。これまで「パイプ」や「ネジ」など、「せまくて」「マニアック」だけど、実はすごく儲かっている業界を紹介してきたこの企画。
今回は…「羽根業界」に注目しました!
そう、確かにいわれてみれば…「扇風機」に「換気扇」「ドライヤー」、さらには、「ドローン」まで、世の中あっちもこっちも、ぐるぐるけっこう羽根だらけ! これはきっと儲かってるに違いない!
売上げ6兆7000億円 の超マンモス企業が仕掛ける、今までなかった超巨大な羽根から、親指サイズのちっちゃい羽根まで。羽根が回ると、お金も回る!?
「羽根業界」の儲かりのヒミツに迫ります!
※以下、8月2日放送の書き起こしです。
日本電産の総技術! ノートPCにも入る「冷却ファン」だけで年商200億円
まずやってきたのは、神奈川県川崎市にある…「日本電産」という会社の研究所。どんな「儲かる羽根」があるのでしょうか?
エンジニアの竹本心路さんに話を伺いました。
竹本さん:日本電産には世界一の羽根があります。
世界一とは、かなり大きく出ましたね。では、その羽根を見せてもらいましょう!
竹本さん:こちらの冷却ファンです。
竹本さん:モーターにプロペラがついていて、風を送る装置です。これを使って家電製品の熱を装置の外部に送り出して冷やすためのものです。
この小さいのが、世界一??
なんでも、この小さい羽根で、家電などを冷やすらしいのですが、ちなみに、どれくらい儲かってるんでしょうか?
竹本さん:まだまだ日本電産の中では、売上が200億円程度しかないんですが。
スタッフ:えっ!?200億円もあるんですか!?
竹本さん:はい。
なんと、この冷却ファンの売上だけで、200億円!
すごい売上げの秘密は、とにかくこの日本電産の冷却ファン、あちらこちらの家電に入ってるから!
竹本さん:例えば、テレビとかも基盤の冷却のためにファンモータが入ってます。
最近の大型液晶テレビは、背面の基板が熱くなるので、薄型の「冷却ファン」が、最大6個付いているんです!
竹本さん:あとは。レコーダーにも背面に冷却用の軸流ファンがついてます。レコーダーを使って映画とか見たりする方がファンの音が気にならないように背面についてます。
ほかにも「冷蔵庫」や「IH炊飯器」などなど、最近はあらゆる家電がIT化、チップが埋め込まれるようになりました。それを冷やすために、私達に見えないところで日本電産の冷却ファンがどんどん増えちゃってるんです!
そんな中でも、特にがっちりなのが…
竹本さん:こちらに入ってます。
スタッフ:ノートパソコン?
そう!ノートパソコンの「冷却ファン」。
しかし、こんな薄い中に、ファンが入るんですか?
竹本さん:開けてみます。これが冷却ファンです。
スタッフ:ここまで薄くしないといけないんですか?
竹本さん:ノートパソコンって、年々薄くなって、中身が密集してますんで、薄くしないと入りません。
こちらが、日本電産の技術の結晶! ノートパソコン用、極薄冷却ファン! 厚さたったの4mm!
竹本さん:苦労の塊ですね。
一体、どうやってこんなに薄くできたんでしょうか?
竹本さん:モーターと羽根と別々に作って、くっつけたのでは薄くなりませんので、羽根の中にもモーターを一体型で閉じ込めています。4mmのここにしかもう入るスキマがないんです。
なんと竹本さんたちは、厚さ4mmのモーターを開発し、羽根の中にはめ込むことで、冷却ファンを、薄くしたんです!
竹本さん:もっと薄く、もっと薄く、もう無理だ、もう無理だ、もっと薄く、もう無理だ…の挑戦の繰り返しでした。
さらに、羽根の形も…
竹本さん:薄くなったので、従来のプロペラ型ではなくて、水車型の羽を採用しました。
ほとんど隙間のないパソコンの中では…
縦に風を吹き出すタイプの「プロペラ型の羽根」だと、風をうまく送ることができない!
そこで、横から風を吹き出す「水車型」に変更! 実際に回してみると…
スタッフ:あっ回った!おぉ!スゴい風出ますね。こんなに薄いのに風が出るんですね。
そしてもう1つ、日本電産の「冷却ファン」には「こだわり」が….。
スタッフ:音が全然しないですね。
竹本さん:部屋のエアコンの音の方がうるさいですね。
実は冷却ファンで、冷やす性能と同じくらい大事なのが、「音がうるさくない」こと!
その秘密が、羽根のデザインにあるのですが、皆さんわかりますか?
正解は…
よく見ると、羽根と羽根の間隔が、微妙にバラバラにずれてるんです! 実は、これこそが「音をうるさくなくする」しくみの1つ! なんでそうなるのかというと…
竹本さん:均等にしていると特定の周波数の耳障りな音が鳴るんですが
バラバラにすることでその音が分散されて、人間が聞いて静かに聞こえるんです。
試しに、均等に並んだ羽根と、バラバラ間隔の羽根で、音はどれくらい違うのでしょうか? 今回は、わかりやすくするためドライヤーの羽根で確認してみます。
左が均等に並んだドライヤーの羽根。そして、右が職人さんが調整したバラバラにつけた羽根。果たしてどれくらい違うのでしょうか?
交互に聴き比べてみると…その違いは明らか! 職人さんが調整したバラバラの羽根の方が、うるさくない! そんな細かい工夫の積み重ねが、冷却ファンの売上げ200億円を支えているんですね!
日本電産は冷却ファンで、がっちり!
▼スタジオでお話を伺いました。
加藤さん:これはがっちりですよ。だってパソコンは世の中から無くならないから。しかも、さらに薄くなってくのは間違いないですからね。
森永さん:今は、ノートパソコンに入ってますよね。でも、スマホには入ってない。だけど、これが5Gになると熱を出すので、スマホに入れないといけなくなる可能性が高いですね。だから、もっと薄くしないといけないんです。
加藤さん:今後、スマホにも入れることになるんですか?
竹本さん:はい。もうすでに開発は始まってます。
加藤さん:どういう形になるんですか?
竹本さん:さらに小さいものを開発して、すでに実験もしてます。
進藤さん:ちなみにこれが世界最小クラスの冷却ファン。小型ロボット用に開発された冷却ファンなんですけど、これでも1.6センチ四方。
加藤さん:スマホに入るのは、これくらいですか?
竹本さん:それよりも小さいです。
加藤さん:これよりどのくらい小さいんですか?
竹本さん:体積で言うと、半分ぐらいですかね。
加藤さん:これの半分!?素晴らしい ですね!
職人・料理人のワザを再現! 「混ざりやすい羽根」で年商65億円
続いてやってきたのは、埼玉県八潮市にある…
「カジワラ」という会社。正直、聞いたことのない名前ですが…白澤哲哉副所長に話を伺いました。
スタッフ:儲かってますか?
白澤さん:はい、儲かってます、がっちりです!
なんとも自信満々の白澤副所長、その儲かっている「羽根」とは、何なんでしょうか?
白澤さん:こちらです。
コレは…?
白澤さん:これは「あん練り機」ですね。あんこを混ぜる機械なんですけど…
白澤さん:大事なのがこの羽根なんです。
こちらが、カジワラの儲かる「羽根」、あんこを混ぜる「煮炊撹拌機(にたきかくはんき)」!
実はカジワラは、あんこ撹拌機のトップメーカー! 羊羹で有名な都内のアノ高級和菓子店や、お土産で有名な三重県のアノ餅菓子店などにも、機械を納めてるんです。このあん練り機も、1台200万円以上するんですが、その販売数は…
白澤さん:今までで1万2000台売れております。
スタッフ:1万2000台?
白澤さん:儲かっております。
えっ!…ということは、単純計算で…200万円×1万2000台=240億円の売上げ!! これは相当なバカ売れマシン! いったい、カジワラのあんこをまぜる羽根は、何がそんなにすごいんでしょうか?
白澤さん:これはめちゃくちゃ混ぜるのが上手なんです。あん練りっていうのは、非常に作業が難しいんですよ。
そう、美味しいあんこを作るためには、煮えたぎる小豆を1時間以上休みなく、焦げないように、ゆっくり混ぜ続けるのですが…これがかなりの重労働で長年あん職人さんを悩ませてきた。
そこで色んなメーカーが、あんこを自動で混ぜる機械づくりに挑戦したものの、どうしても、鍋に「混ぜる死角」ができ、あんこが焦げて、味が台無しに…。
しかし、カジワラは1960年、12年ごしで、混ぜるのが上手で焦げにくい「あん練り機」の開発に成功したのです! 実際に動かしてもらうと…
ん!? ただ回っているだけに見えますが…
白澤さん:ここの軸だけじゃなくて羽根ごと回るんですよ。
そう!このカジワラの撹拌機は、根元が回ると同時に、斜めにずらした接続部分も回る!
このダブル回転で、羽根が鍋全体を死角なしに混ぜるから、あんこが焦げ付く前に、鍋の表面からあんを、からめ取っていく、というわけ。さらに…
白澤さん:普通の撹拌機はどんどん粒がつぶれていっちゃうんです。
その絶妙な感じを機械で出すのが難しいんです。
羽根の回転速度は、遅いと焦げる、速いとあんこの粒が潰れるので、1分間におよそ10回転と決まってるんです。こうして、焦げ付きのないふっくらとした粒あんが完成するんです!
そして、このカジワラは、ほかにも儲かる羽根がいっぱいある!
白澤さん:あんこがうまく混ぜられれば、他のどんな食品でもうまく混ぜることができるんです。
例えば、混ぜるものが変われば、羽根も変わる!
こちらは、カスタード用の羽根「カスタード羽根」。
カスタードはあんこよりも焦げやすいのでおよそ7倍!1分間に70回転!
さらに…
両脇に泡立て網パーツが一体化! カスタードがトロッとしてきたら、この網がフワフワに! ムラのない仕上がりになるよう、網の幅は細かく決まってる!
まさに、まぜる羽根のプロ「カジワラ」ですが、実は、これまで食品業界では「絶対!不可能」と言われたあるモノを混ぜる羽根も作っちゃったんです!
白澤さん:これはさらに混ぜ上手な機械でして、チャーハンを作る機械です。
こちらは…1600万円のチャーハンを作る機械「チャーハン用電磁スチーム」!
混ぜ上手のポイントは、このトゲトゲの羽根。
これまで「チャーハンをおいしくパラパラにするのは、どうしても料理人の鍋フリが必要。機械ではムリ!」と言われていた業界の定説を、この羽根でついにひっくり返したのです!
卵投入で調理開始! すると、ご飯が入ったところで…
トゲトゲの羽根が動き出しました。
白澤さん:職人さんがチャーハンを炒めている時って、鍋で煽って作るんですね。だから同じぐらいの高さまで煽れるように工夫してます。あまり高すぎても冷めちゃいますし、低すぎてもほぐれないので。
そう、パラパラチャーハンのポイントは、トゲトゲの羽根が、チャーハンを「冷めずに、ほぐれる」絶妙な高さに跳ね上げて、混ぜること!
こうして、チャーハンが完成!
そのまま凍らせて「冷凍チャーハン」としても、店頭に並ぶほど超パラパラな仕上がりに!そんな調理人顔負けの食品調理マシンがウケて…カジワラの昨年度の売上は過去最高の65億円!
カジワラは、絶妙に混ぜる羽根で、がっちり!
▼スタジオでお話を伺いました。
加藤さん:スゴイ会社ですね。あんこの機械1960年にできたんでしょう?
森永さん:おそらく赤坂の超一流羊羹店が使ってるわけですよ。だからもう業界全部が使ってるって言うのに近いんじゃないですかね。
加藤さん:手でやるのと同じぐらいのあんこができるんだったら、絶対、機械の方が、いいですよね。
売上げ6兆7000億円! 物流センターで人気巨大扇風機
続いてやってきたのは、名古屋にある…
「豊田通商」。
あの「TOYOTAグループ」の総合商社というから、なんだか儲かってそうですが…お出迎えしてくれたのは、営業担当の古川雄一郎さん。
スタッフ:会社の売上げってどれくらいあるんですか?
古川さん:会社で6兆7000億円の売上げがございます。
スタッフ:6兆円!?
そんなマンモス企業の「儲かる羽根」とは?
体育館にあるというので、見せてもらうと…
古川さん:こちらになります! 直径5.5mのビッグアスファンです。
スタッフ:めちゃくちゃでかいですね。
古川さん:かなり大きなシーリングファンになります。
豊田通商の儲かる羽根「ビッグアスファン」。全長最大7.9mという巨大扇風機で、アメリカでは、すでに15万台以上売れているという。
古川さん:日本でよく使われている家庭用の扇風機50台分の風量を
1台でまかなうことができます。
ではその実力、見せてもらいましょう。
古川さん:どうぞ!
スタッフ:回りましたね。
スタッフ:あぁ なるほど…
思ったよりもゆったりな風…。これが、儲かる羽根??
スタッフ:結構ゆっくり回すんですね?
古川さん:はい、ゆっくり回します。普通の扇風機に比べると、
10分の1ぐらいの回転速度しかございません。
そう、普通の扇風機が、「毎分1000回転以上」回るのに対し、ビッグアスファンは「60回転程度」と、かなりのんびり。その風を測ってみると…
「風速1m」…本当にこれで大丈夫なのでしょうか?
古川さん:風速1mぐらいで体感温度が5度ぐらい下がるんですけども、風速が2m、または風速3mになったとしても体感温度が10度とか15度下がるわけではございません。1mくらいが一番涼しく感じる、そういった風速となります。
この巨大ファン、目的は強い風を送ることじゃなくてその風で、ものを冷やすこと。そのためには、風速1mくらいが一番いいんだとか。
古川さん:アメリカで元々は『牛の熱中症対策用』に開発された商品でございます。
そう!牛は熱中症になると、乳が出にくくなる。そこで、「牛の体を冷やす」ために開発されたのがこの巨大扇風機なんです。
古川さん:『牛の熱中症対策に効くもの』は、『人の暑さ対策にも効くよね』っていうことで…。
風はゆっくりでいいのですが、大きなスペース全体をまんべんなく冷やすためには、巨大な羽根で空気をかき回す必要があるんです。
こちらの5.5mぐらいの羽根なら30m四方ぐらいの範囲に、対流を起こし、風を送ることができるという…。
この巨大な扇風機のいいところは、なんといっても冷房と比べて、電気代がかからないこと。電気代は、およそ10分の1程度。
例えば、あの「スパリゾートハワイアンズ」では、「ビッグアスファン」を、3台導入しただけで、空調コストが、月およそ100万円削減されたんだとか。
そして、古川さんによると、この巨大扇風機が今、すごい売れている場所があるという。それが…物流センター!
古川さん:熱中症対策、夏場の暑さ対策というのが叫ばれております。
こちらでは直径6.7mのビッグアスファンを、館内に4台設置。棚や荷物がたくさん置かれていても、その間で作業する人をひんやり冷やしてくれるのが、人気なんですがそこには、ビッグアスファンの細かいこだわりが!?
古川さん:実は、この羽根先を見てください。黄色い部分が上がっているかと思います。それよって風が斜め45度に吹き下ろすことができます。
確かに、羽根の先っぽの黄色い部分がクイッと曲がってる。実は、これがないと、大きな羽根が回転したときに…
空気の何割かが横に逃げてしまう。
この、黄色い部分がそれを逃さず、風を全部つかまえて、斜めに横に落としてくれるのでより広い範囲に効率よく風を送れるんだとか。
だから棚の間で作業していても…
スタッフ:あ、すごい。風速1mありますね。
古川さん:棚の間でも風が来るのがわかるかと思います。
従業員:どこにいっても涼しさを感じてます。
この「ビッグアスファン」。お値段は1台、300万円~400万円となかなか値が張りますが、いま、こうした倉庫が日本に増えてることもあり年間300台が売れてるというから絶好調!
豊田通商はビッグアスファンで、がっちり!
▼スタジオでお話を伺いました。
劇団ひとりさん:風速1mが涼しいというのが信じられないんですが…
古川さん:風速1mが一番、心地よく涼しさを感じるスピードで、いくら風が強くも、体感温度は6度、7度ぐらいまでしか下がらないものですから。
加藤さん:結局、一緒ってことですか?
古川さん:はい。
劇団ひとりさん:出そうと思ったらもうちょっと速度出せるんですか?
古川さん:回せるんですけども、それによって、いろんなものがまき散らかっちゃったりします。それでいて、体感温度はそれほど下がらないので、無駄だよねっていうことです。
加藤さん:電気代もかかりますもんね。
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