インテルがファウンドリ設備増強もTSMCのポジショニングは盤石
TSMC:Intelファウンドリ事業参入へのインプリ → TSMCの売上、設備投資見通しに影響なし
- 3/23引け後にIntel (INTC)のCEOがファウンドリ分野への参入を発表。
- ファウンドリ事業への再参入はサプライズであったが、成功するか否かには懐疑的な見方。TSMCの中長期的な成長ストーリーに特段変化はなく、売上高や設備投資のダウンサイドリスクも特段無いと考える。
- アリゾナでの工場建設費用$20bilはノーサプライズ。CAPEXの支出について具体的なタイムラインは公表されていないが、4年超の期間に渡ってCAPEXが投じられると予想。
- $20bilの設備投資によって確保できる生産キャパはIntel基準の7nmプロセスでは30k-40k/wpm、5nmプロセスでは20-25k/wpm程度であり、Intelが必要としている200k/wpmには遠く及ばない。
- PCおよびサーバー向けCPUでは2023からTSMCの3nmプロセスを使用するとの見方に変わりなく、早ければ2022年下半期に前倒しされると予想。
- 日系化学メーカーにとってのインプリケーションは中立 or ややポジティブ。インテルがファウンドリ事業に参入したとしても最終需要に変化はないので、単純に供給先が増えることによる価格競争力の向上がポジティブに寄与しよう。
- TSMC関連の化学メーカーではTSMCの先端ロジック向けにメタルCVD系材料、High-Kなどを販売し堅調な需要を取り込めている、トリケミカル研究所(4369)にもポジティブ。
Intelのファウンドリ事業再参入の成功について懐疑的な理由
- Intelが前回ファウンドリに注力していたのは22nm / 14nmプロセス(2012−2013)。当初はTSMC、サムスンと比較して3年強の技術的優位性を有していたことや、SoC/FPGA顧客との利害不一致なども限定的であったが、それでも結果的に失敗に終わっている。
- 2021年現在においてはTSMCが技術面で2年強ほど先駆しており、Intelと競合しているファブレス半導体顧客(AMD、NVDA、QCOM、XLNX、AVGO、MRVL)や、CSPプロバイダー(GOOG、AMZN、MSFT)などとの利害不一致によってより事業展開が難しくなっていることも気掛かり。
- ファウンドリ事業への参入・撤退を繰り返していることから潜在顧客はIntelと長期契約を締結する可能性は低く、ピュアプレイのファウンドリ企業として確たる立ち位置を確立しているTSMCへの影響は限定的に留まろう。
- 以上のことから、TSMCの売上高や設備投資ガイダンスのダウンサイドリスクは特段ないと考えている。