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【北大阪環状モノレール】第8回 第一期工事区間(案)で示された阪急箕面駅と箕面萱野駅を結ぶ区間について


第8回では、引き続き2024年7月下旬に北大阪環状モノレール準備室より示された第一期工事区間(案)の中で、駅ができる場所として示された箕面萱野みのおかやの駅と阪急箕面駅、そして箕面市の状況について見ていきたいと思います。



1:箕面みのお市の概要

箕面市の地理的特徴

大阪府箕面みのお市は、大阪平野の北西の端から北摂山地にかけて位置する大阪のベッドタウンです。
面積は47.84平方㎞あり、東西 7.1km、南北約 11.7kmです。市域の約6割が山間部となっており、その中には1967(昭和47)年に、明治100年を記念して東京都の高尾と共に指定された国定公園「明治の森 箕面国定公園」があります。

明治の森箕面国定公園内にある箕面の滝
箕面はもみじの名所。国内外から多くの観光客が訪れる

箕面市の大きな特徴に、住宅地として発展してきた歴史から、北摂7市の中で唯一、市内に工業系の用途地域がないことがあげられます。
市域は西部地域、中部地域、東部地域、北部地域、中央山間地域に分けられます。
西部地域は古くから大阪の郊外住宅地として開発され、現在も「大阪の高級住宅街」として知られています。
中部地域から東部地域は、国道171号線(西国街道)沿いにロードサイド型店舗や住宅を中心とした市街地が続きます。東部地域の茨木市と隣接するエリアには、本連載の 『第3回 駅が計画されている地域の状況(その2)』で紹介したニュータウン「彩都さいと」(国際文化公園都市)が広がります。

箕面市の町並み

北部地域と中央山間地域には北摂の山々が広がります。
この山間地域にある止々呂美とどろみ地区には、1980年代末に大阪府によって計画され、2007年9月に町びらきしたニュータウン「水と緑の健康都市・箕面森町みのおしんまち」があります。
箕面森町の町ちびらきに先立つ2007年5月には、中部地域と止々呂美地区を結ぶ国道423号線(新御堂筋)のバイパスとなる、延長7.2㎞の箕面トンネル「みのおグリーンロード」が開通しています。さらに2017年には新名神高速道路が開通し箕面とどろみインターチェンジが開設されました。
里山に新しい町と自動車交通の結節点が出現しています。

箕面とどろみインターチェンジ
出典:Wikipediaより
アラツク - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64862258による
箕面市の位置関係

ここ10年あまりの人口増加率は北摂7市の中で2番目

箕面市の人口は増加傾向にあります。
2014年からの10年間の人口の推移を見ると、2014年10月に134,997人だった人口は2024年10月現在139,450人と11年間で3.3%増加しています。この増加率は、同じ期間、北摂7市の中で見ると、吹田市に次いで2番目、7市の平均の増減率1.65%を大きく上回るものです。

7市のうち、池田市と高槻市は人口が減少しているが、他市は増加している
北摂全体の人口も増加傾向にある
出典:各市のホームページ掲載のデータをもとに作成(単位:人)

箕面市の人口増加の背景として、次の点があげられます。

  • 新市街地の整備や住宅供給の進展による子育て層の転入

  • 子育て支援策の充実

  • 豊かな自然や上質な住環境

  • 大阪都心部へのアクセスのよさ

  • 北大阪急行線の延伸による都市の将来性

特に今年(2024年)3月の北大阪急行線の延伸は、箕面市にとってここ数十年で最大ともいえる出来事でした。
新大阪、心斎橋、なんば、天王寺といった大阪の主要地点と直接結ばれた箕面萱野みのおかやの駅が市の新たな玄関口となるだけでなく、北摂の新たな拠点としても注目されるようになりました。

箕面市に姿を見せた大阪メトロ御堂筋線の電車
2024年3月、大阪メトロ御堂筋線と直通する北大阪急行の箕面萱野駅が開業
箕面市から、これまでの梅田(キタ)に加え、新大阪やミナミの主要地点へも
乗りかえなしで行けるようになった

2:箕面市地域公共交通計画

持続可能な公共交通を目指す

箕面市は2022(令和4)年「人と環境にやさしい持続可能な公共交通網の構築による将来にわたってにぎわいと活気にあふれる交通まちづくり」を基本理念とした「箕面市地域公共交通計画」を策定しました。
計画の達成時期は2030(令和12)年度とされています。
この交通計画策定の背景として、周辺自治体よりも高いマイカー依存の移動スタイル、運賃体系や乗り継ぎのわかりにくさ、高齢化の進行によるこれまでになかった移動需要の発生といった箕面市の交通課題が挙げられています。そして「箕面市地域公共交通計画」では課題解決のための具体的な施策を打ち出しています。

打ち出された具体策

「箕面市地域公共交通計画」で打ち出され、計画に明記されている具体的な施策は次の10施策です。

  1. 鉄道網の整備

  2. 路線バス網の整備

  3. オレンジゆずるバス(コミュニティーバス)網の整備

  4. 環境にやさしい公共交通の構築

  5. 公共交通利用環境の整備・改善

  6. 公共交通のシームレス化

  7. 公共交通のバリアフリー化

  8. 公共交通に関する情報発信・利用促進、 モビリティマネジメントの実施

  9. 交通モードごとの機能分担及び連携

  10. 多様化する交通ニーズへの対応の検討

このうち、ひとつ目の鉄道網の整備は北大阪急行線の箕面萱野駅への延伸により一区切りがつくとともに、施策2と3のバスネットワークも箕面萱野駅を中心としたネットワークに再編されました。
その他の施策についても、現在、取り組みが進められています。

3:北大阪環状モノレール構想と箕面市

「北大阪環状モノレール構想」と箕面市各施策との接点はまだない

現在のところ「箕面市地域公共交通計画」はじめ箕面市が掲げる計画と、北大阪環状モノレール構想との間に関りはありません。
今夏に公表された第一期工事区間(案)はじめ、北大阪環状モノレール構想を実現していくには、この構想が箕面市が掲げる各施策の実現に資する必要があることは言うまでもありません。
「箕面市地域公共交通計画」では計画の目標として、次の4点をあげています。

  • 人々の移動を支える持続可能な公共交通網の構築

  • 誰もが安全で安心して利用しやすい公共交通環境の実現

  • 市民の公共交通への関心の向上及び公共交通を守り・育てる意識の醸成

  • 多様な移動ニーズの発生を見据えた体制の構築

北大阪環状モノレール構想が掲げる「北摂の地域交通を持続可能なものする」という目標は、箕面市が掲げる目標の実現に資するものだと言えるのではないでしょうか。

4:阪急箕面駅と北大阪急行箕面萱野駅

箕面の2つの玄関口をシームレスにつなぐ

今夏に北大阪環状モノレール準備室より公表された第一期工事区間(案)で、阪急箕面駅と箕面萱野駅の区間を建設するとした背景には、これまでの箕面市の主な玄関口だった阪急箕面駅と、新しい箕面市の玄関口となり急速に発展する箕面萱野駅を直接結び、両駅を一体化させる狙いがあるものと思われます。

北大阪環状モノレール準備室によって発表された第一期工事区間案(箕面市区間)
画像提供:北大阪環状モノレール準備室

古さが目立つ阪急箕面駅と新しい箕面萱野駅

阪急箕面駅周辺は昭和50年代を中心に整備されましたが、整備から40年以上を経て建物の老朽化も目立っています。さらに当時建設されたビル「みのおサンプラザ1号館」は耐震診断を行った結果、耐震性不足との診断結果が出されました。

阪急箕面駅

一方、箕面萱野駅周辺は、2000年に着手された「北部大阪都市計画事業萱野中央特定土地区画整理事業」により開発が始まり、2003年には複合商業施設「箕面マーケットパーク ヴィソラ」(2013年に「みのおキューズモール」に名称変更)がオープンするなど「箕面新都心」として発展を遂げています。

北大阪急行 箕面萱野駅

阪急箕面駅と箕面萱野駅は直線距離で1.9㎞あまり離れており、徒歩での移動は一般的ではなく、バスでも13分かかっています。
現状のまま推移すると、阪急箕面駅周辺と箕面萱野駅周辺との間で開発に格差が生まれ、箕面萱野駅周辺地区への一極集中を招く可能性があります。
箕面の2つの玄関口を北大阪環状モノレールによってシームレスに結ぶことで、両エリアの特性を活かしたバランスのとれたまちづくりができると考えられます。

箕面市の人口は増加傾向にあるが、阪急箕面駅の乗車人員は減少傾向にある

5:阪急箕面駅前で進む「みのおサンプラザ1号館」の建て替え事業

阪急箕面駅周辺でも活性化に向けた取り組みが行われています。

建て替えスキーム

2015年に行った耐震診断の結果、耐震性不足との診断結果が出された「みのおサンプラザ1号館」は、区分所有者らによる協議の結果、建て替えられることになりました。
建替えに当たっては、耐震性に課題がある建物の建て替えの促進を図る目的で制定された法律「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(マンション建替円滑化法)によるマンション敷地売却制度が適用されました。この制度が関西圏で初めて適用された事業ということもあり「みのおサンプラザ1号館」建て替えは注目を集めました。
建て替えスキームは、マンション敷地売却制度により売却される土地を箕面市が取得したのち、市は土地を新しい建物の区分所有者に定期借地契約により貸付る。建物の所有者は、新しい建物が完成してから70年後に土地を更地に戻して市に返還するというものです。
建物の建設は、事業協力者となった東京建物株式会社、阪急阪神不動産株式会社を中心とする共同事業体で行われます。

建て替え後の「みのおサンプラザ1号館」の概要

計画によると、新しい建物は、1階から3階に集客施設が入り、4階から11階は分譲マンションとなる予定です。
「みのおサンプラザ1号館」には公共施設が入居していたこともあり、市は新しい建物でも駅前の顔となる施設の整備を計画しています。
2023年3月に示された市の素案では、集客施設として次の案が示されています。

  • 観光客も気軽に立ち寄れる滞在型施設

  • 箕面の雰囲気に合う飲食店や特産品アンテナショップなど

  • 貸し会議室や子育て支援施設など

箕面市は「みのおサンプラザ1号館」の建て替えを起爆剤に、長年、箕面市の玄関として親しまれている阪急箕面駅周辺エリアを活性化したいとしています。

「みのおサンプラザ1号館」建て替え後のイメージ
画像提供:箕面市(市ホームページより)

活性化する阪急箕面駅と「箕面新都心」となった箕面萱野駅が、北大阪環状モノレールの実現によって結ばることになれば、箕面市の魅力はさらに高まるのではないでしょうか。

阪急箕面駅近くの温泉施設からの眺望
北摂山麓に位置する箕面。大阪中心部はじめ大阪平野を一望できる

次回は、北大阪環状モノレールにどのような交通システムを導入することができるか、考えてみたいと思います。


<参考情報>
北大阪環状モノレール準備室ホームページ


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