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范文雀の旅【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』第26回】

サウナ支配人や熱波師をかたどった粘土造形を手がけるクリエイターにしてサウナー・サウナのサチコのサウナ訪問記。「ととのった」と感じるまで半年かかったという不器用サウナーならではの独自目線で、サウナ施設とそこに働く人々の魅力を切り取ります。

サウナのサチコと名乗っているくせに、サウナの話をちっともしない。なんならサウナにそんなに行ってないんじゃないか。そんな声が聞こえてくる前に、サウナの旅に出てサウナの記事を書くことにした。埼玉から新幹線で1時間ちょっとの場所。日帰りもできるが、せっかくだから1泊するぞと意気込んで家を出た。

インスタやX(Twitter)を探しても、その温浴施設のアカウントはない。その温浴施設の名前を何度聞いても、「范文雀」にしか聞こえない。それでもそこは知る人ぞ知る、いやほとんどのサウナーが知っているであろう、有名な場所だ。

新幹線の駅からさらにバスに揺られて30分強。バス停からさらに日陰のない道を10分弱歩いて目的地に到着した。白い壁に緑の屋根。赤い鳥居のような入り口を通って中に入ると、そこからはよくある銭湯の景色が広がる。フロントで靴箱のキーを渡すと「スタンプカードはいかがですか」と聞かれ、「遠くから来たのでいりません」とお断りする。「あら、遠いってどちらからいらしたの?」という質問を期待したがそんなやりとりはなく、私は2階の浴場へと静かに階段を登った。

好みの感じだった。
私の好みというのは、こじんまりしているということだ。「韓国600年の伝統温熱療法」によるドーム型の韓国式サウナの他にも、紫水晶サウナ、ロッキーサウナと全部で3つのサウナがまとまってそこにある。寿司でもなんでも好きなネタから食べる私は、一番気になっているドーム型のサウナから早速入ることにした。

が、入り口を見て腰がひける。扉がとてもとても小さいのだ。私は閉所恐怖症で、しかも暗いところが苦手だ。どうしよう。体を小さくして次々と中に入っていく女性たちのお尻をいくつも見送りながら、ここまで来たのだからと私も後に続くことにした。

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