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シアノン伝説。

◆製品の進化と寿命

明日から12月、今年も沢山の模型用品が生まれてきましたが、果たしてどれくらいの商品が来年、再来年も第一線でモデラーさんの人気を集めているでしょうか?

というのも、ここ数年感じる「製品寿命」の短さは、まるで気が付くといなくなってる夏のセミたちのよう。とにかく季節の移ろいより速いスピードで、様々な商品が生まれては消えていく感覚。

正直G PARTSを創業する以前は、「模型用品」というジャンル自体があまりはっきりしていないというか、「模型用」とは謳っていないものを模型に流用したりすることがむしろ主流でした。中でもヤスリやニッパーのような基本ツールは、明確な模型用ではないものを使っていたモデラーさんが多かったと思います。そういう意味では、ヤスリやニッパーはこの20年で最も模型用に特化した製品が多く生まれたジャンルではないでしょうか。

これら「模型用」ツールがけん引役となって、その後続々と模型用品が生まれてきたわけですが、未だにそれ以外のジャンルからの流用ツールが模型用に使われている例が沢山あります。

例えばロックペイント - グレージングパテグリーンII (250gは元々車の補修用として使われるものですし、ヒノデワシ - おゆまる(型取り・複製用 10個入)も子供向け玩具の流用。

少し前ではHIROMI - ミライト316(超小型LED付リチウム電池)という超小型のLEDが出てきましたが、これは本来釣具だったりします。

これらはある意味、全く違うジャンルから模型用品として進化した使われ方をしているといえるんですが、中でも人気の製品が、高圧ガス工業- シアノンDW 20g 中粘度型)です。

◆建設業から生まれた粘度の高い「白い」瞬着

ご存知の方も多いかもしれませんが、このシアノンDWはもともと建設業界で使われている製品です。また一般流通していない製品なので、JANコードが無く、流通経路も非常に限られているのが特徴です。

元々は割れた大理石を接着したり、隙間を埋めたりといった用途で使われているので、硬化後の高い強度と対象物からはみ出しても違和感の少ない色が特徴なんですが、その特徴に加えて、高強度でありながらヤスリで綺麗に削ることができたり、硬化後も白い状態なので、塗装する際にも見やすかったり下地の色を気にしなくていい、などといった「模型的」なメリットがあります。

更に削りやすくするため、天花粉(てんかふん)やベビーパウダーをシアノンに混ぜるなどの工夫やノウハウがそこから生まれ、例えば破損したフィギュアの補修などの場合は、分割して再塗装するのが難しく、補修箇所が目立ちにくい色だったり削りやすいことで重宝されています。

◆シアノンの消費期限の見方

ただ、このシアノンに限らず瞬着には実は消費期限があり、一般的には長くて6か月程度といわれています。ただこれは明確に決まっているわけではなく、開封後はできるだけ早く消費してくださいというのがメーカーさんの説明でしたので、季節や保管状態にも影響されるんだと思います。

特に日本は湿気が高く、瞬着が早く硬化してしまう条件がそろっているので、できるだけ早めに使い切ってほしいわけですね。

でも製品の消費期限はどうやって調べればいいのかというと、シアノンが個包装されているロット番号を見るとそれが分かります。

シアノンのロットナンバー

ちょうど昨日入ってきたばかりのシアノンのロット番号を見ると「37544K」と表示されていますが、この数字の最後の2ケタが製造年月を示しています。

数字は「年」を示していて、4はそのまま「2024年」を示しています。また、アルファベットはAから順番に数えていくことで「月」を表していて、この場合「K」なので、「A=1月」「B=2月」「C=3月」・・・と数えていくと「K=11月」ということが分かります。つまり、この製品は2024年11月の製造ですよ、ということがわかるわけです。手元にシアノンがある方は、是非一度そこを確認してみて、「あああと1か月」などと追い詰められてみるのも一興です(オイ)。

◆なぜ製品寿命が長いのか

ご存知の方も多いと思いますが、この数年くらいで各社から様々な模型用瞬着がリリースされています。
様々な色のついた製品や、従来品より削りやすくしたものなど、より模型用品として手を出しやすいものが増えたのは確かなのに、それでもなぜかシアノンDWが売れ続ける理由はなんなんでしょうか。

その理由のひとつは、「ノウハウの蓄積量」ではないかと思います。

シアノンが昔から多くのモデラーさんに活用され、ホームページの時代からブログ、SNSと長い期間に渡って活用され続けてきたのには様々な理由があるはずですが、多くのモデラーさんがそれを活用してきた沢山の実績が、膨大なノウハウとなって蓄積していったからではないでしょうか。

その結果、熟練したモデラーさんだけでなく、初心者にも使いやすく汎用性の高いマテリアルとして定着していった結果、「安心して使える」「失敗しない」などといったブランド力を身につけたという結果になったのではないかと思うわけです。

◆ノウハウを遺(のこ)せ

そう考えると、ホームページやブログなどの昔の記事はまだ価値があるものと感じますよね。

なぜなら、SNSのような即効性のある情報拡散力はなくても、伝統や価値観といったものを残していくのに、今は紙媒体よりも、WEB上の情報に頼ることが多いからです。

じゃあSNSじゃダメなのか?というと、実際どうなんでしょう。

ユーザー数が無数に増え、流れが速くて24時間追って見ているわけにはいかないですし、余分な情報や偏った情報も多く、その選別が難しい最近のSNS。こうなってしまうと、大事な情報を自分のタイミングで拾いにいくには不向き。

それにX(旧twitter)のような短文では、どうしても「切り取り情報」だったり、都合のいい情報しか目に入ってこなかったりするのもマイナス要因。どんな製品でも、メリットとデメリットがあって、良いところばかりの製品はありません。どちらも知る事が本当の情報武装です。

つまり今は本当に必要な情報はもう自分で追う時代なのではないかと思うんです。

そういう意味では、すでに膨大な量のノウハウが残されているシアノンの場合、後発の製品がどれだけ出てきても、それを超えるまで大変な時間が必要になるわけですから、その力は新商品と比べて圧倒的だと思うわけです。

ですがだからこそ、ここから学ぶことがありますよね。
それは、言葉の寿命が短かったり、情報密度が薄くなりがちなSNS時代だからこそ「情報の蓄積」が必要だということです。
昨今の製品寿命が短くなったのには、これが十分ではなくなったのが理由のひとつではないかとも思うわけです。

1/100 Zガンダム

古のモデラーさんたちは、良い製品をブログで紹介し、製品のレビューを書き綴っていました。その記事とツールが様々な新しいモデラーに影響を与え、引き継がれてきた歴史があります。
情報力がモノを言う時代だからこそ、良質なものを見分けて選別し、その記録をあとに残すことも、その製品寿命を延ばし、結果、良い製品を長く活用していける環境を維持する力になっていくのではないか、なんてことを考えながらガンダムを久しぶりに作ってました閑話休題。

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