ノーコード時代のウェブサイトビルダーソリューション 必須条件10箇条
「ノーコード」という言葉が広まる以前から、同様のサービスは「ウェブサイトビルダー」と呼ばれ古今東西からさまざまなものがあります。
そこで、筆者が提唱する「ノーコード時代のウェブサイトビルダーソリューション 必須条件10箇条」を用いながら、現代的なウェブサイトビルダー(ノーコードプラットフォーム)の評価基準と、それぞれについての解説を記します。
条件1. WYSIWYGUIであること
WYSIWYG(What You See Is What You Get)とは、最終的な成果物(出力画面)と同様の編集画面でオーサリングを可能にするコンピューターのユーザインタフェースの技術概念です。
現代の一般的なOSやソフトウェアが、WYSIWYGを前提とした設計と機能を持っています。
テキストエディタでコーディングをしながらウェブサイトを制作する場合、テキストエディタの文字入力の画面でソースコードを編集することになりますが、ノーコードのエディタは、まさに現状の出力状態に近い画面に直接編集を施して制作を進めます。
ノーコードプラットフォームはコーディングが不要なことに合わせ、このWYSIWYG機能によって、完成形をイメージしながら感覚的な編集体験が可能になるのです。
しかし、その出力形態への近似の度合いがノーコードプラットフォームによって差があり、ワープロソフトような程度のものから、まるでFigmaをはじめとするプロトタイピングソフトやグラフィックソフトのようなリアルなものまであります。
また、高いWYSIWYG機能を有し、さらにレスポンシブウェブデザインの編集も可能なノーコードツールを、筆者は「次世代型WYSIWYGエディタ」と呼び、他の平易なツールを「ブロック型エディタ」として区別しています。
条件2. 自由な要素の構成が可能であること
現代のウェブページデザインは、同一のページの中に、上から下方向に向かってさまざまな掲載要素(コンテンツ)を配置しています。
それはテキストであったり、画像や動画であったり、あるいは装飾やアニメーションなどの演出も配されたりします。
旧来のウェブサイトビルダーは、デザインされたテンプレート(雛形)を元に、そのテキストや画像を置き換えることでウェブページを制作するものが多くありました。
その場合、テンプレートから大きく変更を伴うような自由な編集ができなかったり、できたとしても手間や時間がかかってしまったり、不具合が生じてしまったりなど、不自由なものがありました。
現代のノーコードプラットフォームと呼べるものは、要素の差し替えや順番の変更、細かい変更などができるべきだと考えます。
また、自由な要素の構成が可能なプラットフォームは、何もデザインが施されていない空っぽの「白紙」のテンプレートが用意されており、ゼロからデザインをすることが可能になっています。
条件3. コーディングが完全に不要であること
当然ながら、ノーコードと呼ぶからにはHTMLやCSS、JavaScriptなどをハンドコーディングすることなく、標準的なウェブサイトの構築が可能でなくてはなりません。
コーディングを多少なりとも行うことを前提とした設計のプラットフォームやツールであれば、それはもはやノーコードとは言えないでしょう。
しかしながら、新しいプラットフォームの中には、TeleportHQのようなフロントエンドエンジニア向けの「コーディングも可能」なものも登場しています。
このようなものの場合は、ノーコードではなくローコード(Low-code)と呼ぶのが相応しいでしょう。
TeleportHQ
条件4. SaaSであること
クラウドコンピューティングが普及する以前は、ウェブ制作のツールも編集するローカル環境のコンピューターへインストールして使用するパッケージタイプのものが多くを占めていました。
現代のノーコードプラットフォームでは、SaaSによるウェブサイトビルダーとして提供されるものが大半を占めています。
Saasであることの大きな利点は、ウェブサーバーの管理が不要であるということです。
つまり、ウェブサーバー上のファイルのバックアップや、サーバーソフトウェアのアップデートなど、保守管理のすべてが必要ありません。
ノーコードプラットフォームは、ウェブサイトの制作コストが低く抑えられるだけではなく、ウェブサーバーの保守管理コストも削減できるのです。
しかし、SaaSによるプラットフォームであると、そのデベロッパー(提供社)が提供するホスティング上でウェブサイトを構築することなり、それが仇となって採用ができないことも往々にしてあります。
そこでWebflowでは、SaaSとしてウェブサーバーをホスティングするサービスと並行して、HTMLやCSSをエクスポート(書き出し保存)ができる機能のサービスも提供しています。
その出力されたファイル群をアップロードすることで、望みのサーバーでウェブサイトを構築することが可能になります。
Webflow
条件5. CMS機能を搭載していること
WordPressなどでお馴染みのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を、現代の各種ノーコードプラットフォームは搭載しています。
ブログももちろんのこと、WixやEditor Xのように、機能を追加すればECサイトや会員制サイトなどを構築できるプラットフォームもあります。
Wix.com
Editor X
条件6. SVGに対応していること
SVG(スケーラブル・ベクター・グラフィックス)とは、座標などの数値データによるグラフィックの形式です。
これは、解像度に依存しない形式のため、拡大縮小や変形が自由かつ再編集が可能であり、ウェブブラウザ上でも変幻自在な表示ができます。
そのため、現代のマルチデバイス対応の時代に合致しており、レスポンシブウェブデザインと合わせて利用が普及しました。現代のノーコードプラットフォームは、このSVGに対
応し表示できるべきだと考えます。
条件7. 動画のアップロード掲載が可能であること
現代のウェブサイトにおける動画の利用頻度は、大幅に高くなりました。
ノーコードプラットフォームにおいても、そのホスティングサーバー上にアップロードした動画が表示再生されることが望まれます。
また、YouTubeをはじめとした動画共有サイトの動画も表示できることが望ましいでしょう。
条件8. ECサイトの構築が可能であること
ShopifyのようなECサイト専門のプラットフォーム以外に、WixのようなノーコードプラットフォームでもECサイトを簡単に構築することが可能です。
むしろ、Wixの利用料は他のECサイト構築のプラットフォームと比べ、比較的利用料が安く済むため、急激にECサイトでも利用者を増やしています。
特に日本では、最も利用されているECサイトソリューションとなっています(2023年現在)。
BuiltWith — eCommerce Usage Distribution in Japan
条件9. 外部 APIを搭載していること
ノーコードといえども、特殊なエンジニアリングのリクエストに応えなければならないことは往々にしてあります。
いざその際に、外部APIを搭載していることの重要性は無視できません。
ノーコードプラットフォームであっても、外部APIを通してエンジニアが力を発揮することで、ウェブサイトの可能性は無限大に広がります。
条件10. 共同作業機能を搭載していること
複数名の作業者や関係者が同時にウェブサイトを編集できる機能は、現代のウェブサイト制作においては重要な要素です。
プロトタイピングソフトのFigmaも、優れた共同作業機能を搭載しています。
現代のノーコードプラットフォームももちろんのこと、共同作業機能を搭載していることが望まれます。
さいごに
以上が、筆者が提唱する「ノーコード時代のウェブサイトビルダーソリューション 必須条件10箇条」ですが、ノーコードプラットフォームによって、その機能搭載の対応度合いはまちまちです。
それは優劣ではなく、各プラットフォームの設計思想や指向による違いと言えるでしょう。
プラットフォームの選定の際には、制作するウェブサイトの目的に照らし合わせて、適合するものを選ぶことが大切です。
UnsplashのKelly Sikkemaが撮影した写真