映画鑑賞記録202207

初見は●

映画館で観たやつ

● ブラック・フォン

https://www.universalpictures.jp/micro/blackphone

すげ〜丁度いいホラー映画。「そうそう、こういうのだよ……」っていうね。ジョー・ヒル × スコット・デリクソン × ブラムハウスの座組に期待するものは全部出てくる。いまいち弾けきれないまま終わるかなあ…という感じもあるけど、この小粒な感じもまたブラムハウス映画という感じで好ましい。どうせこういうの量産してくれるだろうし…

スコット・デリクソンのホラーは何より映像がかっこいいところが良い。"夢"の映像のザラついた質感や明暗のバキッとした画作り。ソフト化されたらあの超クールなオープニングを延々見ちゃうと思う。

鑑賞前は勝手にグラバーも怪異側の存在だと思ってたんだけど生身の犯罪者でちょっと拍子抜けした…が、話が進むにつれてその怪人っぷりが発揮されていったので良し。猫撫で声で話しかけてくるのもマスクの下のお目目が常にうるうるしてんのもキモい。あと、勝手にイーサン・ホークのことヒョロヒョロしたおじさんだと思ってたけどプロレスラーみたいな体型しててめっちゃ笑っちゃった。

● X エックス

面白いけどそんなに刺さらなかった、という感じ。『悪魔のいけにえ』とかあのあたりのオマージュと現代的な撮影テクニックのミックス、洒落た劇伴遣いは楽しかったがメインの要素がいまいちツボから外れてたかな。

『レリック 遺物』とかシャマランの『ヴィジット』とかと同じ系統の、老いる事への恐怖や若者から見た老人の理解不能さが中心の映画。老人ホラー。ただ老人のことここまでグロテスクに描いていいんだ…という驚きはあった。シワシワのジジイとババアのセックス(ボカシあり)とか…

クラシカルな田舎スプラッターとしては大人しめ。ピッチフォークで串刺しとかワニに食わせるとかは楽しいけど、せっかく史上最高齢の殺人鬼夫婦なんて銘打ってるんだからもっと見た事ないやつ出してほしかったな〜とは思った。殺人鬼も犠牲者も碌でなし揃いだからいまいちノれないし……

エンドロール後に前日譚の特報映像流れてたけどこっちの方が面白そうだな。1918年舞台のメリーポピンズ風味のスラッシャー。良いじゃん……

● 女神の継承

良かった。タイの土着信仰ホラー、というくらいのことしか事前知識入れてなかったので「モキュメンタリーなの!?」ってちょっと驚いた。最初にインタビュー受けてる霊媒師のおばちゃんがあまりにも"いる人"過ぎる…

霊媒師の仕事密着取材してたら段々と違和感が…って流れでジワジワ不穏さを高めていく感じかな〜と思っていたら急にギアが上がるのでまた驚く。派手に人が死んだりとかはあんまり無い(そういうのは最終盤までお預け)んだけど、コトが起こり始めた時点で既に「これもう絶対手遅れだわ…」って一発で分かる感じなのが凄い。怪異の原因についても「祖先の罪」以上の情報が作中で語られないので、それもう解決のしようがないじゃん……

最後には神様が助けてくれるなんて都合のいいことは起こり得ないし、人間の業から生じた呪いは命で以って清算するしかない……という超シビアな世界観なのかなと思った。"女神の継承"はあの地の人々の暮らしに当たり前に組み込まれているが、その当事者たる霊媒師がその女神の不在に気付いてしまっている…という孤独と絶望。あの霊媒おばちゃんの啜り泣きからエンドクレジット突入するの本当に最悪。

モキュメンタリーホラーとしてかなり高品質だとは思うけど、撮影班がカメラに徹しすぎててちょっと違和感はあったわね。撮影班のチーム構成がよくわからなくて、クライマックスで「思ったより大勢いるな??」ってなったり、パニックシーンで「流石にお前そこで動かないのは嘘だろ!?」ってなったり。

● ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

変な映画…fallen kingdomのあのオチから続けてやる話じゃないだろ!というのと、シリーズ最終作でやる話じゃないだろ!というのと、誰がドジスンなんか覚えてるんだよ!というのと。ただおれは好きだよ…結局いつものやらかしがないと話進められないよな〜というのは理解できるし、その上で楽しい画がたくさん出てくるから。

闇の恐竜市場のくだりなんかはちょっと007っぽさあるというか、テンション高めのスパイアクションwith恐竜みたいな、シリーズ過去作には無い楽しさがあってよかったし、終盤の恐竜保護区は"いつもの"にちょっとハイテクな色が付いてて新鮮。

with恐竜時代の日常回っぽい部分をもっと見たかったというのはあるが、恐竜は数も種類もたくさん見られたので概ね満足。種類数で言うと過去最多?羽毛ありラプトルとかギガノトサウルスとかクールな奴たくさん出てくるし、あの爪長いやつ(テリジノサウルスというらしい)が完全に"怪物"という感じで良かった。調べたら草食説あるらしいが、たぶん遺伝子組み換えられまくってるんだろうな…そっちの方が格好良いから…

配信などで観たやつ

● ナイトブック

Netflixで。ナイスなプレティーン向けジュブナイルホラーだ。児童書原作らしく、たぶん『学校の怪談』あたりと同じくらいの年齢層をターゲットにしてる。特別怖いシーンなんかは無いんだけど、魔女のファッションや魔女屋敷のビジュアル、絶妙にキモいクリーチャー(汁気が多い)等々素敵な要素満載で、その辺の年代の子供にとってのホラージャンルの入り口としてかなり適切な気がする。シリーズ化できそうな雰囲気。

ウィリーズ・ワンダーランド

アマプラで。ニコラス・ケイジ in Five Nights at Freddy'sという感じの映画だが、ニコラス・ケイジ(一言も喋らない)が嘘みたいに強くてずっと笑ってられる。怪異に襲われた直後に笑いながら反撃出来る男、ニコラス・ケイジ以外にいないでしょ……

シャーロック・ホームズ

Netflixで。ガイ・リッチーのほう。改めてみるとワトソン(演:ジュード・ロウ)が面白すぎるのと、RDJ全然ホームズっぽくないな?というのとで笑ってしまう。「精緻なシミュレーションに基づいた連続攻撃を叩き込み相手に反撃の隙を与えない」ってバリツの解釈が超好き。

ゼロ・グラビティ

Netflixで。これ観るの超久しぶりで、こんなにコンパクトな映画だっけ?ってなった。91分……最初劇場で観た時は「早くここから出せ!!!」って気持ちになってめちゃめちゃしんどかった記憶。視界いっぱいに広がる暗闇と頭が痛くなるような無音…という、劇場で観ること前提の映画だなあと思った。

● 呪詛

Netflixで。これ超楽しみにしてたんだけど、期待通りの超こえー映画で良かった…作中で起こる怪奇現象は勿論、冒頭の錯視演出に始まり、POV/モキュメンタリーの手法をフルに活用して"こっち側"に呪いを向けてくる描写の数々がマジで最悪。配信オンリーなの本当に勿体無いと思うな…せめてソフト化だけでも。

● ケース39

Netflixで。虐待されてた子供保護したら実はそいつの正体は悪魔だったので殺すしかねえ……となるホラー。画的には結構地味かなあという気もするが、クソガキのクソガキっぷりが物凄く、精神的に擦り潰されていく描写がイヤ〜な感じで中々良かった。ただこのテーマ、現代でやったら怒られそうな気もするな…

● 女哭声

アマプラでレンタル。すげー卑近なところから生じた割に呪いの規模感がすごい。岩の下から女の啜り泣く声がする→岩が爆散して不用意に近づいた男たちが粉微塵になるって展開凄すぎて笑ってしまった。
堂々登場した美形の霊媒師、絶対死ぬだろと思ってたのに"やってる感"出し続けて生き残ってしまった。どういう作劇だ。

● ザ・ビーチ

アマプラでレンタル。前半のコンパクトな終末SFとしての雰囲気もいいし、後半で畳み掛けてくるイヤすぎる造形の寄生生物たちの描写もいい。ジジイが海に向かってまーーーっすぐ歩いていって消失するシーン好きだし、ああいう静謐な終わりの予兆を描いた直後から堰を切ったようにキモクリーチャー大暴れに振り切っていくのも楽しい。海から来た"よくないもの"に滅茶苦茶にされた人類が海へと消えていく…って流れが美しくて。

NY心霊捜査官

Netflixで。ホラーというよりバイオレンスの映画として好き。スコット・デリクソンらしさが詰まった映画だと思う。NYの刑事ってナイフ持ち歩いてんの…?

● 風鳴村

アマプラで。パッケージや邦題は犬鳴村に擬態してるが中身はかすりもしてないスラッシャーホラー。これが結構真面目に作られててよかった。顔面を踏み潰す、ロープで首を捻じ切る、顔面に大穴が開く…みたいな拘りの面白ゴアも色々見られるし。
登場人物が全員ロクデナシで人の話を全然聞かないヤツばかりだったので殺されても「まあ…良いんじゃない…?」ってなるのがちょっと。最後に主人公が顔面ブチ抜かれて死ぬところ、『ディープ・ブルー』のラストと同じような気持ちになってしまった。

● イップ・マン 完結

アマプラでレンタル。すげ〜良かったな…シリーズの締め括りとしての美しさも申し分ないし、最後だし折角だからって具合にアクションも盛り沢山だし。このシリーズ、ストーリーはわりとワンパターン(中国武術界のゴタゴタや差別的な外国人勢力との対立をスーパー人格者のイップ師匠が解決する)な気がするけどそこに"重さ"を乗せられるのはドニー・イェンの力だよなあ…と思った。
今回は最晩年のイップ師匠の人生に焦点を当てつつ静謐に進むのかなと思ってたら超好戦的なスコット・アドキンスがラスボスとして出てくるからウケてしまった。

スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム

アマプラでレンタル。個人的にはMCUベスト作品。「絶対にやるに決まっている」と分かりきっていて期待値が爆上がりしていたあの展開を最高の形で実現しつつ、トム・ホランド版ピーター・パーカーの物語の幕引きとしても完璧なものを出してくる手腕。
ただこういうのは一回性が大事というか、ドクター・ストレンジ2とかMCUフェーズ4のあれこれを見てると「マルチバースは人類にはまだ早かったんじゃないの…」とか思ってしまう部分はあるね。過去の映画の結末を書き換えたり別の世界のキャラクターを引き込んできたり、何でもあり過ぎて制御しきれてないんじゃないの。大いなる力には大いなる責任が伴うというやつだ。

アメイジング・スパイダーマン2

アマプラで。これ改めて打ち切られたの残念だな…話がとっ散らかってる感じはあってもうちょっとコンパクトに出来ただろうなとは思うけど。グウェンの死とピーターの再起、この展開を経た3作目が見たかったな。これがあったからこそのNWHだというのは分かるが。

● ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス

アマプラでレンタル。異様に静かで陰気な画作りとタガが外れたような霊現象が交互に襲ってくる変なテンションの映画で良かった。未体験ゾーンに行きそびれたのが悔やまれる。

マッド・ハウス

アマプラで。どうも一回見たことがあるらしい(再生ボタンが「もう一度観る」になっていた)が中身をひとつも覚えてなかった。寝てたのか??
人間の人格を破壊すること/洗脳して"信者"を作り上げることの恐ろしさを徹底して描いていて、印象的な画が多くて良かった。ただ中盤の面白拷問&洗脳がピークで終盤はちょっとぶん投げた感ある。

プロミシング・ヤング・ウーマン

アマプラで。この映画の問題意識と怒りの温度感は物凄いが、これが届けられるべき層は絶対にこういう映画を観ないだろうな…という諦めのようなものもある。

● グレイマン

Netflixで。スパイアクションつっても"007"なのか"ボーン"なのか…と思っていたが、いつもの顔したライアン・ゴズリングが『コマンドー』みたいなアクションをやるやつだった。原作シリーズのディティールというか、諜報・スパイ描写周りのフェティッシュな部分は削られてたりするっぽい(未読なのでよく知らない)がこれはこれで結構好き。

ゴーン・ガール

Netflixで。何度も見返す映画ではないかなあと思っている(長いしだるいし)が、女殴るタイプのベン・アフレックがとても良いので。全体的に「なぜこんな話を…?」となる映画なんだけど、主演にベンアフを置いてるところ含めて物凄くタチの悪いブラックジョークなのかな…という理解。

バットマン vs スーパーマン

アマプラでレンタル。なげ〜しつまんね〜けどベンアフ版バットマンが一番好きなので時々見返す。ヒーロー物語を完全に"神話"として描くザック・スナイダーのやり方は好きだけど胃もたれするんだよな。

● ラリー スマホの中に棲むもの/Come Play

アマプラでレンタル。良ジュブナイルホラーだ。「そこにいるのに姿が見えない」という怪物の特性を活かした演出もいいし、主人公の子が自閉症?で他者とのコミュニケーションが取りづらいって設定が丁度いい難易度。結構ハードなことが起こってるのに何だかんだ(お母さん除いて)誰も死なないというのに結構驚いたが、いじめっ子との関係性含めて「この映画はそういうトーンなんだな」と納得いったので良し。

● クラシック・ホラー・ストーリー

Netflixで。『悪魔のいけにえ』かと思いきや『ウィッカーマン』『ミッドサマー』になり、イタリアのホラー映画業界を自虐した映画作成映画になり……という感じ。森の中の変な小屋、鳴り響くサイレンと赤く染まる風景、不気味な仮面を着けたカルティスト、みたいなビジュアル面はかなり良かったんだけど、終盤のメタ言及連発するくだりがダメダメ。伝えたいことは分かるが作品として昇華出来てないというか。あー自虐で気持ちよくなってるな〜としか思えず。

● ハウス・オブ・グッチ

アマプラでレンタル。現在のリドリー・スコット、伝統とか男社会みたいなものの解体に全力だな…と思った。『最後の決闘裁判』とこれが同年に公開されるのおかしくない???どういうペースだ。
俳優としてのレディー・ガガのイメージが『マチェーテ・キルズ』で止まってたけど普通に超名優じゃん…となった。アダム・ドライバーはどんな世界のどんな人柄を演じていてもアダム・ドライバーで凄い。

● ムーンフォール

アマプラで。ロジックは『星を継ぐもの』で、やってることはいつもの超スケールのディザスターという変な映画だった。エメリッヒ、破壊には興味あるけどそのロジックは別に何でもいいのかな…と思うなど(「月は巨大建造物だった!」みたいな部分がすげ〜あっさりしてる)。
クロエ・ジャオの『エターナルズ』でも思ったが、こういう人類の領域外にあるような巨大な物体をいい感じに撮ってくれる監督、みんなラヴクラフト作品の実写化に取り組んでほしい……

インターステラー

アマプラで。これノーランの映画で一番好きだな……超緻密な科学考証に基づいて繰り出されるあまりにも冷酷な宇宙の法則と、それに翻弄され引き裂かれる人類。しかしそれを超えていけるのは人間の愛である…という結論への飛翔が美しいんだ。

以上。


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