映画鑑賞記録202205

初見は●

映画館で観たやつ

● N号棟

超良かった…初報の段階では幽霊団地事件がモチーフってことで正統派なJホラーを想像してたけど、出てきたのはカッ飛んだフォークホラーだった。『ミッドサマー』の異母兄弟って感じ。当たり前に幽霊は実在していて、それを受け入れた人間のコミュニティで異端扱いされる主人公。怖さは無いけど厭な映画で良かった。

フェイクドキュメンタリーQの最終話を直前に観ていたので、関連して今っぽいホラーだな〜と思ったりした。何でも説明してもらえると思うなよ!という。考察ごっこしたい人はどうぞ、という感じだけど別に全部が全部説明がつくようには作られていない感じ。

そもそもの主人公パーティが最悪(タナトフォビアの女、その元カレ、元カレの今カノ)で、各々どういうつもりで今の関係性をやってるのかもよく分からないし、主人公がなぜ幽霊団地に執着するのかも特に説明されないし。団地の住民たちの側も全員なんか変というか絶妙に不快で、観てる間の寄る辺なさがしんどい。

最終的に主人公は自死を選んで幽霊になるわけだけど、それで何だかんだ救いがあるようなオチになるのはちょっと好みではなかった。『裏バイト』の葬儀屋スタッフ回みたいな「死後の世界は素晴らしいと皆思い込んでいるが、実は……」というのがやっぱり好きなので…団地で一緒に暮らしていた幽霊は実際は全く訳の分からない存在で、生者が勝手に故人が帰ってきたと思い込んでるだけ、みたいなオチだったら100%好きになってたと思うな。

ラストの大学職員と会話してるシーンの演出が今っぽくて良かった。会話が噛み合ってる風に見えて「あれ、生きてたの??」と思ったら、大学職員の方はイヤホンして別の人と通話してるだけで主人公(幽霊)の声は聞こえてなかったという。

● ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス

サム・ライミのことは好きだし、サム・ライミらしさ全開で良かったんだけど。全体的に「おもしれ〜けどさあ…」という気持ちも結構大きい。やっぱりスコット・デリクソン監督で超怖く仕上げてほしかったな…というのと、「勿論ドラマシリーズも全部チェックしてるよな!」みたいなMCU全体の方針がそろそろ鼻についてきたのと。おれはドクター・ストレンジを観に来たのであってスカーレットウィッチの話は別に興味ないのだが……

イルミナティのメンバーでオオッとなったけどあの扱いは良いのか…?プロフェッサーXとか初登場だよね…?あの辺全体的に雑すぎ&(意図的な)ダサさ全開でウケちゃった。モルドと殴り合ったあの部屋とか完全に狭いところで殴り合う画が撮りたいだけの配置で最高。お前そこ登れないのかよ…

マルチバースのマッドさは思ったほどじゃなくて、サム・ライミのマッドさの方が完全に勝ってた。折角ホラー映画監督起用してるんだからもっとコズミックな恐怖を演出してくれても良いのよ…という。今のところMCUの拡張のための便利ギミックって感じであんまり。

● シン・ウルトラマン

原典からの翻案・怪獣の設定やデザインアレンジは超良かったんだけど他あんまり良いところがない。なんか全体的に言い訳がましいというか妥協が見えるのが最悪。客に忖度を要求しないでほしい。

演出の方向性はシンゴジラと一緒なんだけど今回なんかスベってたね。人物描写がショボいからかな……シンゴジラでは巨災対メンバーは馴れ合いも人物の掘り下げも殆どないのに彼らの人となりや絆はしっかり伝わってくるのが本当に巧みだったのだけど、こっちは何か半端なギャグと旧弊なセクハラ描写がノイズになって全然ダメだったな。

ストーリー展開もなんか総集編って感じで、各キャラクターの台詞の端々で「描かれてないとこでこういうエピソードがあったんだろうな」「こいつはこういうやつなんだな」というのは分かるけど、別にそんなのは知ったことではないしな……万事そんな感じだから禍特対メンバーの好感度も最後まで低空飛行で…あれでラストに「ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか」って言われても全然ピンとこなくない?あと何より、長澤まさみの撮り方、人物造形がキモすぎて全然ノれなかったのが大きい。

ウルトラマンの佇まいは良かった。飛行とか回転(回転??)の挙動の異様さ。禍威獣たちがちょっと愛嬌ある感じに仕立てられてるのと対照的。ただずーっと見てるとCG流石にショボすぎんか?とか、もっとストレートに格好良い画を見せてくれても良かったんじゃないの?とか気になり始めるね。原典や当時の特撮のオマージュと言われても、結局ダサかったら意味なくない…?

配信などで観たやつ

ヘッド・ショット

Netflixで。イップマン観たら殺人シラットが観たくなったので。記憶を失くしたイコ・ウワイス(殺人者の眼をしている)が2時間ずーっと戦いっぱなしで凄い。敵キャラが中ボスっぽくキャラ立ちしてて楽しいし、殺人シラットバトルは凄惨極まりない感じに仕上がっていて惚れ惚れする。人間の関節ってそんな風に折れるんだ…とか。人間離れした格闘戦の最中に想像できる範疇の痛みの描写(ズタズタの拳で壁殴っちゃうとか)を織り交ぜてくるのやめてほしい。

シャドー・オブ・ナイト

Netflixで。これも殺人シラット映画。今回はイコくんが悪役に回るけど、イコくん以外のサブキャラも皆キャラ立ち凄まじくていい。金髪刈り上げククリ刀遣いと黒髪オカッパ流星錘遣いのコンビ、完全にアニメ。キャラ造形はじめ全体的にリアリティライン低めで皆頑丈だし、そのせいで格闘バトルも銃撃戦も血みどろになるので最高。

TENET

Netflixで。特別好きでもないけど大作映画が観てえ!ってときにノーランは丁度良い。劇場での人質救出、逆バンジーでの高層階エントリーあたりのシーンはCoDのキャンペーンシナリオで絶対パクられるでしょ…って謎の確信がある。そもそもこの映画の展開自体が全体的にゲームっぽいというのもあるが。

地下に潜む怪人

Netflixで。すげ〜面白いPOVホラー。人は死にまくるし激ヤバオカルト事象が起こりまくるが、そもそもの導入が「賢者の石を求めてパリの地下迷宮に潜入する」って感じなのでアドベンチャー感が拭いきれない。原題の"As above, So below"は分かるけど"地下に潜む怪人"って誰のこと言ってる…?

● 黒の怨

Netflixで。起伏が無さすぎんか???フレディ・クルーガーみたいなオリジンの悪霊がずーっと人間を襲い続けていたし警察署とか壊滅してた……「暗闇に入ると襲われる」の一点だけで90分保たすな。

● サンゲリア

BDで。実は初見。旧盤入手困難なのでホラマニありがとう…という気持ち。壮絶な人体破壊も支離滅裂な展開も、やたら詩情に満ちた終末の風景も全部馴染むな……これから繰り返し観ることになりそう。特典映像で(なぜか)ファン代表としてデルトロが出てきて「劇場で観たあと大興奮で家族や友達に筋書きを語って聞かせたが誰も信じてくれなかった」つってて、マジで良いエピソードだ…と思った。

● ファナティック ハリウッドの狂愛者

Netflixで。メソメソしたオタクの肉体がジョン・トラボルタだとクソ怖い。映画作品としていまいちイケてない感はあるけど、好きだったものに裏切られた(と一方的に思っている)映画ファンの悲哀、みたいな部分を真摯にやっていて遣る瀬なく哀しい話に仕上がっているのは結構好き。監督Limp Bizkitのボーカルの人なんだな…

NY心霊捜査官

Netflixで。夜/暗闇の色調が超格好良いのと、申し分ないホラー表現(怖い)なのにバイオレンスも摂れるという完全に嬉しい映画だ。こういうのもっと観てえ…となるが中々丁度いいのがないんだよね。『エンドレス・エクソシズム』なんかは割といい線いってるかも。

● 恐怖人形

Netflixで。日本人形ホラーかと思いきやスラッシャー。どんどんデカくなる人形、ウケちゃうだろ。終盤で超露骨な『悪魔のいけにえ』オマージュやってて笑顔になった。

ライトハウス

アマプラで。劇場で観たときは映像と音響に呑まれちゃった感あるけど、自宅で改めて観ると、ほんと何も起こってないしずーっと狂った男がマウント取り合ってるだけだな……となった。それがいいんだけど。『コールド・スキン』と合わせて灯台守映画として末長く楽しんでいきたい。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

アマプラで。面白いけどなげーーーんだよな……ストーリーもなんか「ダニエル・クレイグがボンド役降りるためにお膳立てしました!」感あってイマイチ乗り切れないし。フェリックス、ノーミ、パロマあたりのサブキャラが良すぎて勿体なく感じてしまう。次期ボンドで続投するか、スピンオフやってくれると嬉しいな。

● プロミシング・ヤング・ウーマン

アマプラで。怒りの熱量にあてられて居住まいを正してしまう作品というのがあると思う(『ブラック・クランズマン』とかそうだった)が、これもそういう作品だった。全体的にポップなトーンで描きつつ、そこに篭められた激烈な怒りは少しも冷めることがなくて凄い。クライマックスにああいう展開を持ってくるの、本気度がちげえ…って震えが走った。

● バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ

アマプラでレンタル。劇場行くつもりだったけど見送ってしまっていたので。こんな緩い映画が2022年に許されるのかよ…となった。ゼロ年代のゲーム実写化作品みてーな空気感。原作ステージの完璧な再現に対して謎の原作キャラの設定・性格改変でだいぶ混乱した。並行世界のバイオハザードか…?? ただまあ嫌いではないというか、午後ローとかの地上波でやってたら毎回なんだかんだ楽しんで観ちゃうタイプの映画だと思うな。

● イントゥ・ザ・ストーム

アマプラで。アメリカ人と竜巻の関係、我々と台風や地震の関係とは全然違うっぽい。"破壊"が分かりやすく形を持っているのがデカいんだろうな。ただ超ハイテンションでその中に突っ込んでいくのは全然わからん。

ドクター・ストレンジ

アマプラでレンタル。いや絶対1作目の方が面白いし続編もこの路線でやった方が良かっただろ!!!と思った。目元バキバキのマッツ・ミケルセンの姿も拝めるしな…

● シェラ・デ・コブレの幽霊

アマプラで。『女優霊』の着想元になった映画らしいね。古いだけあって「本気!?」みたいな演出とかあるんだけど確かに怖い。幼少期に地上波でこれの予告編と衝突してしまったら一生忘れられなくなるだろうな…という佇まい。

● 私はゴースト

アマプラで。これ良かったな……"場"に染み付いて永劫同じ時間を繰り返しているって幽霊の在り方の恐ろしさもたっぷり描いてるし、彼女の死の真相が明らかになっていくにつれて(不変のはずの)日常が段々と狂っていく……って展開も怖い。

最後に出てくるアレも、白塗りで目元だけ真っ黒の全裸男性って冗談みたいなヴィジュアルのくせに見せ方が上手くて。時が止まった、自分以外誰もいないはず屋敷の中で、不意に螺旋階段の上から青白い足が覗くーーって登場演出がキマってた。

● 導火線 フラッシュ・ポイント

アマプラで。別に武人とかではないので怒りに任せて人間を叩き壊すことが出来るドニー・イェン。功夫にMMAやプロレス技を織り交ぜたアクションが華麗かつバイオレントで最高。敵側も銃ぶっ放すのがメインかと思えば普通に"遣える"奴ばっかで良かった。ラストバトルの壮絶さ。

● ジェントルメン

アマプラでレンタル。完全にいつものガイ・リッチー…『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』とか『スナッチ』とかを観れば良いのでは、と思わなくもないが、ガイリッチーは一生この手の映画を作り続けるんだろうな…と思うと妙な安心がある。

ゾンゲリア

BDで。Dead & Buried. ちょくちょく見返してるが、好きな映画というよりは必要な映画だ。この映画の全編に満ちた哀しみの気配と激烈な人体破壊を観なければならない精神状態というものがある。

遊星からの物体X

BDで。何度観ても面白え。「南極映画が好き」「クリーチャー映画が好き」の両軸で最高得点。51年版(『遊星よりの物体X』)と原作小説(ジョン・W・キャンベル『影が行く』)にもそろそろ手を出すべきか。

ライフ

アマプラで。最近『法治の獣』読んだばっかだったのでタイムリーだった。ファーストコンタクト大失敗。よく分からん異星生物に名前つけて愛着持つのも、思いつきで適当に刺激してみるのも全部やっちゃダメなやつだろ。

あとジレンホールと真田広之以外の俳優あんまり意識してなかったけど周りも結構豪華だな。「この映画はライアン・レイノルズが最初に死ぬ程度の難易度です」っていうのがシンプルに示せていい。

ゲヘナ 死の生ける場所

アマプラで。起こってることは結構地味だがロケーションがマジで良いのと、やたら気合入った特殊メイク系ゴア表現(監督がそっちの畑の凄い人らしい)が沢山見られて楽しいホラー。ラストも悪辣。

悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ

Netflixで。設定のダメさはともかくレザーフェイスの大殺戮は満足度高いし格好良い画も多い。何となく人がたくさん死ぬ映画が観たいな〜って時にちょうど良いかも。主人公たちのバックボーンが展開に全然活かせてないのと、初代ヒロイン再登板させといてあの扱いっていうのがね……

女優霊

DVDで。高橋洋の言う「バックボーンを持たない幽霊」が一番怖い。ごっこ遊びの延長でいつの間にか"発生"してしまった幽霊。映り込み方も(普通に怖いのだけど)明らかに幽霊のそれではないし、クライマックスでも普通にノシノシ歩いてくるし、存在としての異質さがイヤ。

● ガンズ・アキンボ

Netflixで。アクションの撮り方が全然好みではなくてイマイチ。この手の人死に悪趣味コメディみたいなやつ、似たようなことやっててもハマるやつとダメなやつがあるわね。サマラ・ウィーヴィングのキャラデザは良かった。

● モンタナの目撃者

Netflixで。テイラー・シェリダン、あんまり意識してなかったけどSicarioの脚本やってたりするのね。今作も徹底して硬派な話運びの良質なスリラーだった。現代西部劇映画として炎/氷で『ウィンド・リバー』と対になってるのもよい。

サスペリア

BDで。オリジナルの方。何回観ても劇伴のテンションの高さに笑ってしまう(格好良いけど)。支離滅裂なストーリーにキマった色彩、特に脈絡なく惨殺される美少女。まじで奇跡的なバランスで成立してる映画だ……

サスペリア(2018)

アマプラで。これめっっっちゃ好きなんだよな……原典に狂わされたグァダニーノ少年が"魔女の棲む邪悪なダンス学校"のディティールを突き詰めていった結果、原典からかけ離れた、切実な痛みと哀しみの映画が出来上がってしまうという……

時代背景やスージーの生い立ちも含め、徹頭徹尾抑圧と解放の話をしているところが好きで。魔女には"何かを奪う"ことしか出来ないから、結末もああいう形にしかなりようがない……というのが美しくて。

● トップガン

アマプラで。そういえばちゃんと観たことないかも(地上波で流し見したくらい)、と思って。完全に"陽"に振り切れたアメリカ映画って感じで良いな……めちゃめちゃ真っ当に青春モノだし。映画に引き込む力が異常に強いというか、これを観て「コールサインで呼び合うのかっけえ……」「海軍の戦闘機乗りアビエイターってかっけえ……」ってならないの無理でしょ。

● 整形水

アマプラで。芸能界のアレコレやルッキズムなんかを強烈に皮肉った韓国のホラーアニメ。いやーーーこれはすげえ。『世にも奇妙な物語』とか懐かしの『週刊ストーリーランド』とかに親しんでた人間なら「整形水で美しくなったことが最後恋人にバレるやつかな?」とか「補修用の"肉"を集めるために連続殺人鬼になるのかな?」とか予想しちゃうんだけど、その外側に転がり続ける展開がとにかく楽しい。完全に常識外れのクライマックスも凄まじい……

以上。

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