映画鑑賞記録202111
11月月報。
アンテベラム
変な映画!!
生まれ変わりとかなんかスピリチュアルな感じで現代と過去二人の女性の精神が接続され…みたいな話かなあと何となく想像してたら全然違った。というか、いくら何でもソレはないだろう、と早々に予想から排除していた展開を真正面からやられて戸惑った。
エデンとヴェロニカは同一人物で、南北戦争時代かと思ったら狂った差別主義者どもが当時の生活を再現していただけ、という。しかもその種明かしがやけにあっさりしてる(荘園のボスが夜中にスマートフォンで通話するシーンがスッ…と出てくる)のでめちゃめちゃ混乱するし、そのままエデン=ヴェロニカの脱出パートに突入してハイテンションな大立ち回りが続くので状況を飲み込むヒマがない。ええ…?と思ってる視聴者をほったらかして物語がガンガン突き進んでいくこの感じ、『バクラウ』とかあの辺の南米のスリラーを思い出す味わい。
よく考えると直球に“The Past Is Never Dead. It's Not Even Past.”を体現しているし、あの連中がやってることは作り物でごっこ遊びだ…みたいな強烈な皮肉にも感じられるので見事な展開なんだけど。それにしても、さあ…
あらためて公式のストーリー紹介をみると、エデンのパートが「南北戦争時代」であるとは一言も言われてないんだよな…
何だかんだ言って楽しめたし、不穏な空気と異常な状況の表現は結構好き。オカルト的事象なのかどうかギリギリまで判断できない状況で進行するので楽しいし。粗末な奴隷小屋にスマートフォンのバイブレーション音が響き、プランテーションの上を飛行機が横切る…荘園支配者の娘がホテルに現れる場面は恥ずかしげもなく『シャイニング』のオマージュなのに、まあやっぱお出しされるとテンション上がるよね…
エターナルズ
クロエ・ジャオ監督まじで何でも撮れるのか…?と思った。アクションすげー見やすくて良かった。引きの画でしっかり見せるの大事ね。
エターナルズの面々はそれぞれ演者本人に合わせてキャラクターを設計してるってどっかで読んだけど、それにしてもマ・ドンソクを完璧に使いこなしててすげえ。エターナルズと再開するシーンのギルガメッシュの一連の振る舞い(キュートなエプロン姿で登場して手料理を振る舞う→エイジャックの訃報を聞いて鉄鍋をバキバキに握り潰しながら泣く)に彼の良さが全部表現されていた…
ギルガメッシュの「バットマンのアルフレッドみたいな?」ってツッコミとか、ファストスの息子がイカリスを見てスーパーマンを連想するくだりとか、あの世界ってDCコミックスあるんだ!??って驚き。本物のスーパーヒーローが存在する世界でフィクションのヒーローが人気あるの凄くない?
あとデインとセルシの「君って魔術師でしょ。ストレンジみたいな」ってやりとりとか、キンゴの付き人の諸々へのリアクションとか、超人や怪物が日常レベルで受け入れられてるっぽい描写がエンドゲーム以後だ〜って感じで楽しかった。身近な人間が実はスーパーパワーを持ってたとしても今更驚くようなことじゃないもんな。
クロエ・ジャオ、セレスティアルズや宇宙船みたいな理外の存在・途方もなくデカいものをスケール感を損なうことなく人間にも理解できるように描くのが上手い。コズミックホラーもの、特にラヴクラフトのshadow out of the timeを映画化してくれ……
カオス・ウォーキング
ボーイミーツガールでジュブナイルなスペースウェスタン。トム・ホランドくんはかわいいねえ。邦題ケイオス・ウォーキングの方が語感よくない…?
三部作のYA小説の1本目ってことで諸々あっさりしてるなあという印象はどうしても。他の入植地や原生生物も登場するけど顔見せ程度なので物足りない。続編も順調に映画化されたら掘り下げられるのかな。ハリーポッター前後くらいの時代に現れては消えていったファンタジーノベルの映画化作品たちを思い出してしまうが…
思考が外に漏れる"ノイズ"を利用した心理戦やアクション、所々オッと思うものはあったものの、これもやっぱり物足りない感。序盤の蛇や円環(柵)みたいにノイズを"イメージの具現化"と捉えて攻撃に利用するやつもっと見たかった。追跡者たちのノイズが砂埃のように立ち昇ってる演出は面白かったけど。
マッツ・ミケルセンは悪役やるときのいつもの感じでなあ。トムホが心酔している共同体のリーダー、って位置付けから割と早い段階で化けの皮が剥がされるし。キャラデザは超良かったけど…
男しかいない星かと思いきやトムホが住んでた入植地がヤバいだけ、っていうのが結構早い段階であっさり明かされるので緊張感薄れるというか。ファーブランチを脱した後は展開が一本調子で何とも。
ホランドくんの可愛さという意味では見たいものが見れたのでよし。生まれて初めて女性に接してオロオロするホランドくん。原作だとノイズを通じて飼い犬と対話してるって設定があるらしく、何でそれを削った!!!と思った。
マリグナント 狂暴な悪夢
少なくともホラージャンルにおいては文句なしで今年のベスト。ジェームズ・ワンはすげえよ…
大ネタに関してはオープニングの時点で大体察しがつくようになってるんだけど、何かそれどころではないくらいに全ての要素が過剰。ジャンルを大横断しつつ「(ジェームズワンの過去作の)XXXで見たやつだ!!!」が何度も繰り返されるのが本当に破壊的な楽しさで…
ジェームズ・ワンのホラー映画、建物や風景の撮り方が全部格好良くて好きなんだよな。主人公宅の建物の天井ブチ抜いての俯瞰ショットだったり、異常にデカくて異常なロケーションに聳え立ってるあの病院だったり。シアトルの地下街とか初耳(実在するっぽい)なんだけど、そんな格好良いものがあるならもっと早く教えてよ。
誰も思いつかなかった後ろ向きアクション。パルクールも出来るし囚人や警官も凄い勢いで殺せる。警察署内の大殺戮とか映像的にはゴアゴアしてるのに、ヒーロー映画や人体破壊が贅沢なアクション映画観てるときみたいな「かっけえ…!」の気持ちになったな…
ガブリエルくん。腕がひょろっと生えてるの虫みたいでかわいいね。切り離せなかった部分は脳みその奥深くに埋めちゃった、っていうのが全然納得いかなかったけど完全に力技で押し切られた感。映像のテンションが高すぎて細かい道理に気を回す隙が与えられない…
オープニング格好良すぎる。最高のタイミングで表示される"A JAMES WAN FILM"の文字列…BD買ったら無限に見ちゃうな。
ダーク・アンド・ウィケッド
マリグナントが今年一番のホラー、とか言ってたらまた凄いのが出てきた。あっちが陽のホラーだとしたらこっちは陰のホラー。雑に言うとヘレディタリーを10倍陰湿にした感じというか…ホラー映画としての純度が高すぎる。
開始5分で帰りたくなり、そこから90分ほど人間の精神をすり潰す恐怖演出が間断なく続く。ジャンプスケアやゴア描写もそれなりにあるんだけど、何も起こってない場面がそれ以上に怖い。息苦しい。恐怖以外の余計なものが全部削られていて、主役二人のバックボーンは殆ど何も語られないし、何なら両親の名前すら出てこない。
料理してる最中に包丁で自分の指を切り落とすショック演出。カラー・アウト・オブ・スペースでも思ったけどお膳立てが丁寧すぎて「やめて…早く終わって…」となるね。こっちは様子のおかしい人がキッチンに立つくだりが2,3回繰り返されるので尚更。お母さんが自殺しちゃうっていうのはあらかじめ公開されてる情報なので「ババア!早く死んでくれ!!」の気持ち…
たぶん初めから実家に近寄らないか帰郷即自殺しか助かる道がないと思うんだけど、余命幾許もない父親を「ひとり孤独に死なせたくない」から逃げ出すわけにはいかない…という展開がマジで最悪。恐ろしいことが起こり続ける中必要以上に”生かされ続ける”父の姿。「ジジイ!頼むから早く死んでくれ!!」の気持ち…
「誰にも看取られず孤独に死ぬことがこの世で一番の不幸だ」という語りが効いてくるラストシーンも最悪。恐ろしい目に遭い、周囲の人間が悉く死に、それでも父の介護を続けていた娘の末路。全員死んでしまったのだから、最後の一人は誰にも看取られることなく真の孤独の中で死んでいくしかない…というのは道理ではあるけども。「逝かないで」と縋り付く行為の意味合いが全然違ってくるので…
終盤の弟くん自殺のくだり、ここ何年かで観たホラー映画の死に様の中で最もイヤ。人間の認知をガッツリ弄ってくる系の怪異とはたまに出会う(『オキュラス 怨霊鏡』とか…)けど、これは流石に禁じ手じゃないですか?あくまで本人の意思で死を選ばせるのと、もう取り返しがつかなくなったタイミングでネタバラシするのが超テクニカル。
ほか
ウィリーズ・ワンダーランド
「ニコラス・ケイジ in Five Nights at Freddy's」で説明がついてしまう小規模ホラーなんだけど、滅法面白い…殺人アニマトロニクスをニコラス・ケイジが無言で(作中、本当に一言も喋らない)鏖殺する様子が思う存分楽しめる良作。元気が出るホラー。
吸血怪獣チュパカブラ
きったね〜ブラジル産モンスターパニック。モンスターパニック…?人間同士の抗争で血肉が飛び散りまくる展開に終始してて肝心のチュパカブラはそんなに…なんだけど、何だかんだ唯一無二の熱量があり元気が出るホラー。
ニンジャ・アサシン/ニンジャ・アベンジャーズ
漆黒のスネークアイズに足りないものが全部あった。
水霊
水を飲んだら死ぬ。難易度高すぎない…?女子高生たちが物凄い死に方をする描写だったり結末の救いのなさだったり、古き良きJホラーって感じで良かった。
セイント・モード/狂信
末期病患者の終末期ケアに通う敬虔なカトリック教徒が徐々に狂気に蝕まれていく…みたいな宗教ホラー。狂信者からすると何もかもが神の啓示に見えてしまう…という主観を散々体験させた挙句、ラスト1秒のあの描写で一気に突き放すの最高だな。
地獄の門
初見。地獄の門が開いちゃったから何とかしなければ!って筋書きは辛うじて理解できるけど画の良さと人体破壊の破茶滅茶さでそんなことはどうでもよくなる。ラストシーンの意味が全然分からなくて焦ったけど曰く「なんか物足りなかったから女優に叫ばせた」とのことだったので余計なことを考えるのは止めた。
スターフィッシュ
未体験ゾーン2022で公開決まってるんだけど輸入盤買っちゃった。親友が死に、世界が終わり、思い出の場所に隠された「世界を救う」ミックステープを探す冒険にーーと思っていたら中々そういう話にはならず。美しい終末の光景と優しい劇伴の中、主人公が延々自分の内面に沈んでいく展開。消せない哀しみ/埋めようのない喪失と真摯に向き合う物語。傑作。BDにサントラCD付いてる豪華仕様なんだけど、おれの家にはCDを再生できる機器がない…
ヘルハザード/禁断の黙示録
チャールズ・ウォードの奇怪な事件。クトゥルフ映画の中ではすげー真っ当にラヴクラフトしてる方だと思う。持ち込まれた怪事件の調査に出向き、悍ましき手記を読み解き、怪物から辛うじて逃れ、黒幕と対峙する…って流れもクトゥルフTRPGのお手本って感じ。
観たもの一覧
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