映画鑑賞記録202301

初見は●

劇場鑑賞

● イニシェリン島の精霊

すげーーーー良かった……『スリー・ビルボード』も大傑作だと思ってるけれど、今作はそれ以上に喰らってしまった……

コリン・ファレルが親友のブレンダン・グリーソンからある日突然絶交を言い渡されて右往左往する、というだけの話なのだけど。とんでもなく美しく、切実な物語に仕上がっていて。『スリー・ビルボード』でも描かれていたような人間の儘ならなさを描くストーリーに、タイトルにある精霊バンシーのような超自然のフレーバーが相まって、茫洋とした風景と全編を覆う遣る瀬無い空気に泣き出してしまいそうな…

コルムの言う「お前の無駄話で人生を浪費したくない」「このまま死んでいくのは嫌だ。思考や作曲に人生の時間を使いたい」みたいな感覚、誰しもが身に覚えのある部分があるだろうし、舞台設定ーー内戦期のアイルランド、その片隅の小さな島ーーも重なって物凄い痛切さが感じられる。

パードリックも愚かだが悪い人間ではないし、コルムも決して悪意から彼を拒絶した訳ではないんだろうけれど、知性の差による断絶が苦しい。パードリックからすれば「親友が突然(訳のわからない理由で)自分を拒絶し始めた」、コルムからすれば「己の切実な苦しみをどれだけ伝えても(自分の指を切断してさえも)理解してもらえない」という。残酷だがリアルな距離感。

● ピンク・クラウド

まあこんなもんか…という感じ。現実のコロナ禍以前に構想・撮影された…とは言っても今公開する以上はどうしても現実のあれこれを念頭に置いて観てしまうので。

中盤ずーーーっとセックスの話しかしてなくて飽きちゃう。社会インフラがどう維持されてるのか?とか他の国はどうなってる?とか気になるところは特に描かれないし。ロックダウン下での子育てとか離婚とか、掘り下げれば面白くなりそうな部分を素通りして男女の感情の話ばっかりなのでちょっと好みから外れるなと。

ヤーゴがロックダウン生活に適応し過ぎててちょっと怖いんだけど、元の生活が恋しくて壊れていくジョヴァナの方にフォーカスされてるからなんかバランス悪いなと思った。旦那も息子もすっかり今の生活に馴染んでて、奥さんだけが感情的に取り乱してる……みたいな撮り方はちょっと危うい気もする。

このシチュエーションで色々面白いこと出来そうだな〜という感覚はある。ヤーゴとジョヴァナの様子を見てて「成り行きでロックダウン生活を共にすることになった男女、だが男の異常性が徐々に明らかになっていき……」みたいな展開もありかな、とか。

緑の雲が出たところでバツンと切ってエンディング突入…とかでも良かったと思うんだよな。窓を開けて外に出ていってしまうってオチは早々に読めちゃうわけで特に意外性もないし。

配信ほか

● 呪術召喚/カンディシャ

アマプラでレンタル。これタイトルから勝手に東南アジアらへんの土着ホラーをイメージしてたがフレンチホラーなんだな。それもジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ監督。毎度毎度高品質なホラー映画を90分弱で提供してくれるの本当にありがたいぜ……

話の筋としては超王道で、ノリで降霊術やったらヤバいモノが出てきて周りの人間が死にまくるーーという、全世界のティーンエイジャーが百万回くらい繰り返してきた過ち(今作に関しては「元カレに暴行された復讐のため」って結構切実な理由がある)なんだけど。

山羊の足を持つ黒衣の女性、ってカンディシャのヴィジュアルがとにかくよくて。人間を殺せば殺すほどどんどんデカく凶悪になっていって最終的には天井に頭が擦れるほど巨大な姿になるっていうのが超イカしてる。こいつが呪術で召喚された割に思いのほかパワータイプでブルータルな殺人(蹄で頭部を踏み砕いたり人体を左右に引き裂いたり)をやるのがまた楽しいんだ。

● LAMB/ラム

アマプラで。A24作品(というよりプロモーションの方向性…?)をわりと敬遠していて、これも『ミッドサマー』と絡めるような宣伝がされていてウゲーと思って観に行かなかった。これどう考えてもホラーじゃないでしょ、みたいな雰囲気もあり。

実際ホラーじゃなかったね。想像してたよりずっとファミリードラマ要素強めな感じだった。ただまあ嫌いではない。極端に台詞が少なくて余白だらけなのも、アイスランドの途方もない風景・静謐な空気と響き合っていていい感じだ。

母羊を殺して奪った子供を奪い返される(夫イングヴァルも殺されてしまう)ーーというのは因果応報ではあるのだけど、そこまでの描写の積み重ねで夫婦とアダの間には家族としての情が確かに存在していた、というのが分かるから複雑な味わいがあっていい。アダを取り返しに羊人間(大)が現れるって展開にはだいぶ面食らってしまったが。

ハリー・ポッターと賢者の石

ネトフリで。小学生くらいの頃に死ぬほど観たから全てを覚えてるんだけど、全てを覚えててもまあ面白い。原作読んだのも遠い昔なのに「映画だと原作のあのシーン省略されてるんだよな…」とか逐一思い出してた。

今観るとハリーたちのクソガキっぷりが凄いのと、ホグワーツあまりにも危険が多すぎる(普通に授業やってるだけでも年間数十件の死亡事故が起きてると思う)のとで笑っちゃった。

ハリー・ポッターと秘密の部屋

ネトフリで。な、なげ〜〜〜〜!!! これ「面白いけど賢者の石とやってること一緒」なのか「賢者の石とやってること一緒なのに面白い」なのか判断に迷うな。嘆きのマートルがどちらかというと憤怒のマートルだな…というのと、バジリスクの見た目が全然蛇じゃない(し、大した活躍もないまま速攻でやられちゃう)のとで結構ウケた。

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

ネトフリで。監督ヴィンチェンゾ・ナタリって凄いチョイスだな。やっぱりここから急にダークになってるのが面白い。色調が全然違う……このシリーズ、魔法学園モノと捉えると後半どんどん陰気になっていって悲しいけどアーバンファンタジーとして見るとこのダークさが好ましく思えてくる。アンビバレントだ。

守護霊呪文って出てくる動物選べんのかな。ハリーは牡鹿でハーマイオニーがカワウソとか。おれはカマキリがいい……

ハリー・ポッターと炎のゴブレット

ネトフリで。歪だな〜〜と思った。日常パートが大胆に削られてるわりに三校対抗試合の部分もイマイチ盛り上がらないし……尻尾爆発スクリュートもスフィンクスも出てこない迷路、観戦しててクソつまんないだろ。

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

ネトフリで。どんどん暗く、大人の思惑で滅茶苦茶になっていくホグワーツ……初見当時はあんまり気にしてなかったが今作のダンブルドアのハリーへの対応がだいぶクソだ。お前がちゃんと事情を説明しておけば……みたいな場面が結構ある。

このシリーズの映画としては一番印象に残ってないかもしれない。出番がっつり削られてるとはいえグロウプが登場することを完全に忘れていた……

あと炎のゴブレット以降は映画作品としての気持ち良くなさがどうしてもあるね。ゴブレットはセドリック死んでヴォルデモート復活して終わり、不死鳥の騎士団はハリーが嵌められてシリウス殺されて終わり、謎のプリンスはダンブルドア殺されてスネイプが逃走して終わり……

● ほの蒼き瞳

ネトフリで。丁度いいゴシック・ミステリだ。陸軍士官学校で起こった猟奇殺人事件、その真相を追うべく招聘された厭世的な元刑事、捜査に協力するのは奇人学生のエドガー・アラン・ポー……という設定だけでだいぶ満足感が得られる。

絵的にはだいぶ地味。個人的に「そこまで面白くないけど雰囲気がいいから何回も観られる映画」みたいな枠があって、この作品もその枠かな…と思っていたらラストで喰らわせられた。クリスチャンベールってすごい俳優なのでは……?

NOPE / ノープ

アマプラでレンタル。映画館でも観たけどやっぱり面白いわね。『ゲット・アウト』『アス』みたいに分かりやすい社会派テーマがあんまり表に出てこないし、終盤の「カマすぜ!」みたいな盛り上がり方でエンタメ極振りなのかと思ってしまいがちだけど、言外にぎっしり詰め込んできてるな〜というのを今回は感じたな。

ハリー・ポッターと謎のプリンス

ネトフリで。ほんとスッキリしねえな…やってる場合じゃないというのは分かるが学校の楽しいイベントみたいなのもあんまりないし、終わり方も全然気持ち良くないし……今回のシリーズ再視聴でダンブルドアへの好感度がだいぶ低くなってしまった(エコ贔屓ジジイがよ…)ので、終盤のあれこれにそこまで心動かされない悲しさがあった。

ハリー・ポッターと死の秘宝 part1

ネトフリで。凄い勢いで畳まれていくな。前作ラストで「ホグワーツには戻らない」って言ってたしそこは別にいいんだけど、現代(非魔法族)社会に紛れての冒険がたくさん見られるかと思ったら後半ほとんど森の中だからやや物足りないという気持ちもある。

"死の秘宝"の取ってつけた感は原作由来(たぶん)だけど、透明マントって絶対そんな大層なもんじゃないだろ!という釈然としなさはある。

屋敷しもべ妖精の権利拡大!みたいなくだり(不死鳥の騎士団だったっけ…)が映画版だと丸ごとカットされてるからドビーの自由アピールが浮いてるな…とどうでもいいことを思った。

ハリー・ポッターと死の秘宝 part2

ネトフリで。やっぱ学校戻ってきたほうが面白いし、真実が明らかになるにつれて「ダンブルドア最悪だな!」の気持ちが。

地味だったpart1と比べて派手な魔法バトルが沢山見られるのが良いわね。ホグワーツ防衛戦とかは先生方の戦闘シーンもっと沢山盛ってくれてもよかったけど。毎回なげーなと思ってたけど今作についてはもう30分長くても良かったかな。「こいつ今まで何してたの…?」みたいになっちゃう場面が幾らか気になったのでその辺の補完とかが欲しいぜ。

あと原作であった「選ばれし男の子はネビルなのかも…?」みたいな要素が映画だと全然描かれてないよね?? 終盤のネビルの活躍の取ってつけた感でちゃうな…と思った。

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

ネトフリで。おれはファンタビ否定派(ダンブルドアの因縁の話がやりたいなら中途半端に魔法生物を出すな)だが、1作目はちょうど良い塩梅だったと思うな。魔法生物がちゃんとストーリーに関わってるのが良いし、キャラクターは何だかんだ魅力的なんだ。ニュートのヤバさとジェイコブの善性が遺憾なく発揮されている……

● 魔鬼雨

BDで。そういう系なの!?ってなった。もっと薄暗くて閉塞感のあるやつをイメージしてたら、悪魔崇拝者とのテンション高めのバトルが繰り広げられてたから……ただまあ、全体的にビジュアルが超イカしてる(終盤の大量の人間がグズグズに溶けていくシーンがとんでもなく長くて素敵)のと、「昔のホラー映画だな〜」って感じの絶妙なユルさが結構好ましい。と思ってたら超絶後味の悪いラストシーンを持ってくるのも。

● ヘルドッグス 

ネトフリで。「韓国のバイオレンス映画っぽいやつ日本でもやるんだ…」というのが最初に出てきた感想。そりゃあの辺と比べると見劣りするけど、こういう方向性の邦画としては明らかに出色の出来だと思うな。

岡田准一の動きが完全にヤバい(ジークンドーの使い手として"完成"されつつある…)し、世界観がかなりやり過ぎてる感じの異常ヤクザファンタジーでよい。あと台詞回しのリアルっぽさが珍しいなと思った。キメのシーンはちょっとワザとらしかったりするんだけど、日常の雑談シーンの言葉選びとか、戦闘シーンの間の取り方とか。

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生

ネトフリで。これはマジで駄作だと思っている。やってるのはダンブルドアの因縁の話でファンタスティックビーストは全然関係ないし(ニュートくんも成り行きで巻き込まれてるだけ)、終盤で諸々の真相が明かされるのは良いが全部口頭で説明される(し、それを口頭で否定しだして無駄に二転三転する)のが本当にダルい。そもそもクリーデンスの出自とかみんな別に興味なくない…?

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

ネトフリで。相変わらずファンタスティックビーストはそんなに関係ないし何でも台詞で説明しちゃう問題もそのままだがマッツ・ミケルセンを起用したのは大正解だ。

5部作構想は一旦白紙になった?っぽいがジェイコブも幸せになれたしクリーデンスも家に帰れたしで綺麗に纏まってるから別に良いんじゃないかな。これ以上このキャラクター達について描くべきものが特にない感……ダンブルドアはもう勝手にやってくれ。

以上。





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