言わない優しさ

これほど無言の優しさを感じたことはなかった。
何のことかというと、妊娠がわかったのだ。

それまで、孫が欲しいだったり、子供を早く作りたいだったり、
そんな言葉をかけられたことがなかった。
私としてもタイミングがきたらかな、といったような
仕事と心の整理がついたら自然とそんな気持ちにも
なるのだろう、とあまり触れてこなかった。
これは、結婚のときもそうで、まだ?という
催促をされたことは一度もなかった。

今回、両親に報告をすると
「これからの楽しみができた~!!」と嬉しそうな姿。
そして、父がそんなにも待ち遠しいと思っていたとは
思いもよらず、新たな一面を知ることにもなった。
こんなに待ち遠しい気持ちでいたことは言えるわけがなかった
という気持ちも、母との会話で知った。

また、主人も泣いて喜んでいた。
子供が大好きで、早く子供が欲しいのは1年前に知った。
だけれど、現状を踏まえて2人で話し合い、1年後に子供を
授かれたらいいね、その方向性でいこう!とまとまっていた。

だから、こんなにも早く
私たちのところに来てくれたことで
二人で感極まって泣いたのだった。

主人もおそらく、そろそろ約束から1年経つことに
気付いていただろう。
センシティブなことだけに、私の気持ちや体の状況を考えて
きっと言い出しにくいに違いない。
そう思っていたから、私から話を切り出した。

「1年前に話していたけど、今の気持ちはどんな感じ?」

「変わってないよ。子供欲しいな。」

だった。

長らくタイミングを見計らい、ようやくこのときが来た。
1年前よりももっといい関係性で、もっとお互いを知れて
ベストなタイミングになったと思う。

主人も両親もこれほど楽しみにしてくれていたなんて、
予想をはるかに上回るものだった。
それだけに、何も言われなかったことへの愛情と優しさに
一人で泣いた。

言葉が人を作り上げると思っているけれど、
こんなに優しい沈黙があるなんて、初めての経験だった。

この優しさに敏感な自分でよかったと思う。
そして、人のために生きたいと心から感じる出来事だった。

体調と相談しながら、存分に頼りながら
今この瞬間を大切に過ごしていきたい。