【データで見る】監督交代が結果にもたらす変化とデータとの付き合い方について【2018年J1】
こんにちは
J1は全日程を終え、最終順位が確定しましたね。今年も最後まで波乱の展開でした。
監督交代にまでドラマ、J1リーグ
さて、サッカーは監督が重要です。組織の指揮系統なのでそこが重要なのは当たり前といえば当たり前なのですが、監督が指揮系統の役割を果たさないことも往々にしてあり。。。
チームが成績を出せないときに監督を「代える/代えない」、代えるなら「誰に」ということはとても重要で、Jリーグの歴史からだけでもわかります。
ということで今回は、「2018年J1における監督交代による変化」を見ていきます。
言いたいこと
- 監督交代によるチームの変化をデータを使って見れる
- どうやってデータを揃えたか、コードをPythonで見れる
- データとの付き合い方
ちなみに2018年J1で監督交代を行ったチームは以下5チームです。(抜けがあったら教えてください)
チーム 日付 就任 解任の順で並んでいます。(下参考元)
- 柏 2018.11.10 岩瀬健(代行) 加藤望
- 鳥栖 2018.10.18 金明輝 マッシモ・フィッカデンティ
- 神戸 2018.9.17 フアン・マヌエル・リージョ 吉田孝行
- ガ大阪 2018.7.23 宮本恒靖 レヴィー・クルピ
- 柏 2018.5.13 加藤望 下平隆宏
- 浦和 2018.4.22 オズワルド・オリヴェイラ 大槻毅(代行)
- 浦和 2018.4.2 大槻毅(代行) 堀孝史
浦和、柏、G大阪、神戸、鳥栖の5チームの戦績を指揮官別に比べていきます。
データ元はフットボールラボです。
Pythonで各チームの毎節の結果をスクレイピングしました。
めっちゃ雑ですがコードを下に置いておきます。
順位表
J1全34節を終えての順位表は以下のとおりです。
また、今回は独断と偏見により順位を以下のように分けています(表の右端class_列)
class_0: 1~4位
class_1: 5~11位
class_2: 12~18位
※グラフはseabornのpointplotを使っていますが、全体を通じてエラーバーを無視した解説をしています。ご了承ください。
浦和レッズ
浦和は4月2日に堀孝史監督から大槻毅代行監督へ、4月22日にオズワルド・オリヴェイラ監督へ監督交代をしています。
観客動員数x対戦相手
監督ごとの成績を見る前に、まずは観客動員数を見てみます。
(点:平均値、緑:ホーム、青:アウェイ)
平均アウェイ動員数(青)がどの相手でも(class_が0でも2でも)ほぼ変わらないのは、強力な「アウェイ遠征力」がある浦和ならでは。ホームの右肩がガクッと落ちているのは名古屋グランプリ戦が水曜日に行われたことも影響してそうです。(21250人、7月18日)
勝点x対戦相手
ホームでは安定して勝ち点を取れていますが、アウェイでは面白いくらいはっきりと相手の最終順位が低いとき、平均勝ち点も低いことがわかります。上位4チームからは平均2.25ポイント稼げているのに対し、下位7チームからは0.5程度。下位からの取りこぼしが多いと言われてもまあ確かにと思ってしまうところはあります。(サンプルとなったデータがそれぞれ少ないのでそこは考える必要がありますが)
勝ち点x監督
堀監督、大槻監督はリーグ戦のうちそれぞれ5試合、4試合でしか指揮をとっていないのであまりフェアな比較とは言えませんが、平均勝ち点を比べるとこんな感じです。大槻監督が勢いを付け、オリヴェイラ監督が安定をもたらしたシーズンだと言えそうです。
G大阪
ガンバ大阪は前半戦は浦和と同様苦しんでいましたが、ツネ様マジックにより終盤に9連勝をするなど息を吹き返し9位フィニッシュ。ちょうど前半戦を終えたところで監督交代しているので比較がしやすいです。
勝点x対戦相手
これだと中位のチームから勝ち点をとっていることはわかりますがそれ以上のことはわかりません。
勝点x対戦相手x監督
これをみるとツネ様の圧倒的な上位への強さがわかります。クルピ監督の元では上位4チームから1ポイントも稼げなかったのに対し、ツネ様は平均2.0ポイント稼いでいます(2勝2分)。
ちなみに、平均動員数も増えてます。
ヴィッセル神戸
観客動員数x監督
はい、真ん中のヤマは外れ値です。林監督、リージョ監督が指揮をとった試合はそれぞれ2試合と6試合です。
このチームに関しては、監督交代もさることながら、イニエスタ加入前後の比較も面白そうです。ということ神戸に限り、イニエスタ加入前の16試合(Iniesta=False)と加入後の18試合(Iniesta=True)で分けて考えます。
対戦相手x勝点xイニエスタ
イニエスタ加入は勝ち点においてプラスの影響を与えていないように見えます。選手1人でチームの結果を変えるのはやはり難しいことがわかります。
(注:イニエスタはIniesta=Trueの全試合に出場しているわけではない。)
観客動員数xイニエスタ
イニエスタの効果が最も数字にでるのはやっぱりこれですね。
(イニエスタ加入後の試合に埼スタや味スタなど収容人数が多いスタジアムでの開催があったことは考える必要があります。)
サガン鳥栖
鳥栖は第30節からの5試合を金 明輝監督の元で戦い、3勝2分という成績で見事残留を果たしました。
勝点x監督
試合数に差があり、この比較もフェアではありませんが、残留をするという目的はうまく達成できたように思えます。(HAの色がひっくり返ってしまったので注意してください)
観客動員数x監督
また、観客動員数も監督交代後に増えていますが、これはシーズン終盤ということとトーレス加入の影響を全試合に渡って受けることができたためと考えられます。
観客動員数xトーレス
はい、ホームアウェイともに上がってます。
勝ち点x対戦相手xトーレス
これをみるとトーレス加入後は中位より上のチームから勝ち点を拾えるようになったようです。
柏レイソル
柏は下平監督を第14節で解任。加藤望監督が指揮を執るも結果が出ず低迷、残り2節は岩瀬健監督が指揮を取りました。
下平監督を解任するという判断、加藤監督を解任するタイミング、この2つがキモだったように思われます。
対戦相手x勝点
上位、中位、下位の順番に勝ち点を穫れていますが、最も勝ち点を取れている下位相手でさえ平均1.5ポイントに到達していません。
勝点x監督
加藤監督に交代後、ホームでの平均獲得勝ち点が1.3から0.5に激減しました。アウェイでの獲得勝ち点はほぼ変わっていません。
数字だけを見ると、フロントが監督を代えなければという気持ちになるのもわかります。下平監督のときの平均獲得勝ち点は1.2程度で、それを34(試合)でかけると約41、だいたい降格の当落線上となり、なにか変化を求めるのもわかります。
しかし、変化が上向きに起きるとは限らず、今回のように逆効果になってしまう例もあります。変化(監督解任)を起こさずに、内部からの変化を待つという手も柏にはありました。
データとの付き合い方
勝ち点、得失点などの結果を示すデータは、状況をまとめるには便利です。一方、これからどのような行動を起こすべきかという予測や意思決定に役立てるのは難しく、結果のデータのみをつかって意思決定を起こすことは危険です。
さすがに上で僕がしたような単純計算だけで意思決定はされていないと思いますが、「下平監督がどんなサッカーをしようとしているか」という結果のデータからはわからないことをもっと考えるべきだったと思います。
「データを無視して、識者の意見を聞くべき」と言っているのではなく、結果以外のデータ(トラッキングデータ、ゴール期待値、パス期待値など)をもっと多くの人が扱えるような環境を整えるべきです。
サッカー界をデータで盛り上げることを考えるのならば、データのオープン化が必要だと考えます。より多くの人が、上のようなデータを扱えることができればより多くの知見が生まれると思います。