国宝の陶器 曜変天目茶碗

G3です。普段は在宅なのですが、PCやモニターを良い感じに配置してお布団にこもりながら生活できるようにしてます。お布団最高。

今回は前回の記事、陶器についてのお便りがラジオ番組で採用されたというお話の裏話といいますか、ボツ案を折角なので供養したいと思います。
本当はこっち語りたかったんですけど、上手く文章にできないというか、好きすぎて語彙を失ってしまうことに気づき、投稿するには合わないなぁと諦めました。
noteならね、画像も貼れますし、少しは魅力が伝わるかと思います。
毎度のことながら、専門にしている方からすると何書いてるんだとか思われたりするかも知れませんが、全くご存じない方々に少しでも魅力が伝わればという記事ですのでご容赦を。

曜変天目茶碗、写真を見てどうですか?

読みは「ようへんてんもくちゃわん」です。世界に3点(4点あるとの説もありますが、議論に決着がついていないため、ここでは3点として話を進めます)しかない貴重なものです。その3点すべてが国宝として指定されています。

曜変天目茶碗

率直にいかがでしょうか?
美しいとか神秘的だとか、ポジティブな感想を持たれた方、私と握手です。もう言葉は要らないw
ただ、中には、模様が気味が悪いとか青ベースに黄色い模様はどうなんだ、といった感想を持たれる方もいらっしゃるかなと(学生の頃の同期がそんな感想をくれたりしました)。
これは私個人の考えですが、アートの良し悪しは、なかなか専門家以外には分からないことも多いと思います。なので、ネガティブな印象を持ったとしてもしょうがないと考えています。
音楽というアートなんかは分かりやすいんじゃないでしょうか?好きな曲はあると思いますが、うーん…という曲もあると思います。私はそれでいいと思っています。
ただ、どの分野も食わず嫌いはあんまり良くないなと思います。そういう意味で、この写真を見た皆さんは、これについてどういう感想を持たれてもそれは自由だと思います。ポジティブな印象を持ってもらえると嬉しいのは確かですけどね。

曜変天目茶碗とは

さて、これがどういったものなのかは、「曜変」「天目」についてそれぞれ理解する必要があります。「天目」「曜変」の順に説明していきます。
前記事を読んでからのほうが理解が容易かなと思います。
https://note.com/g3t260g/n/nba5ed446db31

天目とは、釉薬の名前です。ある程度有名な配合の釉薬には名前がついています。天目、織部、瑠璃、伊羅保、萩、志野、etc...。天目にも細かな種類があるのですが、基本的に焼き上がりは光沢があり、黒やこげ茶色を発色するものと思っていただければと思います。下のような感じ。

油滴天目茶碗

で、驚きなのが、曜変天目茶碗に使われている天目も、天目とされていることです。
えぇ?全然違うじゃん、という感想はごもっともです。というわけで、そこの謎について次章で迫ります。
※天目にも様々な配合(油滴天目、朱天目など)がありますが、ここでは説明を割愛します。次章で説明しますが、仮に曜変天目茶碗に使われたものと全く同じ配合の釉薬を用いても再現が難しく、本題から逸れてしまうため。

曜変(窯変)とは

曜変とは、焼いている窯の中で色が変化したり、模様がついたりする事象のことを意味しています。なお、曜変天目茶碗に限らず、そういった事象は生じますが、一般的には窯変(ようへん)という漢字が当てられます。こちらのほうが漢字と意味が合致しますね。「曜変」は実質、曜変天目茶碗の専用の代名詞となっています。

この窯変、意図して起こす手法もありますが、それでも全く同じ変化を起こすことはできません。焼き終わってからのお楽しみ、ということになります。
意図して起こす方法は2つありますが…専門的で長くなるので本当に簡潔に説明します。
1点目は、焼成する際の窯の中の酸素を少なくするor少ない場所に入れることで、釉薬中の金属に還元反応を起こし、通常の焼成(酸化反応)とは異なる色合いを出すものです。
2点目は、窯の中の灰が陶器にくっついたり器の中につもって溶けたりしてその部分の色合いが変わるものです。

いずれにしても、その事象自体は意図して起こすことはできても、模様や色合いまでは完全にコントロールすることはできないものです(緻密な計算と準備があれば、コントロールできる度合いは上がっては行きますが)。
でも、それがまた楽しみであったり趣であったりします。思った通りのものができない、というとネガティブな印象に聞こえるかも知れませんが、それが美しい形で現れるのです。どういったものが出来上がるか分からないのが良い、というのは他の創作物にはあまりないかも知れませんね。

改めて曜変天目とは

陶器は、厳密には違えども、ある程度同じものを製作することができます。
私は絵画には詳しくないのですが、絵の模写のようなイメージでしょうか。絵の具の配合や炭の濃淡とかの難しさはあると思いますが、所謂、贋作と呼ばれるような、そっくりなものは作れてしまいますよね。陶器にも贋作はあります。

実は曜変天目茶碗は、再現方法が不明なのです。そのため、作成が不可能と言われています(当然贋作も)。それが国宝に指定されていることの理由の一つです。
「えー、ここまでずっと窯変だとか色々理屈を語ってきたのに!?どういうものか分かってないの!?」その通りなんです。
少し釉薬についてかじったことのある方なら分かると思いますが、天目の釉薬で青色の発色が起きるとは考えられないし、ましてやあのような模様が出るなど…という存在なのです。
ただ、Wikipedia先生によると、2020年にはある程度近しいものが作られるようになったようですね。しかし、100個狙って作っても1,2個しか作れず、国宝指定されているものと比べると…という状況のようです。

あとがき

まぁ…こんな状態じゃGeekじゃないなー、と投稿は見送った次第でして。。。とはいえある程度構想を練ったのをポイしちゃうのもなぁ、とこうしてnoteにまとめた次第です。
うーん、ちょっと分かりにくい記事になっちゃいましたかね(苦笑) 一言、「曜変天目茶碗でググれ!」のが魅力は伝わったかも……でも前回よりも少しだけ釉薬とか焼成の話を掘り下げられたので自分としては満足です。
いやでもね、本当にすごいんですよ。なんていうかこの、吸い込まれるような美麗な紋様。非常に鮮やかな瑠璃色。皆さんもぜひググって眺めてみてください。私は学生の頃、卒論を書いてる最中に息抜きに眺めて癒されていたら気づいたら1時間経っていたことがあります。今だから笑えるけど…