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【UAEと日本の民法比較(結婚、財産編):国際化時代の法律事情】

こんにちは、りこです。

今回は、完全に自己満足ですが最近改正されたアラブ首長国連邦(UAE)の民法典と従来の日本の民法を比較し、その特徴や違いについて解説します。

※この記事は、「連邦法令第30号(2020年)」(民法典(連邦法第5号、1985年)の一部を改正したもの)の特に重要と思われる条文を選んでいます。
UAEの法律は閣議決定でどんどん変わっていくため、最新の条文は必ずご確認ください。


1. 婚姻に関する法律

UAEの改正民法典

UAEの新しい民法典では、婚姻の有効性、個人的・財政的影響、離婚に関する準拠法を、婚姻が締結された国の法律に統一しています。
具体的には以下となります。

  • 婚姻の有効性に関する実質的要件は、婚姻が締結された国の法律を参照する。

  • 婚姻契約によって定められた個人的および財政的影響は、婚姻が締結された国の法律を適用する。

  • 離婚および別居についても、婚姻が締結された国の法律を適用する。

日本の民法との比較

日本の民法では、婚姻に関する準拠法について、以下のように規定しています。

  • 婚姻の成立要件は、各当事者につき、その本国法による(法の適用に関する通則法第24条)。

  • 婚姻の効力は、夫婦の同一の本国法による。ただし、夫婦の一方の常居所地法によることもできる(同法第25条)。

  • 離婚は、夫婦の同一の本国法による。ただし、夫婦の一方の常居所地法によることもできる(同法第27条)。

違いのポイント

UAEの新法では、婚姻に関するすべての事項を婚姻締結地の法律に一元化していますが、日本では当事者の本国法や常居所地法を基準としています。UAEの方法は、国際結婚の場合に法律の適用をより明確にする一方で、当事者の文化的背景や本国の法律を考慮しない可能性があります。

2. 相続に関する法律

UAEの改正民法典

UAEの新法では、相続に関する規定を詳細化しています。

  • 原則として、死亡時の遺贈者の属する国の法律を適用する。

  • 遺言の客観的規定および死後の行為は、遺言で指定された国の法律、または遺贈者の死亡時の国籍国法に従う。

  • UAE国内の不動産に関する外国人の遺言については、UAE法を適用する。

日本の民法との比較

日本の法の適用に関する通則法では、以下となります。

  • 相続は、被相続人の本国法による(第36条)。

  • 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による(第37条)。

違いのポイント

UAEの新法は、相続に関してより詳細な規定を設けており、特に不動産に関してはUAE法の適用を明確にしています。一方、日本法は原則として被相続人や遺言者の本国法を基準としており、より柔軟な適用が可能です。

3. 外国法の適用制限

UAEの改正民法典

UAEの新法では、外国法の適用に関して重要な制限を設けています。

  • イスラム法の規定またはUAEの公共の規範および道德に反する場合、外国法の規定は適用されない。

日本の民法との比較

日本の法の適用に関する通則法でも、類似の規定があります。

  • 外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない(第42条)。

違いのポイント

両国とも外国法の適用に制限を設けていますが、UAEではイスラム法への適合性が明確に言及されています。これは、UAEの法体系がイスラム法を基礎としていることを反映しています。

4. 共有財産の分割

UAEの改正民法典

UAEの新法では、共有財産の分割や売却に関する詳細な規定を設けています。

  • 財産が分割できない、または分割が深刻な損害をもたらす場合、共有者は持分の売却や財産全体の売却を要求できる。

  • 裁判官は、共有者の要求に応じて競売を共有者のみに制限することができる。

  • 他の共有者に大きな損害をもたらす売却要求は認められない。

日本の民法との比較

日本の民法でも、共有物の分割について規定しています。

  • 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる(第256条)。

  • 分割の方法は、共有者の協議で定める。協議が調わないときは、裁判所に分割を請求することができる(第258条)。

違いのポイント

UAEの新法は、共有財産の分割に関してより具体的な手続きを規定しており、特に売却による分割に焦点を当てています。日本法は原則を定めつつ、詳細は当事者の協議や裁判所の判断に委ねる傾向があります。

結論

UAEの民法改正は、国際化に対応しつつ、イスラム法との調和を図るものとなっています。
一方、日本の民法は、当事者の本国法を尊重しつつ、柔軟な適用を可能にする枠組みを提供しています。

これらの違いは、両国の文化的、宗教的背景の違いを反映しているとともに、国際化への対応方法の違いも示しています。

グローバルに活動する個人や企業にとって、こうした法律の違いを理解することは、リスク管理や円滑な国際取引のために非常に重要です。

法律は常に変化し続けるものです。
特に国際的な要素が絡む場合は、最新の法律情報を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。


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