【ドバイの新AML法:日本人経営者が知っておくべき影響と対策】
こんにちは、りこです。
今回も、ドバイのアンチマネロン法についての投稿です。
前回と比べ、より日本人経営者に影響の在りそうな箇所を具体的にまとめています。
※前回の記事はこちらです。
ドバイの新しいアンチマネーロンダリング(AML)法が施行され、ビジネス環境に大きな変化をもたらしています。
特に、ドバイで会社を経営する日本人の皆様にとって、この法改正は重要な意味を持ちます。
この記事では、最新の政府発表に基づき、新AML法が日本人経営者に与える具体的な影響と必要な対策について詳しく解説します。
新AML法の主要ポイント
2021年8月に施行された連邦法令第20号(2018年)の改正法と、それに伴う2021年の閣議決定58号により、UAEのAML法制は大幅に強化されました。
主な変更点は以下の通りです。
実質的支配者(UBO)の登録義務化
リスクベースアプローチの強化
仮想資産事業者への規制適用
国際協力の強化
それぞれの特徴と影響を見ていきます。
日本人経営者への具体的な影響
1. 実質的支配者(UBO)の登録
新法では、すべての企業に実質的支配者の登録が義務付けられました。
日本人経営者の皆様は以下の点に注意が必要です。
25%以上の株式を保有する個人、または実質的に会社を支配する個人を特定し、登録する必要があります。
登録情報には、氏名、国籍、生年月日、住所、パスポート情報などが含まれます。
情報は定期的に更新する必要があり、変更があった場合は30日以内に報告が求められます。
これは特に、日本の本社と密接な関係を持つ子会社や合弁会社を運営している場合に重要です。
日本の親会社の情報も含めて、正確な所有構造を開示する必要があります。
2. リスクベースアプローチの強化
新法では、企業がより厳格なリスク評価を行うことが求められています。
取引相手や顧客のデューデリジェンスを強化する必要があります。特に、日本企業との取引が多い場合、日本のAML規制との整合性も考慮に入れる必要があります。
高リスク国との取引には、強化されたデューデリジェンス(EDD)が必要です。日本はFATFのメンバー国であり低リスク国とされていますが、その他のアジア諸国との取引には注意が必要です。
定期的なリスク評価と、それに基づく社内ポリシーの更新が求められます。
3. 仮想資産事業への影響
フィンテック分野で事業を展開している日本企業にとって、この変更は特に重要です。
仮想資産サービスプロバイダー(VASP)として活動する場合、ドバイ仮想資産規制庁(VARA)からのライセンス取得が必須となりました。
顧客の本人確認(KYC)や取引モニタリングの基準が厳格化されています。
日本の金融庁の規制とUAEの規制の両方に準拠する必要があり、コンプライアンスの複雑性が増しています。
4. 国際協力の強化
UAEは国際的な情報共有と協力を強化しています。
日本を含む他国の金融情報機関(FIU)との情報交換が活発化しています。
クロスボーダー取引の監視が強化されており、日本との送金や取引にも影響が及ぶ可能性があります。
日本人経営者に必要な対策
コンプライアンス体制の強化
日本語と英語(またはアラビア語)に精通したコンプライアンス担当者の配置が必要となる可能性があります。
日本の本社と連携し、グローバルな視点でのAMLポリシーを策定しましょう。
従業員教育の徹底
文化の違いを考慮した、日本人従業員向けのAMLトレーニングプログラムを実施しましょう。
定期的な更新研修を行い、最新の規制動向を周知することが大切です。
テクノロジーの活用
AIやビッグデータ分析を活用したAMLソリューションの導入を検討しましょう。
日本語対応可能なシステムの選定が、業務効率の向上につながります。
専門家との連携
UAEのAML法に精通し、かつ日本のビジネス慣行を理解している法律事務所や会計事務所との連携が有効です。
定期的な法令遵守状況の監査を受けることをお勧めします。
取引先の見直し
既存の取引先についても、新基準に基づいたリスク評価を行いましょう。
特に、第三国経由の取引や、複雑な所有構造を持つ企業との取引には注意が必要です。
報告体制の整備
疑わしい取引の報告プロセスを明確化し、日本の本社とUAEの当局の両方に適切に報告できる体制を整えましょう。
内部通報制度の強化も重要です。日本語での通報も受け付けられるようにしましょう。
今後の展望
UAEのAML規制は今後も進化を続けると予想されます。
2023年のFATF相互審査を受けて、さらなる規制強化の可能性もあります。
日本人経営者の皆様には、以下の点に注意を払うことをお勧めします。
日本とUAEの両国の規制動向を常にウォッチし、迅速に対応できる体制を整えること。
デジタル化やフィンテックの進展に伴う新たなリスクに備えること。
コンプライアンスを単なるコストではなく、ビジネスの信頼性を高める投資として捉えること。
新AML法への対応は確かに課題ですが、適切に対応することで、ドバイでのビジネスの安定性と成長性を高めることができます。
日本企業ならではの誠実さと緻密さを活かし、UAEのビジネス環境で模範的な存在となることを目指しましょう。
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