見出し画像

【ドバイ移住と日本の税金:非居住者要件及び法人課税と個人課税の詳細ガイド】

こんにちは、りこです。
今回は、みんな気になるドバイと日本の税金についての投稿です。

ドバイへ移住したら、個人の税金と会社の税金はどうなるの?
そういった疑問の解消にお役に立てれば幸いです。


近年、ビジネスや生活の拠点としてドバイに注目が集まっています。
税制面での優遇措置が魅力の一つとなっていますが、日本国籍を持つ個人や日本に拠点を置く企業がドバイに移住または進出する場合、税務上どのような取り扱いになるのでしょうか?

本記事では、最新の情報を踏まえて、個人と法人それぞれの観点から詳しく解説します。

1. 日本とUAEの租税条約

まず重要な点として、日本とアラブ首長国連邦(UAE)の間には包括的な租税条約が締結されています。
この条約は正式には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアラブ首長国連邦政府との間の条約」と呼ばれ、2013年5月2日に署名され、2014年12月24日に発効しました。

この条約の主な目的は以下の通りです。

  1. 二重課税の回避

  2. 脱税の防止

  3. 両国間の経済関係の促進

この租税条約の存在により、ドバイへの移住や事業展開を考える日本の個人や企業にとって、税務上の取り扱いがより明確になりました。

2. 個人の税法適用について

居住者判定

日本の税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に分類しています。
居住者は日本での全世界所得に対して課税され、非居住者は日本国内源泉所得に対してのみ課税されます。
一方、UAEでは、個人所得税が存在しないため、個人の所得に対して原則として課税されません。

居住者要件の比較

UAEの場合(連邦政令法第85号「税法上の居住地要件」2023年施行)

自然人は、以下のいずれかの条件を満たす場合にUAEの税務居住者と見なされます。

  1. 通常のまたは主要な居住地および財務・個人的利益の中心がUAE内にある場合

  2. 関連する連続する12か月間で183日以上UAE内に物理的に存在した場合

  3. 関連する連続する12か月間で90日以上UAE内に物理的に存在し、かつ以下のいずれかを満たす場合

    • UAE国民である

    • UAE内で有効な居住許可を持つ

    • 湾岸協力会議加盟国の国籍を持つ

さらに、以下のいずれかの条件も満たす必要があります。

  • UAE内に恒久的居住地を持つ

  • UAE内で雇用または事業を行っている

日本の場合(国税庁タックスアンサー「No.2875 居住者と非居住者の区分」)

個人の居住者判定は、以下の順序で行われます。

  1. 恒久的住居の場所

  2. 利害関係の中心がある場所

  3. 常用の住居の場所

  4. 国籍

実務上の注意点

日本の税務当局は「生活の本拠」の判定に関して非常に厳格です。
租税条約があっても、個々の状況を総合的に判断します。
具体的な判断基準は主に下記のとおりです。

住所: 生活の本拠がどこにあるかが重要。
滞在日数: 1年以上の居所があるかどうか。
職業: どの国で主に活動しているか。
資産の所在: 資産がどの国にあるか。
家族の居所: 家族がどこに住んでいるか。

上記を踏まえドバイに移住する場合、以下の点に注意が必要です。

  • 日本に帰る場所や自宅を維持していないこと

  • 日本の住民票を抜くこと

  • 日本に滞在する際は、ホテルやAirbnbなどの一時的な宿泊施設を利用すること

  • ドバイでの生活実態を明確に示せること(最低でも1年程度の継続的な居住が望ましい)

  • 実質的に日本の経済活動から収入を得ていない、或いは割合が少ないこと

3. 法人の税法適用について

法人の所在地判定

法人の税法適用は、その法人がどの国に所在するかによって決まります。
日本の会社には日本の法人税法が、ドバイの会社にはUAEの法人税法が適用されます。

UAEの法人税最新情報

UAEでは2023年6月1日より連邦法人税が導入されました。
主なポイントは以下の通りです。

  • 年間収益が375,000AED(約1,400万円)を超える企業に対して9%の法人税が課される

  • フリーゾーンなど特定の地域や業種では免税措置が継続される

法人の所在地要件

UAEの場合(連邦政令法第85号「税法上の居住地要件」2023年施行)

法人は、以下のいずれかの場合にUAEの税務居住者と見なされます。

  1. UAE内の法令に基づき設立、形成または認識されている(UAE内で外国法人が登録した支店を含まない)

  2. UAE内で施行されている税法に基づき税務居住者と見なされる

日本の場合

法人の居住地判定は、以下の要素を考慮して行われます。

  • 本店または主たる事務所の所在地

  • 事業の実質的な管理の場所

  • 設立された場所

  • その他関連するすべての要因

二重課税の回避

日本とUAEの租税条約により、二重課税の回避がより明確になりました。
一般的に、外国子会社は日本の法人とは別人格として扱われ、現地で税金を支払った場合は原則として日本で二重に支払う必要はありません。
ただし、具体的な適用については、条約の詳細な規定を確認する必要があります。

タックスヘイブンについての注意

UAEは近年、マネーロンダリングや租税回避に関する規制を強化しています。
OECDのグローバル・フォーラムによる税の透明性と情報交換に関する国際基準を「概ね遵守」していると評価されていますが、完全なタックスヘイブンではありません。
法人を設立する際は、実際の事業活動を前提とすることが重要です。

4. 国外転出時課税(出国税)について

日本からドバイへの移住を検討する際、忘れてはならないのが国外転出時課税(出国税)です。
これは、一定の資産を持つ個人が国外に転出する際に、未実現のキャピタルゲインに対して課税する制度です。

  • 対象者:1億円以上の対象資産を保有し、国外転出する居住者

  • 対象資産:有価証券、匿名組合契約の出資持分など

  • 税率:所得税(15.315%)および住民税(5%)

この制度は、高額資産家の税逃れを防ぐ目的で導入されましたが、ドバイへの移住を考える際には重要な検討事項となります。

まとめ

ドバイへの移住や法人設立を検討する際は、以下の点に注意が必要です。

  1. 日本とUAEの間には包括的な租税条約が存在し、二重課税の回避や経済活動の促進が図られている

  2. 個人の所得税については、条件を満たせばUAEの税法が適用され、実質的に無税となる可能性がある

  3. 法人税については、UAEでも新たに導入されたため、詳細な検討が必要

  4. 日本の居住者判定は厳格であり、形式的な海外滞在だけでは不十分

  5. 国外転出時課税(出国税)の可能性を考慮する必要がある

国際税務は非常に複雑で、個々の状況によって異なる取り扱いがなされる可能性があります。
また、法改正や新たな国際協定の締結により、状況が変化する可能性も高いです。
そのため、ドバイへの移住や法人設立を検討する際は、最新の情報を確認し、専門家への相談を強くお勧めします。

※本記事の情報は2024年9月時点のものです。
税法や国際協定は頻繁に更新されるため、具体的な行動を起こす前に、必ず最新の情報を確認してください。

ドバイ移住や税金に関してのご相談はこちらをご予約ください。
(※日本の軽金関係のご相談に関しては提携している日本人の会計士がご対応させていただきます。)

中の人はこちらです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?