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特別になった日曜日

SNSには投稿し、様々な方から励ましのお言葉をいただいた2019年の夏。
大好きだった祖母鐐子が他界した。
倒れたその時、ぼくはテニスをしていた。日曜日の朝だった。
自宅に帰り、スパイスカレーを作り、自分で食べ、仕事に取り掛かろうとして少し昼寝でも、と寝かかった時に、アメリカにいる父親からLINE電話が入った。
仕事とか様子伺いの電話かと眠かったので一度無視をしたが、もう一度。
こうやって親や伯父から電話がある時は、決まって祖母が体調を崩したり入院した時だった。
しかし、この日は違った。
虫の知らせ、本当にあるのだと思う。

「おばあちゃんがね、、、あの、、、亡くなった」

父親にしては珍しいため息と「ついに」というか、あの言葉の「間」は一ヶ月たった今でも忘れない。
ぼくも思わず、「ああ〜」っと声をだした。日曜日の昼過ぎだった。

第一発見者だった伯父と病院で合流し、冷たいけど柔らかいままの祖母を二人で撫で、「苦しそうな顔はしてなかった」「心筋梗塞だったなら結構あっという間だったろうね」と最期に立ち会えなかったことの悔しさというか、虚しさをなんとなくフォローしあっていた気がする。

従兄弟も合流し、二人で母親にきいた「一番お気に入りだった服」を取りに祖母の家へ。日曜日の夕方だった。

食べかけのパン、いつものように散らかったテーブル、書きかけのメモ、起きたまんまのベッド、そこに飾られた自分たちの小さな頃の写真、隅々まで観察し、祖母がまだそこにいた残滓を目に焼き付けた。

前日に着た服かな
パンのみみ
自分だけのためだからざくっとしたキッチン

夜に差し掛かると、この日はもうやることがないからと一旦帰宅した。
やらなければいけない仕事もあったが、どうしても頭がいっぱいで手につかなかった。
行きつけのお店に夜遅めに行った。
客が自分だけになってマスターに祖母の急逝を話した。
そっと明かりを暗くしてくれ、祖母の話やマスターの亡くなった親の話をしながら、それぞれの故人を偲んだ。日曜日が終わりかけの夜だった。

そこから葬儀までは両親の帰国に合わせ、意外と時間があり、岐阜で子どもたちとワークショップをやった。

あれから一ヶ月。
相変わらず、というか、まあ、なかなか忙しい毎日を過ごしている。
仲間たちと話したり、仕事をしたり、お酒を飲んだり、これまでの毎日を過ごしている。

ただ、「あっ」と思わず声を出してしまうくらい、これまでの人生の中で、祖母のことを考えるのが当たり前になっていた。
屋久島からの帰り、お土産を買っていこうと思って手を出した時に、「あっ」と。
辛いものだめだったな、グルメだからこんな安いものいらないだろうな、やっぱり甘いものがいいかな、でもダイエットだなんだ言うだろうな。

そろそろ顔出そうかな。
「あっ」


死においていかれた自分

実は今、自分はなんのために頑張っているのか見失いかけているのだと思っている。
これまで、「こんなことやったら驚くかな」「これ見せたら喜ぶかな」というモチベーションでいたし、名古屋を拠点にしていた理由は、名古屋が大好きだから、ではなく、名古屋に祖母がいたからだ。

そして、もう一つ。
自分がこれまでテーマにしてきた「死」というものは、この祖母の死を迎えることを恐れていたからでもあり、それを克服するために「死を想っ」ていた。それがあっけなく訪れ、「死」においていかれていると感じている。


ところが若さに救われる

岐阜で子どもたちとのワークショップを通じて、彼らの元気さ、素直さ、その可能性は救いだった。
40を目前にしてそんな感覚をえたのも新鮮だった。(なぜなら子どもが苦手だからだ)
そして、今大府では中学生たちと映画をつくっている。
大人と子どもの狭間で揺れる彼らのお芝居や動きは、こちらの意図や予想を大きく超え、じわじわと可能性の開花に心が踊る時がある。
何かを「遺す」ことができるかもしれない、という楽しみ。
それを感じ、もっと没頭したいと思っている。
とはいえ、まだ40にもなっていないのに、気がつけば自分が最年長の活動が増えてきているのは、予想していなかったというか、大丈夫なのだろうかと不安になることもある。

特別になった日曜日

結果、日曜日は、毎週祖母のことを思い出す。
どうやって倒れたのか、何を想って逝ったのか、彼女の中での「ぼく」という存在は、あの日で止まってしまったことが残念でならない。
今年の誕生日は、祖母からの電話もなかった。
だから自分の誕生日を忘れるくらい仕事をした。
何か起こる日は、きっと日曜日だ、と思うようにした。

あの日曜日、自分の中で、何かが終わった。
ある意味、自分を再スタートさせるタイミングだったのかもしれない。
少なくともそう感じて動き始めている今、日曜日は特別になった。

日曜日に、一つ一つ新しくなろう。
そんな挑戦をしてみよう。
まず、本当に体重を落としてみよう笑
という感じに。

映画も仕事も気を引き締め直して頑張ります。

いつか誰かに自慢される人に(笑)





でもね、やっぱり寂しいよ。
涙はまだ枯れないよ、りょうこさん。

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