忘れない。
この日の感情を書き表すのはとても難しい。
「泣いた」、「素晴らしい」、俺もそんな感じの事をツイートしたけど、そんな次元を遥かに凌駕した試合だった。
試合は天皇杯の一回戦。相手は鹿児島。
記憶に新しい最悪な試合の相手だった。正直な話、天皇杯なんてやってる場合か?とすら思ってた。チームは最下位。下位の宮崎や相模原にも勝ちきれない状況。まとまりの見えない選手たち。厳しい戦いになるのは明白だった。
この日、ゴール裏をリードしていたのは福大戦に続く形で、俺と同じ世代の3人だった。そんなこともあってか自分は普段より前列に立ち共に叫んだ。
試合はいつも通りの展開だった。あっさり失点。それでもチャントは止まず叫び続けた。正直、守備の軽さにキレそうになったけど、怒りを応援に還元して叫んでた。
前半終了間際、スンジンがプロ初ゴールを決め同点に追いつく。後日動画を見たけど動き出しが完璧。これからも頼むぞスンジン。
後半はお互い決めきれず延長へ…
そしてそれは起きた。
延長後半、相手のクロスが村松に当たりオウンゴール。
副審は旗をあげた。確かに見た。だが鹿児島の選手が副審に詰め寄る。主審も中に入り最初は鹿児島の選手を宥めているんだと思ってた。場は落ち着き再開するかと思ったその瞬間、主審は笛を吹き鹿児島のゴールだと。。。
心底腹が立った。
副審の意味が無ぇじゃねぇか。VARでもあったのか?俺はブチ切れた。でもそんな暇はなかった。「このまま負けたくねぇ」、試合前そこまで気持ちの無かった俺がこんな感情になった。あの時はリーグで最下位なんてもんは忘れて、この試合に勝ちてぇしか思ってなかった。ゴール裏の声量も爆発した。1700人代のスタジアムとは思えなかった。チャントの通り「この街、誇りに思うなら」歌詞と状況が合わさってエネルギーが生まれた。あんなジャッチ認めるわけがない、証明するにはまず追いつくしかなかった。
左サイドから上がったクロス…
ネットが揺れた。
誰が決めたかなんて、目の前で見てたのに分からなかった…!俺はめちゃくちゃ叫んで泣いた。
「ざまぁみろ!」
何度も叫んだ。こんな所で死ねない。
そんな瞬間だった。
それでもチャントは激しさを増す。3点目を奪いに行った。猛攻するも阻まれPK戦へ。
「岡田コイントス勝ってくれ〜」それぞれが気持ちを吐き出す中、ゴール裏の仲間がメインスタンドに向けてゴール裏に来てくださいと呼びかける。するとメインスタンドの何人かが動き出す。
感動した。
いつもはAT弾を喰らって呆れて帰るメインスタンドやバックスタンドの人を何人も見てきたから、余計熱い展開だった。
そして闘いに備え畳められた大旗がゴール裏中心部に集められ、闘いが始まるのを待っていた。
一本目岡田は冷静に決める。彼は吠えた。
相手の一本目、俺らはブーイングを喰らわせた。大旗も炎のように揺らぐ、そして吉丸は止めた…歓喜に包まれる中、俺は手が痺れた何でかわからない。2本目3本目ギラヴァンツは落ち着いて決めてゆく。2本セーブしてあと1回決めれば勝ちの場面でキッカーは吉丸。
ネットが揺れた。
俺は天を見上げて叫んだ周りには泣いてる人もいた。
そして前を向くと吉丸を先頭に選手たちが俺たちの所に走ってきた。
堪らなかった…
俺は吉丸のユニのエンブレムを触った。
とても誇らしかった。
そして嬉しかったのが夛田と握手した事だ。
鹿児島でもミクスタでも彼の行為は褒められたものじゃないけど、それでもあんなにボロカス言った俺に目を見て握手してくれたんだ。
そして落ちてたシンバルを夛田は叩く素振りを見せるぐらいテンションがブチ上がっていた笑
正直チャントも歌えないぐらい喉が終わってた。ただ、みんなが歌っているのを聴いていた。本当に嬉しかった。
試合後、スタジアムの階段を駆け下りて
石田社長に握手からのハグ笑
「いや〜本当に良かった!」と社長と久しぶりに笑って話せた。片付けをしていたクラブスタッフにも、PKの時に感動したと聞いた時は嬉しかった。
リーグ順位は最下位だけど、何か大事な感情を思い出した気がする。改めて言うけどゴール裏が最高だったのはもちろんだが、メインからゴール裏に来てくれた人達には本当に拍手を送りたい。勝負所を分っているというか普段じゃ味わえない緊急事態でも団結する事ができた。
ギラヴァンツにハマっていくほど辛いことが多いのは確かだが、勝った時の喜びは計り知れない。
ここから這い上がっていこう。
昨日、そのエンブレムは輝いてたよ。