超大型台風、隔絶された空間
数十年に一度というくらいの最大級の超大型台風の襲来の予報。
学校も、早々と土曜日の休校を決めていた。
当日の土曜の午前中は、どんよりと暑い雲に覆われているものの、雨も風もそんな気配はなかった。
午後になっても、時折強い風が吹くくらいで、特に変わるところはない。
3時を過ぎ、4時を回る頃になると、俄然、風と雨が強くなった。
そして、7時頃には、クリフォード・ブラウンとマックス・ローチの熱気が滾るようなサックスとドラムスの間に冷たい雨と風の音が割り込んでくるようになった。その間隔はだんだんと短くなって、音は大きさを増すばかりだ。時折、さらに大地を震わせるような音が混じることがある。そして、それが続くようになる。ちょっと、不安になり、怖いくらい。
それでも、僕はこうした時間と空間が嫌いではない(以前にも、書いたことがあるかもしれない)。自身を取り巻くガラスとコンクリートに囲まれた小さな空間の中だけのことに限って言うならば、むしろ好きと言ってもいい。
外は大荒れに荒れている。しかし、僕自身は人工的に作られた空間の中で守られている。窓に吹きつける風も雨も、ガラスの向こう側の出来事なのだ。そのことを感じることができるのが嬉しい。時折、窓が揺れる音が聞こえるほどであっても。ただし、その際にそれが他に大きな被害をもたらさないかぎりは。言うまでもなく、世界は「私」だけのためにあるのではない。
このところ、大きな被害をもたらす自然災害が続いている。この容赦のなさに、神も仏も無いものかという気持ちで、窓の外で揺れる景色を見つめ、荒れ狂う風と雨の音を聞くのだ。
さらに、もしやこれも、全てではないとしても、いくらかは人間の行き過ぎた傲慢さが作り出したものではないか、という思いが頭を過るのだ。
そして、翌朝は、これまた当然のように、いつもにも増して美しい青空が広がっているのを目にすることになる。(F)
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