I Don't Want To Talk About It

かつて、ロッド・スチュワートが歌って、ヒットさせた。邦題は、『もう話したくない』。

元は、なんとニール・ヤングのバック・バンド、クレイジー・ホースのメンバーが作った歌だという。ニール・ヤングもその才能を買っていたというから、期待してその歌詞を眺めてみた。ちょっと残念。女に去られた男がその思いを吐露したような歌、のよう。

そして、その歌詞は少々ストレートすぎるというか、ちょっとばかり女々しいような気がする(うんと若い時に聴いたら、共感したかもしれない)。ロッド・スチュワートのLP『アトランティック・クロッシング』に収録されているというのだけれど、全く覚えていなかった。

それをどうして聴くことになったかというと、枯れてきたロッド・スチュワートがスコットランドやアイルランド、すなわちケルトのトラディッショナルな歌を歌ったものがないかと思って探してみたのがはじまり。結構渋い歌が聴けるのではないかという気がしたのでした。そうしているうちに、年取ってからのライブ ”One Night Only! Rod Stewart Live at Royal Albert Hall” のDVDに行き当たって、その中で歌っていた1曲。彼がグラスゴーで見つけてきたという、若い女性シンガー、エイミー・ベルとのデュエット。

僕は、彼女の歌にも惹かれたけれど、とくにその歌詞のあるフレーズに共感したのだった。と言っても(やや残念のような気もするけれど)、恋愛のことではなく、最近の学生たちとの関係。彼や彼女たちは、めんどくさいと思ったり、新しく興味を覚えるものがあったら、それまで取り組んできたものを平気で捨て去るように見えるのだ。おまけに、自分の都合を優先するのにためらいがない。

そうすることが自分の思いに忠実、真摯な態度だと思っているように見える時さえもある。が、たいていそれは、誤解に過ぎないに違いない。先日訪ねてきてくれた社会人3年目の卒業生が話していったことは(仕事上のあれこれについてだったけれど)、まさに同様の感想を新入社員に対して抱いているかのように思えたのだった(やれやれ)。

それで僕は、そんな彼や彼女たちに、”I don't want to talk about it how you broke my heart” という気分なのだ。エイミーの歌はさらに ”If I stay here just a little bit longer / If I stay here won't you listen to my heart” と続く。僕も、「もう少し取り組んでみたら」、とか、「もうちょっと頑張ってみようよ」、とか、言えればいいのだけれど、ちょっとね。そろそろ、教師としての資格を失いつつあるということかも(なんで今頃になってという気がするのだけれど、ま、こうしたものなのかもしれません……)。(F)

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