Q.家具のなかで、これだけは必要だと思う家具は何ですか?NMさん(3年)
W 僕は畳の部屋で過ごす事が多くて、何もないところがくつろげる空間なんです。
F 家具は、できればない方がいいってこと?質問をいきなり危うくしてしまうような意見ですねえ。
W ヨコヤマサンの自宅だったガーデン山のリビングの続き間の畳の部屋がいつも片付いていて何もない空間だったのが印象的でした。
Y あれはワタナベサン、要するにお客さんが来るときだけ片付いているんですよ、当然。
W 普段はどんな使い方をしていたんですか?
Y その部屋には押し入れがありますから、夜になれば布団を敷いて寝室として使っていましたし、洗濯ものをたたんだり、DVD用の台があるのでそれを引っぱり出して映画を見たりしました。
W そういえば、箱火鉢なんかもだしてお酒をつけてくれましたね。
F おっ、いいですねえ。ところで、西洋ではリビングルームやベッドルームなどと室名を用途で表現するけれど、日本建築では広さで表現するようなことがあるね。6畳の間とか8畳の間というように。西洋では家具が部屋と一体となっているのに対して、日本では平安以来の室礼、設える文化というのがある。いや、あったと言うべきかもしれないけれど。
Y 寝殿造のような板の間に畳ですらその時々の用途に応じて敷き並べられインテリアを造っていく。部屋は固定した用途を持たないのですね。
F まあ、西洋でも、ミースのユニバーサル・スペースのような考え方も戦後には出てくるわけだけれど……。
Y ちょっと話が変わるのですが、椅子にこだわる人とテーブルにこだわる人の二つのタイプがあるそうです。僕が初めて意識して購入した家具は、いまの奥さんと暮らし始めたたきに、コンランショップの前身であるハビタで購入した折りたたみテーブルでした。建築家・デザイナーを職業としているのに、恥ずかしながら有名椅子は一脚も持っていません。
F えっ、そうなの。でも照明器具は、たしかトロメオなんかがあったような……。ところで、ボクは椅子には少しこだわりますが、テーブルなどは板さえあればどんなものでもいいでしょという気もしてしまうことがあるなあ……。
Y 実は椅子にこだわる人は権威主義者で、テーブルは板だけにフラット思考、リベラリストだという事らしいです。
W ふふふ。
F まいったなあ。何だか僕がうんと悪者みたいじゃないですか。でも、当たらずとも遠からずってことかも……。でも、テーブルにも思い入れがないわけじゃないけどね。昔、作ったこともある。
Y ちょっと罠にはめたようになりましたが、椅子にはもちろん座るという機能もありますが、玉座のようにポストなどを表現するものでもあると言いたかったのです。ごめんなさい。
F&W なるほどね。
Y 椅子に座って膝の上で手帳に書きつけるのがフジモトサン、立ちながらテーブルでノートを広げるのがボク。
W いやいや、椅子に座ってウイスキーグラスを回しているのがフジモトサン、立ち飲み居酒屋でホッピーを煽っているのがヨコヤマサンというまとめでどうでしょうか。
Y & F うーむ。
F あれ、また最初の問いはどこかへ行ったような・・・。
Y アイテムが3つ揃うとインテリアがそれらしくなるという話があります。例えば、椅子とテーブルと照明のセット。
W ヨコヤマサンさんは以前、空間を設計するときにそこにビヘイビアが生まれるように心がけていると言っていましたね。椅子とテーブルと照明があれば、そこに食事というビヘイビアが生まれます。
Y&F ふむ。
W 洗面台でその空間にビヘイビアをつくろうとした話もありましたが、それ1つでビヘイビアをつくってしまうのですから、洗面台の威力はすごいですね。でも洗面台は家具とは言えないか。
Y それ一つでビヘイビアをつくれる家具というのがあれば、問いの答えになりそうだね。