雨の日の羨望_木村彩子_12
家に着いてからは、セーブしていた嗚咽も我慢せずわんわん泣いた。ひとしきり泣いたあと、冷静になった。あの状態の兄にわたしが言い返してしまうのは良くなかったかもしれない。いつもの、今までの兄ならわたしに怒鳴ったりしない。やっぱり弱っているから怒りっぽくなるのもしょうがないんだ。一晩おいて落ち着いたら、明日謝りに行こう。言われたことは頭に来たが、やっぱり兄には早く元気になってほしい。
次の日、また兄の家を訪ね、インターホンを鳴らすと反応がなかった。ドアをノックして「兄さーん」と呼びかけたがやはり応答はなかった。もしかしたら一人で散歩にでも出られるようになったのかもしれない、とりあえずメールで謝ればいいか、と思ってその日は引き返した。
だが、メールの返信は来なかった。次に訪ねた時もインターホンの返事はなかった。そのまま兄の行方はわからなくなった。
あれから一年が過ぎた。
わたしが本気で兄を探さなかったのは、なんとなく探さない方がいいのかもしれないと思ったからだ。多分、たとえ弱っていたとしても、わたしの兄は現実から逃げたりしない。根拠はないが、前に進むために居なくなったのだと信じていた。
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ここまでお読みいただきありがとうございます^^
今回短めですが、「彩子編」とりあえず終了になります。
次回より「しぐれ編」に入る予定です。
しぐれの謎の行動の意図はなんだったのか!?次回以降少しずつ!判明していく…かも!?
引き続きゆっくりですがよろしくお願いします^^
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