茶漬け新論とは

簡単に言うと,「茶漬けに美を発見できるか」を問う研究プロジェクト.
もし茶漬けに美が発見できれば,他のどんな料理でも発見できる.
そういう意図で茶漬けにした.

茶漬けに,美はあるのか.
そんなことは誰にもわからない.
それを明らかにする方法も,誰にもわからない.
そもそも,味覚や嗅覚は,伝統的に美学の対象とされていない.
味覚に美が存在するならば,あるいは,味覚が美的鑑賞の対象となるとするならば,それを捉えてみようではないか.
そして,いちばん,美から遠そうな,卑近な食べ物でやってみようではないか.

勝算がないわけではない.事実,北大路魯山人は茶漬けに関する数編の随筆を著している.

茶漬け新論の取り組みは,研究がゼロからスタートして,右往左往しながら形になっていく様をそのまま公開したいと思う.
卒論をどう進めていいかわからない学生や,味覚に関心のある在野の研究者が,「関心を研究にしていく過程」を追体験し,こういう研究のスタイルがあってもいいんだ,と思ってもらえれば嬉しい.

研究は決して「研究計画」が先に立つようなものばかりではない.
手探りで,「実践しながら方法論をつくる」という手法もあるのだということを示せればと思う.


「茶漬け新論」というネーミングは,バークリの「視覚新論」になぞらえている.
そして皮算用を許していただけるならば,大森荘蔵が「新視覚新論」を著したように,この研究のさらに先に「新茶漬け新論」が生まれることを期待したい.まったくもって気が早い話ではあるが.

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