創発
時は弥生、啓蟄の候。ほだかが同期と共にご来寧。
この旅で得たことを言葉にして認知できるようにしておく。
今回の経緯
今回はほだかに加えて、面識のある方2名・初めましての方2名の合計6名の大所帯。
きっかけは昨秋にほだかが来寧予定だったがこられなかったので、リベンジマッチをすることになったこと。
そして、実は福井と奈良との間には意外と関係が多くあった。
福井は興福寺の荘園だったこと、奈良の修二会の行事「お水取り」で使われる水は福井・若狭の「お水送り」という行事で送られた水であること、などなど。
ほだかとぼくがお互いの地域を行き来するうちにそんな関係があったことに気づき、せっかくなら同期も一緒に、ということでこの会が企てられた。
面識があると言ってもまだ1〜2回、ましてや後の面子は初めましてである。
得体の知れないおじさんからの来寧の招待はさぞ怖かろうに、よくぞ来寧くださった。
今回の旅のコンセプトは「体験と実感」であり、見るだけではなく様々な体験を通して、奈良を後でも感じられ、また、そこから創発に繋がるようなものにしようと工夫した。
また、奇しくも今回は修二会のタイミングとも重なっており、存分にベーシックな奈良もディープな奈良も知っていただきたいと思い、毎度の如くパンパンの旅程をお組みした。今回の旅程は最後にメモとして付しておく。
この旅で与えてもらったあれこれ
1つ目は、1日目の夜にしたbird bird barでの公務員交流会に関して。
せっかく福井から5名公務員が来寧下さるなら、素敵で大好きな奈良で日々ご活躍の公務員の方もお招きし、交流できないかと思い企画したこの会。
最終的に奈良市・生駒市・大和郡山市のみなさんにお集まりいただくことができた。
みなさまのご協力を得て、奈良での活動のあれこれと坂井市の紹介(とふるさと納税宣伝)をにぎやかに行っていただけた。
その会の中で(緊張もあったろうが)目を輝かせ、リアクションばっちりで聴いてくれている福井メンバーを見て、ぼくは心中で溢れていたグッと来た思いを飲み込んでいた。
自然体で会話を深掘りする子もいれば、目を輝かせながら興味津々で話を聞いてくれている子。
会が終わり再び東大寺に向かう道中で、あれこれ質問してくれるその様。
ぼくが奈良を好きでいられるのは、こういった人たちの存在であろうと確信した。
20余年、奈良で生まれ奈良で育ち奈良で働き、生きて来た。今までも、きっとこれからも。
ただ、途中でいろんなものに目移りもしてきた。それでも結局、奈良が1番好きであること。
それは、これまでお世話になったたくさんの方々の存在や刺激はもちろんだが、
見慣れた「奈良」という地域を新しい視点から見てもらい、ぼくもまた見たことのない角度から見れ、また好きになるから。
また、いろんな地域に行きいろんなひとやものに触れ、その地域も好きになること。そして、奈良に置換して考えた時、奈良のもつ特異性に気付けるから。
きっとそんな循環がこの思いを太らせ、今も昔も同じことを思い続け、年々強くなっているんだろう。
伝えて来たつもりが、いつだって、それ以上にもらっていたこと。
そんな当たり前のことに、今さら気付く。いや、気付かれた。そして創発を受けているのは彼らのみではなく、ぼくも含めてであることに改めてハッとさせられた。
2つ目は、2日目の移動中のこと。
初対面の人とも話せるようにというほだかの計らいで、道中の車割りをあみだくじで行ってくれた。
ぼくは初めましてのHくんと三度目ましてのTくんと移動することに。
最初はアイスブレイク、他愛無い話をしていた。音楽の話、休みの日の過ごし方、色恋沙汰の話などなど。アイスブレイクでできる話は、枚挙に暇がない。
途中から「おもしろい話をしよう」というTくんの関西人キラーなパスを受け、なぜか20余年生きて来た途上の人生の話をしあった。
三者三様、生い立ちも境遇も経験も全く異なる人生。共通点と言えば、ほだかがハブになっているというだけの3人。
今のタイミングで出会い、同じような性格や考え方だと思っていても、その根元にあるものや育まれて来た過程は全く違う。そこから得られる刺激は大きく、ぼくには大切な時間だった。
今している仕事ではいろんな状況からその人を推し量ることが一定求められる。推し量ったことが合っている時もそこそこあれば、ない時も往々にしてある。
今回も前情報から「こんな感じなのかな」と推し量って臨んだけれど合ってないことの方が多く、「なるほど、そういう思考もあるのか」と学ばされ、頬をぶたれたような衝撃を受けた。
そこそこいい年になってきたぼくにとって、こういった刺激は原点に立ち返らせてくれる。
人なんて、わからないものだと。自身は全知全能ではない、そんじょそこらの凡人であると。
凡人なら、謙虚に愚直に、努力を積み重ねるしかない単純なことを。
HくんもTくんもたくさんのことを教えてくれた。それ以外の面々も同様である。
ぼくはこの2日で、彼らに何をできたのだろうか。そんなことを流れる車窓を眺めながら、思考の海に潜っていた。奈良市内から洞川までというと往復約4時間かかるわけだが、あっという間に溶けていった。
自立すること
往々にして語られる「自立とは依存先を複数設けること」という言説は、真であると思う。
最近、後輩にふと「矢部さんはなんで仕事頑張れてるんですか?」と尋ねられた。
生きているといいことも悪いこともあり、仕事でも同様である。
どれだけうまくこなしている人でもあるだろう。それでうまくいっているように見える人ほど、身のこなし方が器用なんだろうと思う。
その時のぼくは「日頃会う人だけじゃなく、彼の地で何かのために頑張る人がいるから」的なことを答えた。
言うならば「暖かくなって来たな。あっちはどうかな」「セブンのコーヒーうまいな。そういやあの喫茶店の主人は元気かな」と思いを馳せられる関係か、どうかか。
人間はいいところしか見ない生き物で、自分がしんどい時こそ他が眩しく見えてしまう。それでも、眩しく輝く光源の裏には濃い影もあり、みんな濃い影を乗り越え、時を刻んでいる。
小さな社会だけだと思って生きていては、はじめから自由だったことに気付けないのだ。
しかし、ぼくにはそういう風に思いを馳せられるひとや場所がたくさんあって、そういう人がこの旅でも増えたと感じる。
こんな機会はお金では買えず、今でも増え続けていることが貴重で、ありがたくて、尊くて。これからも思いを馳せて、馳せるだけではなく行動でその思いを示し続けて、思いと関係とを深めたい。
というわけで月末、早速福井に行きます。北陸新幹線も敦賀まで延伸され、駅舎の表情もまた異なるのだろう。たのしみ。
大元を辿るとほだかの存在が大きくて越えられなくて率直に「やっぱすげぇな」と思う。それほどに、ほだかやほだかが愛した地域や人に、魅せられ続けられている。
ぼくはぼくやぼくが愛した地域や人を、魅せられ続けられているか?
そうだといいが、きっと途上だろう。ぼく自身がさらに高みを目指し続けなければならない。
そんなことをつらつらと思う、後日譚。
今回の旅程とひとことメモ
◆凡例
(B):矢部が思うベーシックな観光
(D):矢部が思うディープな観光
◆1日目
〜大和郡山市〜
① (B)サンプーペー
② (B) K COFFEE
③ (B)コロッケのはやし
〜広陵町〜
④ (B) S.labo
〜奈良市〜
⑤ (B)奈良県コンベンションセンター
⑥ (D)紀寺の家
⑦ (B)修二会〜お松明〜
⑧ (D) bird bird barで公務員交流会
⑨ (D)修二会〜聴聞〜
◆2日目
〜奈良市〜
① (B)東大寺大仏殿
② (D)奈良公園バスターミナル
③ (B)興福寺国宝館/中金堂
④ (B)猿沢池
⑤ (B)中谷堂
⑥ (B)ならまち
〜天川村〜
⑦ (D)洞川温泉の魚清
⑧ (D)面不動鍾乳洞
⑨ (D)みたらい渓谷
〜番外編の京都〜
⑩大学時代にほだかと行った居酒屋
このnoteも、旅の後の後日譚を記す場所になって来た。当初想定とは異なるが、まあいいか。旅は後日譚にこそ価値がある。
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