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【#fuwa自論私論】「理論的には可能です」と言えない世界で

世間、とりわけIT業界に蔓延る(?)言葉に「理論的には可能です」という決まり文句があります。
解釈は人それぞれになり明確な定義があるわけではありませんが、平たく言うと「予算などを一切無視してゴリ押せばできなくはないですが、常識的に考えれば不可能ですよ、普通はやりませんよ」というニュアンスを相手に伝えるための言葉とされています。極端に短い納期を求められたときなどに使われることが多い言葉です。


「理論的には可能」を実行する者たち

アイドルファンの中には、そこそこ無謀な日程でも「理論的には可能」と分かれば、どうにか実行に移そうとする人が存在します。
私が経験した例を挙げるならば、2024年5月12日、大阪で上演された舞台「恋と呼ぶには気持ち悪い」大千秋楽公演(12時30分開演、公演時間2時間強)の後、東京で開催された「乃木坂46 山下美月 卒業コンサート」(18時開演)をハシゴした回があります。
私の推しメンである柴田柚菜さん(乃木坂46)の初主演舞台の大千秋楽を見逃すわけにはいかない、と大阪まで遠征。同日に山下美月さん(当時:乃木坂46)の卒業コンサートの開催が発表された時には「もしかして、柚菜ちゃんの出演はないのか?」とも考えましたが、一部の出演が判明したこともあり時刻表や各種地図アプリなどとにらめっこ。「理論的には可能」と判明したのでそれを実行に移すことにしました。
多少無理をした部分もありましたが、舞台は最後のカーテンコールも見届けることができましたし、卒業コンサートはOvertureを逃す程度でほぼ全編を現地で見ることができました。もちろん後悔などあろうはずがありません。

しかし、これはあくまで「理論的には可能」と分かったからこそ実行できた話です。
当然ですが「理論的には可能」でないものは実行できません。

「三色推し」の苦悩の始まり

通称「坂道シリーズ」と呼ばれるグループは 乃木坂46、櫻坂46、日向坂46の計3つ存在しています。
私のように、乃木坂46だけでなく櫻坂46、日向坂46の3グループを同じ、あるいは極めて近い熱量で応援している人も一定数います。私が通称「三色推し」と呼ぶ方々です。
無論、世の中には「単推しこそ至高!」という考え方もありますので、その方からすればまあまあ不純な人種かもしれませんが、そこは一旦考えないものとしましょう。各グループごとの魅力があります。それに惹かれてしまった以上は仕方ありません。

2025年に入り、この3グループでスケジュールが重複する事案が急激に増えてきました。
例えば2025年1月25日、久保史緒里さん(乃木坂46)が出演するラジオ番組のスピンオフイベント「乃木坂46のオールナイトニッポン presents 久保史緒里の青春文化祭」(横浜アリーナにて開催、16時30分開演)と、「日向坂46 東村芽依 卒業セレモニー」(幕張メッセ イベントホールにて開催、17時開演)がスケジュール上重複しました。
また、2025年2月22日・23日の2日間、「乃木坂46 与田祐希 卒業コンサート」(みずほPayPayドーム福岡にて開催、22日は18時開演、23日は17時開演)と、日向坂46 4期生が出演するテレビ番組のスピンオフイベント「日向坂ミュージックパレードLIVE」(武蔵野の森総合スポーツプラザにて開催、22日・23日夜公演は18時30分開演、23日昼公演は12時30分開演)がスケジュール上重複しました。
そして今後、2025年4月6日には「日向坂46 6回目のひな誕祭 / 佐々木久美卒業セレモニー」(横浜スタジアムにて開催、16時30分開演)と「乃木坂46 6期生 初披露の会「はじめまして、6期生です!」」(ぴあアリーナMMにて開催、17時開演)が重複しています。
また、2025年5月17日・18日の2日間、「乃木坂46 13th YEAR BIRTHDAY LIVE」(味の素スタジアムにて開催、17時30分開演)と「櫻坂46 全国ツアー2025 広島公演」(広島グリーンアリーナにて開催、17時30分開演)が重複します。

過去を遡ればこのような事例は他にもいくつか存在するとは思いますが、ここ最近は同日開催のイベントに両方参加することが「理論的には可能」と言えない事態が多発する状況となってきました。

この各グループですが、運営会社は厳密に言うと別です。乃木坂46は乃木坂46合同会社が運営しており、櫻坂46と日向坂46はSeed & Flower合同会社が運営しています。しかし、この2つの合同会社はともに代表者は同じ、そして大元を辿ればソニーミュージックにたどり着きますので、事実上同じ運営会社という考え方もできます。
実際、先述した事例を見ると、2025年1月25日、2025年2月22日・23日、2025年4月6日はいずれも乃木坂46と日向坂46、2025年5月17日・18日はいずれも乃木坂46と櫻坂46で重複が発生しました。しかし、櫻坂46と日向坂46での致命的な重複は今のところ発生していません。一度2024年12月4日に「櫻坂46 10th Single / 上村莉菜・齋藤冬優花卒業セレモニー」(幕張メッセ イベントホールにて開催、18時30分開演)と「日向坂46 Happy Magical Tour 2024」福岡公演(マリンメッセ福岡A館にて開催、18時開演)が重複したことがありますが、日向坂46は濱岸ひよりさん(当時:日向坂46)の卒業セレモニーを翌5日に設定していたことを踏まえると、少なくとも卒業生の最後の出演に影響するといった事態は避けるべく調整が行われている印象です。
つまり狭義で捉えた同一の運営会社であればスケジュールが調整されている、ということです。
ただ、このスケジュール調整は、広義で捉えた同一の運営会社内では実施されていないのが実情です。

特に2025年2月の乃木坂46と日向坂46での重複、2025年4月の乃木坂46と日向坂46での重複は慣例を踏まえれば避けることができた重複でもあります。
2月22日がデビュー記念日である乃木坂46は、一部例外を除き毎年2月22日近辺に「BIRTHDAY LIVE」を開催してきました。今回は「BIRTHDAY LIVE」ではありませんでしたが、この時期に乃木坂46が何らかのイベント・ライブを実施する可能性は十分考慮できたはずです。
逆に3月27日をデビュー記念日とする日向坂46は、開催場所が横浜スタジアムで恒例化して以来、原則として3月末もしくは4月初頭に「ひな誕祭」を開催してきました(プロ野球の前年成績により変動するはずだが過去の実績としてはすべて4月初頭)。今年も例年に倣って(勿論当たり前ではないことを念頭に置いた上で)4月初頭の土日に「ひな誕祭」は開催されます。これも予測できた開催日程です。
しかし、それでも重複は発生しました。

「重複」は"相互に"ネガティブを生む

私は業界関係者ではありませんので背景事情を考察するのには限界があります。勿論その背景事情をすべて把握することはできませんので、この考察は机上の空論かもしれません。ただ、これほど重複するイベント日程が多発する事態は憂慮すべきと考えています。

如実にその結果が現れるのが現地チケットの販売状況です。
今回、収容人数約10,000人の武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京・調布市)で開催された「日向坂ミュージックパレードLIVE」は、開催当日まで現地チケットの一般販売が継続する状況となりました。日向坂46の中でも4期生11名と一部の先輩メンバーの出演に留まり、全メンバーが出演するイベントではないという点は少々特殊ではありますが、東京ドームで2days公演を開催するアーティストで10,000人規模のイベントチケットが完売しないのは、ある意味"異常"とも思えます。まして東京ドーム2daysは両日ともに年末の平日だったのに対して、今回は3連休でした。これを考慮すると本来のポテンシャルを考えれば10,000人規模の会場は早い段階で完売すると見込まれるものですが、そうはいきませんでした。

「日向坂ミュージックパレードLIVE」と重複した「乃木坂46 与田祐希 卒業コンサート」は、みずほPayPayドーム福岡(福岡中央区)で開催されることもあり、人口分布を考えればかなりの人数が"遠征"することになりますので地理的条件で不利に働いたはずです。
そして、「乃木坂46 与田祐希 卒業コンサート」と「日向坂ミュージックパレードLIVE」はほぼ同じタイミングで開催が発表されました。そのため、参加するファン側にはどちらに足を運ぶかを選ぶ猶予期間も設けられてはいました。
「三色推し」の皆さんの選択理由は様々あったと思います。もちろん、一言に「三色推し」と言っても各グループへの熱量が一定でない方もいますから、その場合は熱量の高いグループのイベントに参加すると思います。ただ、個人の感触としては「メンバーの卒業の舞台には立ち会いたい」と考える人が大多数を占めると思います。
これ以外にも理由はゼロとは言いませんが、「日向坂ミュージックパレードLIVE」のチケット販売状況がこのような結果になった背景として、「三色推しの多くの人が卒業の舞台を選んだ」というのは大きいと思います。

これは"相互に"ネガティブな結果を生んでいます。
ファンからすれば、日程と予算さえ許せば参加したいと考えていたイベントへの参加機会を失ってしまいました。
私の場合、2025年2月の重複では「乃木坂46 与田祐希 卒業コンサート」への参加を選択しました。2024年5月から放送が始まった「日向坂ミュージックパレード」の集大成を飾るイベントでもある「日向坂ミュージックパレードLIVE」を現地で見たいという思いは最後までありましたが、やはり8年半もの期間活躍した与田祐希さん(当時:乃木坂46)の卒業の舞台を見たいという考えからです。
そして2025年4月の重複では「日向坂46 6回目のひな誕祭」への参加を選択しました。キャプテンである佐々木久美さん(日向坂46)の卒業セレモニーもありますし、やはりデビュー記念日を祝うイベントは外せません。その一方で、これから乃木坂46をともに作る6期生の"始まり"を目撃したい、という思いもまた確かです。
それぞれのイベントには、開催されるだけの"意味"を持ちます。それを少なからず理解しているからこそ、日程の重複によって参加できなくなるというのは忸怩たる思いが生まれる所以です。

そして運営側にとってもポジティブ要素ではありません。
先述の通り、決断を迫られた三色推しはどちらを選択するにせよ分散します。それぞれの日に対して1イベントに集中すればその分集客力を維持できます。
実際のところ「三色推し」と呼ぶに値するファン層がどれほど存在するかは統計がありませんので判然としません。「三色推し」はファン全体のごく数%あるかないか、かもしれません。ですからこの考えは前提から問題がある可能性もあります。
ただ、「多くのファンに会場に来てほしい」(欲が前に出る言い方をすれば「集客したい」)という考えがあるのであれば、ファン層を分析して集客力が削がれる要因を取り除くものです。ここの検討にどうも不足があるように思えてなりません。

「理論的には可能です」と言わない世界へ

そもそもですが、冒頭に書いた通り「理論的には可能」なことを実行するのは、一種の"ミッション・インポッシブル"に挑む、ということです。本来は「理論的には可能です」と言わなくても満足できる"推し活"ができるのが望ましい姿ではあります。
とりわけ今回の「乃木坂46 与田祐希 卒業コンサート」と「日向坂ミュージックパレードLIVE」では、配信ライブが定着して以降恒例となった”リピート配信”まで日程が重複することとなりました。まだ日程が明らかにはなっていませんが、今後重複が確定しているイベントも配信がある場合にはリピート配信の日程まで重複するおそれもあります。

時間は有限です。イベントを開催するとなれば会場の制約もありますし、グループ主催の仕事以外にもメンバーは多くの仕事を抱え、それを日々こなしています。その制約をすべてクリアしてスケジュールの重複を避けることは難しいかもしれません。
ただ、それぞれのグループの魅力に惹かれ、それぞれのグループを同じように応援している「三色推し」の人たちが、一般に想像されるよりは多めに存在しています。だからこそ「坂道シリーズ」として緩やかに繋がり、各々が独自の魅力を持つ3グループが、その成果を遺憾なく発揮できる環境が形成されることが望ましいのは言うまでもありません。

最近では「見たかったんだけどこれと被っていけなかったんだよね…」と悔いを語る場面も増えてきました。自分の選ばなかった選択肢を選んだ方の話を聞いて羨むことも増えました。
ただ「三色推し」の者たちは互いにこの悔いを増やしながら"推し活"を進めている、この現状をどうしても打破したいのです。
いつか「理論的には可能です」と言わずとも「このイベントも行けたんだよ」「あの瞬間に立ち会えたんだよ」と何年経っても語ることのできる場面が増えていくことを願うばかりです。

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