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ビジネスの現場で知っておきたい「バイアス」とは

㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。

「人生を彩る居場所をつくる」を企業理念とし、
起業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。

今日はデータを扱ったり評価をする立場にあるリーダー・管理職の方に向けた記事を書きます。
皆さんは何かを判断する時、また部下やスタッフを評価する時、どのような基準を持っていますか?
特に評価に関しては、公平になるように、客観的なものであるように、最新の注意を払っているかと思います。

しかしどれだけ気を付けていても、私たちはどうしても評価や判断が偏ってしまっているということをご存じでしょうか。
今日はその認知の偏り(バイアス)について解説するとともに、判断・評価の場面で偏らないようにするための具体的な方法もお伝えしていきたいと思います。

その“判断”、本当に合っていますか?

先日、ディスカッションの中でクレーム対応について話し合う時間があったのですが
その時にあるマネジャーの方がこんな風におっしゃいました。
(そのグループでは飲食店などでお客様のお洋服を汚してしまった際の対応について話し合っていました)

「まぁ服についた汚れは、クリーニングに出せば100%落ちるから…」

果たしてそれは本当なのでしょうか。
なぜ、本当に“汚れが落ちる”と言い切れるのでしょうか。

身近なところで言うと
「この作業レベルだとパートさんはこなせないだろうから…」
というのもよく聞かれますね。

このように、判断・評価の場面で知らず知らずのうちに行ってしまう考えのことをバイアスと呼びます。
バイアス(bias)は日本語で、「偏り」「偏見」「先入観」などの意味がある言葉です。

私たちの脳は、何かしらの「判断」をする際に、必ずしも時間をかけて情報を処理するわけではありません。
一つひとつの出来事すべてに膨大な情報処理をかけてしまえば、脳は疲れてしまいます。
その際に「省エネ」的に行われるのが、これまでの経験などに照らして「もっともらしい結論」を出そうとする作業です。
これはいわば「脳の癖」ですが、この癖によって認知バイアスが引き起こされます。
認知バイアスは脳の特性上、生じるものであるため、簡単に修正することはできません。

引用:セゾンの暮らし大研究

どれだけ気を付けていても脳の特性上バイアスは起こってしまうということをまずは知っておくことが必要です。

日常のあらゆる場面でバイアスは起こってしまうのですが、次の章からはビジネスの場面でよく起こるバイアスについて解説していきたいと思います。

ビジネスシーンでよくあるバイアス

①認知バイアス


これまでの経験から形成される先入観や、直感などにより生じるバイアスのことをさします。
以前noteでも記事にした「育成が得意だからこそ陥る“育成”の落とし穴」でも取り上げたのがこの認知バイアスです。

↓詳しくはコチラ↓

認知バイアスの例:

・あの部下は繊細なところがあるから、ずっと接客の仕事をさせていると疲れてしまうだろう
・メールアドレスに彼氏彼女の名前が入っている人は高確率で飛ぶ(無責任な辞め方をする)だろう
・彼は不器用なタイプだから、この仕事は任せられない

経験を積めば積むほど、勤続年数が長くなればなるほどこのバイアスに囚われやすくなるので注意が必要です。

②確証バイアス

確証バイアスとは、自分に都合のいい情報ばかり集めてしまう現象です。
人は、仮説が正しいかどうかを判断するとき、それを否定する情報ではなく、確証する情報に着目し、それを重視する傾向があります。

ちなみに冒頭の「クリーニングに出せば汚れは100%落ちる」という話があった時、
マネジャーさんに「なぜそう思うのですか?」と聞いてみました。
するとその方は
「対応した人の話を聞いたらみんな(汚れが)落ちてたから」と答えました。
これが確証バイアスです。
汚れが落ちなかった人も中にはいたはずです。

③アンコンシャスバイアス

これは最近よく取り上げられているバイアスです。
聞いたことがある、という方もいらっしゃるかもしれません。
無意識のうちに抱えている先入観や偏見を、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏り)」と呼びます。

皆さんはこんな風に思ったことがある、言っている人を見たことがある、なんてことありませんか?

・40歳を過ぎて独身の人は何かワケがある
・A型は几帳面、B型は自己中だ
・難しい仕事はパートさんにはできない
・女性は数字に弱い
・(男女で飲食をしていて)一人だけアルコールを頼んでいたら男性側に置いてしまう

アンコンシャスバイアスの有名な例としてアメリカのオーケストラ団員のオーディションがあります。

かつてオーケストラの女性奏者の割合は5~10%程度だったそうですが、応募者の性別が分からないよう、審査員と奏者の間にスクリーンを置いて誰か分からないようにするブラインド(目隠し)オーディションを取り入れた結果、女性の合格者が数倍に跳ね上がったというお話です。
女性比率は40%ほどになったそうです。

審査員の中にも知らず知らずのうちにバイアスがかかっていたのですね。

判断の偏りをなくすために

前述したようにバイアスは私たちの脳の構造上、どうしても起こってしまうものです。
ですがビジネスにおいては、出来るだけ偏った判断や評価をなくしていかなければなりません。
そのための具体的な方法をいくつかご紹介します。

①バイアスについて知る

何よりも大切なのはまず「知る」ことです!
バイアスそのものが問題なのではなく、無自覚にバイアスが働いてしまっていることが問題なのです。
ご紹介した3つのバイアスの他にもまだまだバイアスは存在します。
研修の実施や本を読む、事例検討を行うなどして、私たちにはどのようなバイアスがあるのかを知ることが最初の一歩です。

②周囲から意見をもらう

特に組織計画や経営計画を立てる時に必要です。
「あのスタッフはこういうタイプだから…」
と思っているのはあなただけかもしれません。

「Aさんをこんな風に育成していこうと思うんだけど、どう思う?」
「こういう新商品を出せば今の客層に受けると思うんだけど、どうかな?」
など、是非多くの人たちから意見を貰うことを心がけてみてください。

③公正で公平な人事評価制度をつくる

人事評価はどうしても考課者の主観が入ってしまうものです。
数値化できるものは出来るだけ数値化し、成果と連動することでバイアスがかかることをある程度防ぐことができます。
“評価制度”というと大きな企業だけのお話かと思ってしまいそうですが、個人でやっているお店(飲食店など)にも関係あるお話です。

つい“長く勤めてくれているから…”
“土日よく入ってくれるから…”
といったぼんやりした理由で時給を決めてしまいがちになりますが
長く、とは何年以上のことを指すのか、そもそも勤続年数で時給を決めてよいのか、
よく入る、とは具体的に月何日のことをさすのか明確にしておくことで、バイアス対策だけでなく従業員のモチベーションアップにもつながります。

まとめ~時に呪いになるバイアス

さて、今回はビジネスの場面でよくあるバイアスとその対処方法についてお伝えしました。
バイアスはその存在を知っておくことが何よりも大切だというお話をさせて頂きましたが、私もこのバイアスによってとても辛い思いをしました。

飲食店で責任者として働いていたころのことです。
当時は自分の在籍しているお店だけでなく、近隣店舗の責任者の休み回しとして数店舗の責任者をしていました。

営業時間も店舗によって様々で、長い店だと朝11時~夜3時まで。
自分の勤務時間が12時~21時となっていても、前後の時間帯に欠員が出れば自分が早出や残業をして対応していました。

欠員は当日の責任者が被るもの。そう思っていました。

本当はそうではありませんでした。
やむを得ずそうなることもありますが、基本は代わりの人を探すなり探してもらうなりして代役を立てて、自分は定時に上がることができます。
が、その時の自分は
「何かあったら責任者が被るものだ」と思って全部引き受けてしまっていました。

そうこうして疲れがだいぶたまってしまっていたある日、朝一番に上司から電話がかかってきました。
今日、出勤予定のA店で水漏れが発生し、階下のテナントを水浸しにしてしまっているので急いで名刺を持ってテナントとデベロッパーに謝りに行ってくれ。俺はB店(隣の店)で営業があるから行けない、と。

A店は自分が店長でもなければ、そもそも所属店舗でもありません。

今の自分なら5000%断ります。
私がB店に行くので、A店の店長が到着するまでは上司がデベロッパーに謝りに行ってください。と今なら言えます。
でもその時は全くそんな考えが及びませんでした。
責任者なんだから、対応して当然。そのために名刺が用意されてるんだから。
自分に対してまるで呪いのようにそう思っていました。

そもそも労働契約はどうなっているのか?
評価・格付制度上どこまで責任を負っているのか?
あの時そこまで考えることができれば、あんな辛い思いしなくて済んだのに…と思うんです。

〇〇なんだから、こうあるべきだ
という考えにもし縛られてしまっているとしたら、一度立ち止まって考えてみて欲しい。
それって本当にそうなの?って。
周りの人とも意見交換してみてくださいね。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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