やってられません!帰ります!…さぁどうしよう?
こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。
「人生を彩る居場所をつくる」を理念とし、
企業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。
今日も頂いたご相談に回答していく記事にしたいと思います。
今回はサービス業の現場でパートさんを束ねるマネジャーさんからのご相談です。
ちょっと衝撃的な内容ですが、案外よくあるケースでもあります。
みなさんはこういう時、どのように対応しますか?
今回は「キレて突然帰る」ことについて
働くルール上の観点と、私の考えとをお伝えしたいと思います。
「帰る!」と言っているスタッフは帰らせていいの?
まず、「働く上でのルール(労働法など)」の観点からお話すると、
仮に上司に全ての非があったとしても、パートさんは帰るべきではありません。
なぜなら労働者(パートさん)は雇用契約により労働を提供する義務が発生しているからです。
雇用契約(労働契約)とは、
「労働者が使用者に使用されて労働を提供し、使用者が労働者に賃金を支払う」
ことを不可欠とする契約です。
つまり、労働者には労働義務、使用者には賃金支払義務が法的義務として発生します。
働いたのに、今月は社長の機嫌が悪いので給料払いません!なんてありえないですよね。
労働を放棄して勝手に帰るということはそれと同じです。
ちなみに、就業規則や雇用契約書に記載がなくても、
雇用契約の締結によって付随して発生する権利義務というものがあります。
(※今回の記事では労働者の義務についてのみ記述します。)
これを読んでいただくと「キレて勝手に帰る」が全く許されるものではないことは分かっていただけたかなと思います。
これが働くルール上の解釈になります。
で、ここからは私の考えですが、
もし私がこのマネジャーなら、パートさんは帰らせます。
引き止めたりとどまらせたりすることはしません。
それが職場のためだと思うからです。
次の章では、その理由を詳しく述べていきます。
とどまらせてはいけない理由
①全体のパフォーマンスが下がる
まず一つ目の理由として、職場全体のパフォーマンスが下がるからです。
どの職種でも共通ですが、サービス業なら尚更です。
パートさんが感情的になり、声を荒げたり物に当たったりしている状況で、他の従業員が最高のパフォーマンスで接客が出来るとは思いません。
本来であれば100%気持ちがお客様に向かなければいけないところ、どこかそのパートさんのことが気になってしまって細やかなサービスに気が付けなかった、なんてことがあれば
個人としては小さくとも職場全体となると大きなパフォーマンスダウンにつながります。
私は飲食の出身なので特に飲食店に行くとよく分かるのですが、
従業員が同じスピード感で仕事をしていても、緊張感の高いお店かそうでないか(良い緊張感のあるお店か)は従業員の所作にモロ出ます。
緊張感の高いお店は、表情に覇気がないのはもちろんのこと、
従業員の動きは早くてもどこかせわしない空気を感じます。
一言で言うと動きにリズムがない感じ(すごい抽象的な表現ですみません)。
何かに引っ張られるように歩いている、右往左往する回数が多いような雰囲気があります。
これはお客様以外の「何か」を気にして行動していることの現れではないかと思っています。
一方、良い緊張感の中で連携良く働いているお店は従業員の動きにリズムがあります。
“せかせか”ではなく“キビキビ”とした歩き方、
従業員同士が連携よく席を片付けている、
動きの無駄も少ない印象です。
(もちろん日々のOJTも大切ですが)
「お客様」の動きの流れに全員が乗れている証拠だと思います。
このように、お客様以外の別のものに従業員が気を取られることで全体のパフォーマンスが大きく低下します。
そうなるくらいなら、一人が欠けてしまっても少ない人数で流れに乗れている方がよっぽど健全であると、私は考えます。
②離職の防止
二つ目は離職の防止です。
当たり前ですがベテランのパートさんと店長の仲が悪い職場は
新人の離職率がべらぼうに高いです。
「自分もあんな風に怒られたら嫌だな…」とか
「店長に教えられたことと違う…どうしよう」とか
考えながら仕事しているだけで気が滅入りますよね。
ただでさえ新人さんは慣れないことばかりで気持ちが疲れているのに、
ということを忘れてはいけません。
作業能力だけで言うと、新人さん2人を働かせるよりベテランパートさん1人の方が瞬間的にこなせる仕事の量は多いということもあるかもしれません。
ただし、それは瞬間的に、という話です。
新人さんが入っては辞め、入っては辞め、という状態が何年も続くことが果たしてお客様のためになっているかどうか、という視点で考えると分かると思います。
ある一定の作業までは正しく教えれば誰でも出来るようになります。
③甘えを生まない
3つ目、これが一番大切かもしれません。
甘えを生まないためです。
時々、何かにつけて「退職」をチラつかせる人がいますが、それと似ているところがあるかもしれません。
マネジャーとしては辞められては困るから、
話を熱心に聴き、不快要素を全て綺麗に取り除いてあげて、機嫌よく働いてもらう。
だけど、また何かあるとその人は「退職」をチラつかせて、不快要素を取り除いてもらう。
ミルクが欲しくて泣いてる赤ちゃんとその母親、のような構図です。
退職をチラつかせれば自分の要求を聞いてもらえる、ということを学ぶと、
「私は今、こういうことで困っているから、こんな風に改善してくれませんか?」
という大人の交流が取れなくなってしまうのです。
話を戻すと、
「帰る!」と言ったパートさんをマネジャーが引き止めたとします。
どのように引き止めるかにもよりますが、もしその時に自分の要求を聞いてもらったとしましょう。
そうすると次また何かあると「帰る!」のカードが切られる可能性が高いですし、もしかするとすでに引き止められるのを待っているかもしれません。
「目の前の仕事やお客様に集中できない人は働けません」という態度を示す意味でも、帰って頂いた方が得策ではないかと私は思います。
まとめ~親しき中にも礼儀あり
さて、今回の記事では「帰る!」と言っているスタッフの対応について、
前半はルールの観点、そして後半は私の考えを書かせていただきました。
職場で感情的なコミュニケーションを取ることは緊張感の欠如です。
新人さんがいきなり「意味わかんない!帰る!」なんて言わないですよね。
長い勤続年数の中で、これくらいなら言っても許されるだろう、分かってもらえるだろうという気持ちが出てきているのかもしれませんが、それはベテランだろうが何だろうがそれは甘えに他なりません。
お店と従業員というのは雇用契約を結んでいる関係で、正しく労務を提供出来なければ契約の解除もあり得る、という「親しき中にも礼儀あり」の姿勢を大切にしたいところです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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