進撃の巨人はなぜ面白いのか
進撃の巨人は、普段アニメや漫画を見ない人々からも受け入れられ、熱狂的な支持を得た。かくいう私もその一人である。ところが、自分の調査不足かもしれないが、なぜ面白いのかを考察している人が、意外と少ない。
一般的なアニメや漫画と比較してこの作品の特殊性を考察するような事は出来ないが、自分がなぜ強く惹かれたのかをまとめたい。
この作品の大まかな構造は、自分の生きる世界が壁で囲われ、壁の外側に理解不能な脅威(巨人)がおり、そのような状況に疑問を持つことがタブーとされる、という3つで成り立っている。主人公の母親が巨人に殺された事は、自分の自由を奪う脅威の理不尽さを強烈に突きつけることで、物語を動かす彼の動機をより明確にした。
私の直感では、面白い物語というのは、その物語の構造と、自分の抱えている問題の構造が抽象的なレベルで一致している。この世界に抽象的な意味でのむかつく「壁」があって、その壁の向こう側に行こうとすれば正体不明の敵がわんさかいて、自分の周りの人々は壁の中で生きることに慣れてしまっている。この際、壁はなんでもいい。社会の格差や、差別・偏見、制度や掟のようなもの。自分が生まれる前から当たり前のように存在している壁もある。そして壁を維持していたい人々もいる。
その壁の外側に出たやつを自動攻撃する脅威の正体は、馬鹿になった人間達だった。
その人間たちを駆逐して壁の外側に行っても、実はもっと巨大な壁で自分たちが囲われていることを知る。
そんな構造と命がけで戦う登場人物たちの物語に、自分は夢中になっていたのだと理解している。