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072 組織づくりはメンバーに興味・関心を持つことから始まる
チームビルディング3つの要素
組織づくり(チームビルディングとも言う)とは、集団を一つの方向に進ませる手法である
その要素は「共通目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」(組織成立の三要素)
この3つの要素がバランスよく機能すれば、バラバラな集団も組織化(チーム化)する
と言うと「よし分かった!まずは共通目的づくりからだ!」と経営理念か何か成果物を作ろうとする人がいる
でも、こういう発想ではうまくいかない
論理的に組み立てる思考法(線形思考ともいう)はものづくりには有効だけど、人や組織はお互いがお互いを強化し合う「自己強化」でできている
このことを踏まえた思考をしなきゃうまくいかない
もし「共通目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」のうちどれか一つを最初に行うとしたら「まずコミュニケーション」しかない
その中から共通目的や貢献意欲を見つけていく作業そのものが「組織づくり」そのものだ
チームの3者相互作用
コミュニケーションの中から共通目的を見つけ、
共通目的が見つかることで貢献意欲が湧き、
貢献意欲がさらにコミュニケーションを促進する
組織づくりは時間がかかる
ご存知のとおり人や組織は急には変わらない
長い時間をかけて徐々に変化する
生物を有機体と呼ぶこともあるけど、人はまさしく有機体だし、組織もまた有機的である
有機的とは、多くの部分から成り立ちながらも、各部分の間に密接な関連や統一があり全体としてうまくまとまっているさまを言う
これが組織の特徴だ
という話をすると、中小企業の社長から次のように言われることがある
そんな悠長なことやってられない
俺の命令どおりに、すぐ働く社員が欲しい
中小企業あるあるだね
こういう在り方が働き手のやる気を削ぎ、定着率を悪化させ、経営を悪化させていることに気づかなきゃならないけど、なかなかそううまくはいかない
社長と社員、お互いの「非対称な洞察の錯覚」という認知バイアスが相互作用を阻害するからだ
非対称な洞察の錯覚とは何か?
非対称な洞察の錯覚とは「私はあなたのことよく知っているけど、あなたは私のことを知らないでしょ」という思い込みのことである
もちろん現実は違う
ほとんどの社長は、部下の興味・関心、価値観、能力、性格をほとんど分かっていないし、普段何に悩んで、何に苦労して、将来どうなりたいのかも分かっていない
逆もしかり、部下も社長のことはよく分かっていない
まあ、お互い様である
でも、かたや権限のある人、かたや権限の無い人
上位者が、相手を分かって気で命令を下し、下位者は「どうせ俺のことなんて分かってくれないだろう、あんたはそういう奴だ」と諦め、命令をダラダラと従うことになる
こういう関係を続けていると、いつまでも組織づくりにはならない
誰もが一生懸命生きている
人は誰しも一生懸命生きている
当たり前の話だよね
ところが大人になると、この当たり前がだんだん見えなくなってくる
へたしたら一生懸命生きているのは自分だけで、他の奴らはみんな適当に生きているに違いない、などと思う人もいる
もちろんそんなことはない
人間誰にも欲はある
できれば長生きしたいし、裕福になりたいし、幸せになりたいし、みんなから感謝もされたい
何とかなるなら自己実現もしたい
それが普通の人の欲求だ
でも、人間性は環境との相互作用でもあるので、長い間、おかしな環境に身を置いていたら、そんな欲望はどこかにすっ飛んでしまう
もしかしたら、これが組織の一番の課題かもしれない
組織づくりはトップが「良い組織づくりに着手する」とコミットするところから始まる
私も含め、人材系のコンサルタントは「仕事は人材育成と組織開発です」という言い方をする
これに対して、この仕事をよく知らない人は「なぜ人材育成と組織開発を並べて表現するのか?」と疑問に感じるようだ
その答えを言えば、もうすでに何度も言ったとおり、人材と組織は相互作用だからである
どちらか片方だけで成り立たないから、2つを並べて書くんだよね
その相互作用の起点は「まずコミュニケーション」と先ほど書いたけど、実はその前にやらなきゃならないことがある
トップが「心を入れ替えて良い組織づくりに着手する」とメンバーに対してコミットすること
そのうえで組織メンバー一人一人に興味・関心を持つこと
この2つの条件が揃って、部下とのコミュニケーションができるようになる
対等な関係がコミュニケーションの条件ってことだ