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「スタートアップ業界は挑戦が肯定される場所」若手世代に伝えたいスタートアップと起業のリアル【TORYUMON FUKUOKA 2024 IGNITEイベントレポート】

「起業家にとって大切なのは、“失敗から逃げずに向き合うこと”」—— そう語るのは証券会社からグリー、メルカリを経て、今年1月にnewmoを創業した青柳さん。

11月9日、福岡と東京を拠点にするシードVC・F Venturesは、九州のU25世代を対象に「TORYUMON FUKUOKA 2024 IGNITE」を開催しました。

青柳さん、BASE代表の鶴岡さんというスタートアップ業界を牽引するお二人にご登壇いただき、起業ストーリーから起業家が持つべきマインドセット、仲間集めの秘けつまで、赤裸々に語っていただきました。

同日に登壇した、F Venturesの卒業生をはじめとする起業家から若手世代へのメッセージとあわせて、トークセッションの模様をお届けします。

特別ゲスト
・青柳直樹氏 newmo株式会社 代表取締役CEO
・鶴岡裕太氏 BASE株式会社 代表取締役CEO
モデレーター
・鈴木聡子氏 フォースタートアップス株式会社 専門役員/CommunicationDesignOfficer

学生起業と、40代での起業。「スタートアップ業界には他者の挑戦を応援するカルチャーがある」

鈴木:起業家の青柳さん、鶴岡さんに「スタートアップと起業のリアル」をテーマにお話を伺います。まずは、お二人の起業の背景から教えていただけますか?

鶴岡:私がBASEを創業したのは、学生だった22歳のとき。大学を休学し、当時憧れていた起業家・家入一真さんが代表を務めるCAMPFIREで、エンジニアインターン生として働いていたことがきっかけでした。

家入さんにインターネット業界のことを教えてもらいながら、プログラミングスキルを磨くうちに「自分でもWebサービスをつくれるかもしれない」と考えるようになって。

そんなとき、小売店を営んでいた私の母から「インターネットで商品を売りたい」と相談されたんです。ネットの知識がない母でさえ、「時代はインターネット」と考えている姿を見て、ネットショップを簡単に開設したいというニーズが高まると思いました。

最初は趣味で、Eコマースプラットフォーム「BASE」の開発を進めていたところ、軌道に乗り始めたので、正式にプロダクトリリース。リリース後には予想を大きく上回る反響をいただき、周囲の投資家からの後押しも受け、起業という道を選びました。

鈴木:もともと起業に興味があったのでしょうか?

鶴岡:まったく考えていませんでした。大学3年生までは、サイバーエージェントに入社することに憧れていたくらいです。

ただ、のちにサイバーエージェントがBASEへ出資してくださるという、学生時代に想像もしていなかった展開となりました。

鈴木:起業家として夢のような話ですね...! 青柳さんの起業ストーリーも教えてください。

青柳:新卒で入社した証券会社、26歳のときにジョインしたグリー、そして前職のメルカリなど濃い社会人経験を経て、44歳で起業する決断に至りました。

実はメルカリ入社前からライドシェア事業に興味はあったのですが、当時は時代の波がきておらず...。

2023年に政界でライドシェア解禁を推す動きが出てきたとき、「これは自分がやるしかない」という気持ちが湧き上がってきました。

メルカリでの日々がとても充実していたので、退職をためらう気持ちもありました。しかし、50歳、60歳と年を重ねたときに後悔する自分を想像したくない。そう考えて退職を決意し、仲間たちに快く背中を押してもらって起業に至っています。

メルカリをはじめ、スタートアップ業界ならではの「挑戦を肯定するカルチャー」は、若手起業家を後押ししてくれる素晴らしい習慣だと感じています。

起業家も“等身大の人間”。挑戦へのハードルを下げてみて

鈴木:起業は前向きな挑戦であると同時に、大きな不安が伴うものだと思います。成功を掴むためにはどのようなマインドセットやスキルが必要でしょうか?

鶴岡:良質なコミュニティに身を置くことが重要だと考えています。尊敬する起業家・投資家が「一人が成功するコミュニティは全員が成功する」とおっしゃっていて。そのくらい周囲の環境は私たちに大きな影響を与えます。

推進力がある起業家が周囲にいる環境だと、自然と「自分もできるかも」と、挑戦に対するハードルが下がると思うんです。同じ志を持つ仲間とつながり、互いに刺激し合うことは自分を大きく成長させます。

また最近は、起業したいのにできない理由はほとんどないと思っています。私が起業した12年前より制度や支援が整っていて、ロールモデルとなる存在も増えているので。

青柳:資金調達を取り巻く環境も含め、私も起業しやすい時代になったと思っています。起業を志すのであれば、まず行動に移してみるのが良いのではないでしょうか。ただし挑戦する際、心に留めておいてほしいのが「失敗から逃げずに向き合うこと」です。

昨今は「失敗=挑戦の結果」として、失敗がプラスに捉えられる時代になりました。一方、失敗したとき仲間や応援してくれた人に不義理をはたらいてしまうと、次のチャンスが巡ってきにくくなってしまいます。

たとえ事業が順調に進まなかったとしても、投資家や関係者に対し、誠実な姿勢で向き合い続ける。苦しいときこそ、応援してくれる人と真摯に向き合うことを大切にしてください。

鶴岡:あとは起業家になるハードルを上げすぎないことも重要だと思います。起業家というとソフトバンクの孫さんのような突出した存在をイメージしがちですよね。

でも実際は、起業家も私たちと同じ人間です。私も起業した頃は、青柳さんを雲の上の人だと思っていましたが、実際に話してみるとただの良いお兄さんでした(笑)。

鈴木:憧れ過ぎないことは、自分にもできるという自信につながりそうですね。

仲間集めは「プロポーズ」のようなもの。泥臭く、行動し続けることで人が集まってくる

鈴木:ここからは会場にいるU25世代の参加者からの質問にお答えいただこうと思います。

Q1:自分が逃げずにやり切れる領域を探すにはどうすれば良いでしょうか?お二人が自分を知るために実践していることがあれば教えてください。

鶴岡:自分一人で、自分のことを知るのは難しいと思います。なので私の場合、家入さんというロールモデルを見つけ、彼が見ている未来を信じて行動し続ける。その中で、新たな気づきを得たり、自分の価値観を形成したりしてきました。

青柳:私も周囲の人との対話は、自分を知るための良い方法だと思います。特に納得できない意見にぶつかったとき、その理由を分析すると自分の本心を見つけやすいですよ。

Q2:大学4年生です。事業を始めるための組織づくりに課題を感じています。お二人は熱い思いを持った仲間をどのように集めているのでしょうか?

鶴岡:学生起業だったので、気持ちはよくわかります。私はとにかく泥臭く行動しました。SNSでBASEに関する投稿をしているユーザーに片っ端からDMを送り、リアルで会って仲間になってほしい想いをぶつけていました。

自分の事業に参加してもらうということは、相手の人生を背負うのと同じことです。大企業の経営者であっても、どうしてもジョインしてほしい人には、「プロポーズ」するくらいの熱量で気持ちを伝えていると思います。

青柳:私もnewmoの起業を決意してから設立までの3ヶ月間で、100人以上の方々と面談しました。その中で出資を申し出てくださった方、事業をサポートすると言ってくださった方は20人程度です。

今回のTORYUMONのようなイベントは、同じような志を持つ人とつながるチャンス。一人でも多くの人と話して、仲間を見つけてほしいと思います。

鈴木:「経営者の仕事の8割は、採用」と言われるほど、人を集めることは大変です。一流の起業家の青柳さんでさえ、100人中20人という確率ですからね。

自分を鍛える意味でも、断られることを恐れずに、いろいろな人と話すことが大切です。

「まずは打席に立つこと」スタートアップを志すU25世代に伝えたいメッセージ

鈴木:最後に、これからスタートアップの世界に挑戦しようと考えるU25世代へ、メッセージをお願いします。

鶴岡:起業は誰にでも開かれた可能性です。社会には解決すべき課題があふれているので、まずは打席に立ってみてください。スタートアップの世界には、挑戦者を称えるカルチャーがあります。挑戦することに価値があるんです。

失敗を恐れず、まずは行動を起こしてみましょう。「より良い社会をつくる」という空気がスタートアップ業界の若手を中心に広がり、日本全体の活性化につながることを願っています。

青柳:まず若手の皆さんに伝えたいのが、20年を超える社会人生活の中で、起業した今が最も充実しているということです。やりたいことに人生を捧げると、大変なことも多くありますが、それ以上の楽しさを実感できます。

起業という道に進みたい人がいれば、ためらうことなく挑戦してください。困難に直面しても、逃げずに誠実に向き合えば、必ず道は開けます。

一方、起業はあくまで選択肢の一つです。やりたい事業があるからといって必ずしも全員が起業家になる必要はありません。ただ、スタートアップにはぜひ飛び込んでほしいと思います。事業や組織をゼロからつくることには、大企業にはないおもしろさがあるからです。

また、やりたいことが見つからない方は、目標となる人を見つけ、その人の背中を追いかけてみてください。

スタートアップの世界には皆さんのロールモデルとなる人がたくさんいます。やりたいことが見つかったら、難しく考え過ぎず「私にもできる」とチャレンジしてほしいと思います。皆さんの挑戦を応援しています!

F Ventures卒業生をはじめとする起業家から、若手世代へのメッセージ

今回のTORYUMONには、F Venturesの卒業生である起業家や、F Venturesの投資先で福岡を拠点とする起業家も登壇。学生や若手世代に向けて、起業のヒントを実体験をもとに語りました。最後に、彼らから若手世代に向けたメッセージを紹介し、記事を締めくくります。

FLICKSHOT FZCO Managing Partner 福海 道登氏 

自分が後悔した経験から、特に大学生のみなさんには同じ大学にいる優秀な人たちと仲良くなっておくことをオススメします。卒業後、学生時代の友人がさまざまな領域で活躍する人材になったとき、横のつながりを活かせるからです。興味がある領域以外で活躍している学生とも仲良くなって、ぜひ将来の仕事やキャリアに役立ててほしいと思います。

株式会社PoliPoli 代表取締役CEO 伊藤 和真氏

若手の皆さんには、挑戦したいことがあったら、ためらうことなく行動してほしいと伝えたいです。特に学生の方々が、起業やビジネスに挑戦するリスクはほぼゼロに等しいと思います。行動して0を1にすること自体、とても尊いことです。まずはSNSで「こんな事業をやってみたい!」と発信するなど小さな一歩でも構いません。皆さんのチャレンジを応援しています。

81RAVENS PTE. LTD. 代表取締役CEO 吉村 信平氏

私が伝えられるのは、たとえ東大や早慶などの一流大学を卒業していなくても、世界で活躍する起業家になれるということです。私自身は高卒で、シンガポールに移住して起業する中で、日本の大学を卒業しておけばよかったと感じたことは一度もありません。学歴にとらわれることなく、広い視野を持ってチャレンジしてほしいと思います。

株式会社クアンド 代表取締役CEO 下岡 純一郎氏

一度就職してから起業したキャリアを振り返ると、学生や若いうちに起業しておけばよかったと感じます。年齢を重ねると体力が落ちたり、家庭を持つことで失敗しにくくなったりして、挑戦するハードルが高くなるからです。最近は学生起業や若いうちにスタートアップを経験することも当たり前の時代になりました。もし迷っている方がいれば、積極的にチャレンジしてみてください。

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