Web3の到来:新しい組織形態『DAO』のトレンドとは
2022年1月16日、ブロックチェーンが紡ぐ新しいWebの世界「Web3」
を福岡にて開催しました。前半ではWeb3の概要についてFracton Venturesより解説、後半では今話題のWeb3起業家ら4名を迎え、パネルディスカッションを開催しました。この記事では、後半のパネルディスカッションの内容をお伝えしたいと思います。
暗号資産市場における分散型流動性供給システム「Choja」やNFTデジタルメディアプロトコル「VWBL」の開発をする合同会社暗号屋 代表社員 紫竹佑騎氏。日本初のERC20自家型前払式支払手段として日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を発行、販売するJPYC株式会社 CEO 岡部典孝氏。Web3の未来を支援者ではなく貢献者として共創していく専門家集団Fracton Ventures Co-Founder 鈴木 雄大氏、亀井 聡彦氏をお呼びして『Web3』界隈をざっくばらんに語っていただきました。モデレーターはFracton Ventures Co-Founder亀井 聡彦氏が務めています。
Web3とブロックチェーンの関係性
亀井:はじめに、Web3とブロックチェーンの関係性ってなんですか?
紫竹:
一番端的に説明すると、トラストレスという考えが一番大きいと思っています。第三者を介さずにブロックチェーン上のスマートコントラクトと言われる自動販売機みたいなもの(その通りに操作したらその通りにしか動かないもの)がソースコードで全部公開された状態で、それを実行できる状態になっていますね。
鈴木:
所有権みたいな概念はすごく変わっていきましたね。サービスを利用するという考えからそれを持っているという概念に変わっていって、NFTが面白いのはそこにあると思っています。デジタルアートを売ったり買ったりすること自体はイノベーションの可能性はなかったんですけど、NFTを所有することでオーナーシップをとれるのがすごく強いなと思っています。だからこそオーナーが集まったオーナーズクラブみたいなコミュニティはネットワークなどの強みがあり、かなり強いと思いますね。
紫竹:
それもかなり重要ですね。もう一つはサービス自体を持てることですね。サービスの一部としてトークンを所有することができる。秘密鍵を持っているのをベースにちゃんとトークンを所有していることが色濃く出ているインターネットだと思ってください。
今注目のWeb3プロジェクト
亀井:
今注目のプロジェクトやすでに注目のプロジェクトに参画しているものはありますか?
紫竹:
今流行りはCurveじゃないですか?CurveはステーブルコインのDEXと言われているんですが、実はそれよりもう少し深くて、要は安定化するためにいろんな人が投票してフェアな状態を保つためのDAOがあるんですが、それは今話題になっていますね。
岡部:
うちもステーブルコインなのでCurveに関してはめちゃくちゃ注目していて、後はGameFiなども出てきているので(YGGなど)ゲームでギルドで稼ぐプロダクトなども出てきていてそこにお金が今流れているので超急成長していて面白いですね。
鈴木:
フラミンゴDAOというのがあって、可愛いフラミンゴのアイコンとは裏腹に高額なNFTをグループで買い集めていくアートコレクター集団みたいなDAOがあるんですよ。つまりDAOってなんのためにあるのかを考える時に事例を見ると面白くて、いろんな目的のひとたちがそれぞれのベクトルで1個の集まりのなかでアセットを増やしていくみたいな、そういうDAOです。
Web3でのマネタイズ方法
亀井:
マネタイズの方法はどうしていますか?
岡部:
マネタイズの定義がただお金を集めることなのか会計上の利益を得ることなのかで全然違ってきます。
マネタイズが仮に手元にお金が入ってくることだとするとWeb3はお金が入ってくるのが早いんですよ。反面利益が出るかどうかというのは正直まだわからないところもあります。
例えばJPYCだと会社を作って最初エクイティで調達しました。その後ぐらいにJPYCを売り出したんですよね。会社を設立して1年ちょっとでJPYCを発行しました。そうするとプリペイドカードを売っているような感じなので売った分だけお金が入ってくるんですね。今4.5億円くらい発行してるんですが、4.5億円発行すると4.5億円手元に入ってくるんですよね。これがめちゃくちゃ早いんですよ。一方プリペイドカードなので商品に変えてくださいと言われたら、うちからお金が出ていく感じで2.5億円くらい出て行っているのかな?だからマネタイズは割と早い気がします。プロジェクトによると思うんですけど。
紫竹:
利益としてはどうですか?
岡部:
利益としてはひたすら借金なんですよ。プリペイドを売っているんで、これがB/S上の負債に乗っかるんですよね。利益が出るのと税金を払うのはもうちょっと先で、国にお金が入るのももうちょっと先になると思います。
亀井:
ちなみにマネタイズの視点で、紫竹さんとかエンジニア視点でDAOとかに貢献してお金が稼げることをどう思いますか?
紫竹:
DAOでの開発に携わると、そのタスクをクローズするといくら報酬をあげる、ということが決まっています。理想のオープンソースで、DAOに参加するエンジニアは一番報酬の得方がやりやすいんじゃないかなとも思います。ただ、その辺まだ固まってなかったりするので、既にあるのかもしれないですけど、グループウェアっぽいものができてきたりとかするんだろうな、とも思っています。
開発者として入ってくる分にはそういう稼ぎ方もあると思いますし、本当にいろんな稼ぎ方が増えたと思います。口約束で手伝ってくれたらトークンあげるからみたいな、そういうところに乗っかれたりすると創業メンバーくらいの規模でトークンがもらえるんじゃいかなとも思います。トークンに価値がつくまでは電子屑なんて全然お金にはならないと思うんですけど、DAOプロジェクト自体が稼ぐというところに向けてしっかり動けているのであれば、最終的に電子屑にはならないんじゃないかなと思います。
岡部:
ちょっと補足すると、電子屑なんて誰がもらいたいんだと思うかもしれないですけど、これって実は無料でオプションをもらったのと同じ感じなんですよ。もらった段階で所得税もとられないような電子屑をもらうんですよね。そうすると普通なら現金もらったら税金で半分持ってかれたりするんですけど、電子屑であれば電子屑に税金かからないので後から電子屑の価格が上がった時に売ってその利益の中から払えばいいという有利さがありますね。
DAOプロジェクトのベストプラクティス
紫竹:
DAOプロジェクトのベストプラクティスは何ですか?
鈴木:
だいたいトークンって発行枚数をインセンティブで配っていくとなった時点で上限枚数があります。DAOは稼げないといずれ絶対に終着点があって出せるトークンが0になるという未来です。そうするとDAOはプロトコルとして収益を上げなければいけません。ここからどこで収益をあげるかというポイントがあって、例えばさっきのCurveだったらCurveプロトコルの収益っていうのはそのステーブルコインとステーブルコインを交換するところにfeeがのっていて、そのfeeをCurveのプロトコルがDAOとして一旦全部吸収します。Curveに関してはこれをCurveのトークンの保有者に分配するという設計になるわけですけど、そういうお金が流れるところでfeeを取っていくというのが原則モデルになっています。ただ、これも取り方とかによっては「そもそもCurveをフォークしてfeeが0みたいなものを作られるとみんな人ってそっちにいっちゃわない?」とか結局インセンティブの設定と流動性のバランスですごく決まってきて需要がある状態を維持しつづけて、かつそれでfeeを取れないと、サステナビリティがない難しいバランスの設計になると思います。
紫竹:
超絶バランスですよね、DAOっていうのは。だから完全な正解がまだないということですね。
亀井:
そうですね。DAOって昔から概念はありましたけど実際こんなに話題になるのはここ数ヶ月ですし、僕らも創業の1月のタイミングで「We can DAO it.」とか言ってましたけど実際こんな早く来るとは思ってなかったんですよね。なので、まだ過渡期なのでいろんな実験できるところがいいところかなとも思います。
今後スタートアップ投資の変化
亀井:
今後スタートアップ投資はどう変わっていきますか?
鈴木:
まず経営者の状況からお話できたらと思うんですけど、経営者自体は外部株主はいないので、創業者だけで、資金調達もしていない形になっています。そもそも投資を受ける対象とかの考え方でいうとFracrton自体は受けていません。じゃあ我々の支援先ではどうですかと言われると、一番多いのは海外の法人でSAFTと言われるSimple Agrement for Future Tokenの略なんですけど、将来のトークンに対する事前販売権みたいな形でのトークンのプライベートラウンドを行う形での資金調達がこの領域では一般的かなと思ってます。
鈴木:
ただ、岡部さんのところしかりですけど、エクイティ株式型で調達できるモデルも当然存在しています。ちょっと意外な話かもしれませんけど、多分ビットコイン系の開発は、エクイティファイナンスが実はすごく多くて、トークンを出すということはほぼないと聞いてます。
ところがイーサリアム系とか、他の新興チェーン系はほぼ全部トークンファイナンスになってるかなと今見ています。ただ唯一そうじゃないファイナンスをしてないような会社もいたりとか、何かその辺結構いろいろみんな模索してるっていう感じかなと思ってます。なんか岡部さんのところもなぜこうエクイティファイナンスになってきてるかなとかお話いただければ。
岡部:
うちはステーブルコインのプロジェクトなんですね。しかもプリペイドなのでかなりトークンの中でも特殊で、要はトークンの価格の上昇を狙っていくような性質ではないんですよ。
なので先にトークンあげるから今のうちに働いてよ、なんてのもほとんど効果がない。クオカードとほとんど変わらないので、クオカードもらっても働いてくれないじゃないですか。なので、エクイティを渡してあとは上場を目指すことによってストックオプションの権利みたいなものでインセンティブ付けての方が合理的であるというのが1つ。それから、みんなトークンに張ってるから、ちょっとここは逆をいきたいという想いもあります。このプランであればエクイティでいけるし日本でもいける、と思っています。
亀井:
紫竹さんはその辺どう見られてるんですか?
紫竹:
うち、合同会社LLCであえてやってるんですよね。株式会社という形をとらないのは、クリプトの会社なのに、エクイティで調達してしまっていいのか、という毛嫌いからスタートしてるんです。DAOになっていくと、ステークホルダーがちゃんと同じ目標に向かって進んでくれるという関係が作れるので、株式を持たせてしまうと既存のエクイティの考え方を持ち込まれたときに非常にやりづらくなるんじゃないかなっていう懸念がありました。だから、将来的にトークンを発行したときにはそれを社員に配ったりだとか、エクイティの代わりになるような形で何かできたらいいなとは思ってます。
鈴木:
Fracton自体も、会社を作るときにすごく議論していて、クリプトの会社でWeb3に張ると言っているのに「株式会社?合同会社?むしろそれ以外とかないの?」と思い、宗教法人とかも考えたりしました。ただ、宗教法人Fracton Venturesやばいので(笑)でも、その時にあらゆる可能性を考えた結果、DAOに適した会社形態があまりないなという結論にいたっていて、やむを得ず株式会社になってるっていう理解をしています。日進月歩でDAOに適した会社形態が出てくるといいなと思っています。
日本でDAOをやる方法
亀井:
今の鈴木の話に近いんですけど、日本でDAOをやる方法はありますか?
岡部:
DAOをやる方法はいくつかあって、まず1つは法人格を持たないという方法。任意団体を使う方法があります。例えば、踊りが好きな人が踊りの会を作るとします。踊ったら踊りトークンもらえるよみたいなものです。あとは組合という方法がありますね。いろんな組合があるんですが、中小企業組合でもいいし、民法の組合でもいい。あとは、紫竹さんみたいな合同会社でやるという方法もあって、合同会社だと499人までメンバーを入れられるという性質を使います。また、ちょっと変わったとこだと、法人格のない労働組合です。何か労働問題を解決するDAOであれば、労働組合にするなどですね。
要は、憲法上認められている権利を使って組成した方が潰されにくい。労働組合のほか、宗教法人などDAOを信じる人の集まりみたいなビークルとか。政治団体もありますよね。憲法上認められている権利を使って、結社の自由を盾に我々はこのDAOを作るんだと言って作る。そういったもの王道でいろいろ方法あります。税金等でメリットデメリットもあります。基本的には何でも作ろうと思ったら作れるんですが、前例がないから教科書を見てその通りにやれば作れるわけじゃないという難しさがあります。
亀井:
なるほど。他の2人どうですか、紫竹さんはいかがでしょう。
紫竹:
日本国内でトークンを発行し、価値が付いてしまったときの、その仮想通貨として見られたときの決算時の含み益課税問題はでかいですよね。
岡部:
その解決策が株式会社を避けることなんですよね。企業会計原則というのが適用されてしまうと、期末に時価評価される。政治団体もそうですし、労働組合もそうですし、あえて株式会社じゃない形をとるのはそういった背景がありますね。
鈴木:
期末含み益課税問題を解説すると、法人が仮想通貨を持っていて期末を迎えた際に、仮想通貨を持っているとそのときの持っている仮想通貨の含み益、つまり、仮想通貨の未実現利益に対して課税されるっていうものがあります。その条件が非常にふわっとした言葉で書かれているんです。頻繁に取引される市場がある、という文言で、非常に定義が難しい。結論としては、法人だと日本で仮想通貨を持っているときのデメリットの方が大きくなってしまうという話が一般原則としてあり、岡部さんはそれに対して法人の組織形態を変えることで、その問題は一旦クリアできるだろうと話をして頂いていたということですよね。
岡部:
はい。ちょっと上級者向けですね。でもめちゃくちゃ大事です。
紫竹:
やっぱりトークンファイナンスしなきゃいけないとなったときに、税制が国によって違うが、日本の税制でクリプトをやるにはかなり遅れをとります。クリプトに優しい国ランキングがあるんですが、思いっきり日本は最下位で一番やりづらい国だとも言えますね。
岡部:
逆に日本でクリプトできたらほぼ世界でやっていけるんじゃないっていう気もしますけどね。
亀井:
Fractonとしても支援先が今後Web3で起業したいとかWeb3プロトコルをやりたいという人に対しては、本当にトークン発行してグローバルでやってく気があるなら、海外法人をおすすめします。一方で、でも日本でやりたいとか、やっぱ日本の環境を変えたいってモチベーションある方もいらっしゃるので、そこはそこでちゃんと存在意義があってチャレンジしていかないといけないのかなと思ったりもしてます。
鈴木:
結構思うんですけど、皆さんトークンを出すことが目的化しすぎちゃってて「別にそれ本当にトークンじゃなきゃ駄目?」みたいな話を結構真剣に考えた方がいいなと思ってて、なんかトレンディだからトークンをだすって、一周回ってダサイと思ってるんですよ。そういう意味で言うと、それNFTじゃ駄目なんだっけとか、それトークンじゃなくて本当に他の方法で借り入れとかしたらできるもんじゃないんだっけとか、何のためにトークンを出すのかなっていうところをもう1回考えなきゃいけない。
現状のDAOのトレンド
亀井:
今のDAOのトレンドはなんですか?
岡部:
そうですね。DAO特区はすごい熱いなと思っていて、世界でもワイオミング州でDAO法案のような動き、あるいはクリプト好きな首長が出てきています。エルサルバドルが代表例で大統領がビットコインを買おうと言ってるわけですよね。そんな感じでDAO好きが集まった、そういう自治体とかトップとか国とかってのは多分そのうちできるんだろうなと思っていて、日本でできるかどうかは別にして結構熱い分野だと思ってます。そういうところにDAO好きが集まってイノベーションを起こしまくってたら、世界も認めるんじゃないかなと思っています。
鈴木:
DAOのトレンドっていう話でいうと、DAOが複雑化してるっていうのが1個のトレンドだと思っています。DAOのトークンの仕掛けとか仕組みとか、そのトークンがまた別のトークンに寄与してみたいな、つまりすごい複雑な奥深くにまた違うトークンが出てくるみたいな設計がすごく多くなってて、なんかこの複雑さがトレンドというよりはそうなっちゃってるっていう感じですけど、今のDAOの現状かなというふうに思ってます。
岡部:
DAOですごく単純なものであったら、規制に弱いっていうのもあるんですよね。例えばAというトークンを発行してます。それでおしまいだったらそのAっていうトークンを発行してるやつを潰せみたくなるわけじゃないすか、、だから弱点になるわけです。つまり、単一障害点にならないように巧妙化してるっていう部分と勝手にパーミッションレスで作れるからどんどん上書きされて進化していくっていう、フォークして進化するみたいな混ざり合わせで複雑化する。一方ですね、誰がついてこれるんだろうみたいな状態になってきてます。
鈴木:
あと、トークンのAirdropとかもそれですよね。なんかその結局AirdropするトークンてAirdropして儲かったみたいな人がTwitterとかみると、、
紫竹:
一応、Airdropを一般の人向けに解説したほうがいいかなと思うんですが、Airdropって何でしたっけ?
鈴木:
Airdropは例えると、空中投下みたいな意味で、突然空からトークンがウォレットにポンッて降ってくるようなイメージ。ユーザーからすると、嬉しいですよね。いつの間にか、550トークンとか入ってくるんですよ。普通に考えたら価値ゼロなわけなんですけど、それが巡り巡って、これ10万円かもみたいなことが起きちゃったりする。なんだこれアルバイトするより全然いいぞみたいな。
結局誰かがずっとトークン持ってるとその人のトークンだよねってなるから、貢献の報酬としてトークンを活用してプロジェクト自体が発展するDAOにしたいと思い始めるわけですよ。
そのときに、一つの方法として「トークン配っちゃうぞ!」と言って、過去使ってくれたサービスプロトコル使ってくれた人にばらまくわけですね。つまり、その人たちに感謝の気持ちを込めてばら撒きながら、かつ、その人たちがもう1回そのトークンを受け取って再度ユーザーとして戻ってきて、コミュニティに貢献してくれるとことを狙う。これによって急速にトークンを持ってる人の分布がバーッと世界中に広がることを促す現象です。これもすごくトレンドの1個かなと思いますね。
岡部:
そうなんです。実は、仮想通貨交換業って日本でも元々成立していて、今は暗号資産交換業というんですが、ライセンスがないと売ったり、交換したり、それを仲介したり媒介したり他人の仮想通貨を預かったりしちゃいけないんです。逆に言うと、無料で配っちゃいけないとは誰も言ってなくて、それもあってAirdropっていうのは一応OKとされていてみんなやってるという状態です。逆に言うと、それをもらおうとする人ももらえるかもと思って、とりあえず新しいDAOっぽいのが出てきたらとりあえず触るぞという状態ですね。
紫竹:
あと受け取り拒否できないですからね。基本的に公開鍵ってアドレスは公開されている状態でそこに向かって送られたらもう受け取るしかない。
岡部:
一応、詐欺には気をつけましょうね。たまにAirdropを利用して詐欺るやつもいるんです。
鈴木:
最近多いですからね。ちょっとふざけた感じのトークンのAirdropすごく多くなってて、数万円程度ぐらいの価値だから売っちゃおうとか思うと、実はそれをきっかけに、そのウォレットのトークン抜かれちゃいましたみたいな話とかあったんですよね。
実は、自分でMetaMaskで受け取りについて署名しちゃってるものもあるんですけど、普通に使ってる人はちょっと気をつけてほしいなと思ってます。
亀井:
トレンドをもう1つとしたら、さっきから出ているDAOについてのサービスツールとか、まだDAOが発展途上なので課題だらけですし、クリプト全体で言うとUI/UXが結構置いてけぼりになっていて、ユーザー層が増えれば増えるほどその辺が顕著になってくると思っていてそういうところに対する課題、解決のサービスが出てくるかなと思っています。
トークンを発行しないDAO
亀井:
トークンを発行しないDAOは存在することができますか?
結構本質的な話なのかもしれないけど。
岡部:
全然できると思います。元々サンタクロースとかトークン発行してないし、盆踊りだってトークン発行してないですよね。ちゃんと続けばいいんですよ。サステナブルに続いていれば十分DAO化してると言えると思います。
紫竹:
うん。例えばデスノートってプロトコルなんですけど、キラってDAOなんです。第1のキラ、第2のキラ、とどんどん増えていって、キラを崇拝する人たちが集まってキラっていう存在は1人ではなくなっていく。あれはDAOだなと思っていました。今もそんな感じでイノベーターとかいうDAOになるんだと思うんですよ。みんなイノベーションを起こそうと思ってるんだけど、特にやりとりしてないみたいな。そういう世界観はトークンなくてもあり得ます。
鈴木:
私は実はそこで言うと、それはDAOなのかって思ってる側の人間で、グループなのでは?ってただ思っていて、DAOである私の個人的な定義はさらにそこに、やっぱり資産管理が紐づいてるんだと思ってるんです。DAOのウォレットにトークンがあるというのは結構大事で、それを管理しているまでをセットにしないと、単なるグループとDAOの境目が見えづらくなっちゃうんじゃないかなと個人的に思ってます。
紫竹:
確かに、トレジャリーウォレットがあって、その入出金管理がオープンになっていて、フェアにちゃんと働いた人にお金がいってるのが見える状態がちゃんとしたDAOだと思います。
よくWeb2.5みたいなのも最近、表現としてたまに使う人が出てきましたけどそれに近いのかなとは思います。
DAOの成功要因
亀井:
DAOの成功要因はなんですか?
DAOの定義次第ですけど、その一つにコミュニティがあるんじゃないかとか、他の視点は何かありますか?
鈴木:
私1個あるんですけど、余白だと思ってます。余白ってWeb2では絶対なかった考え方だと思うんですよ。サービスに何かありえないことを望む人たちをちょっと吸収してあげる余白がある。LootというRPGスタイルの冒険アイテムが8000個入っている「bag」(“bag”には、冒険者が必要とする8つの胸、手袋、靴、頭、腰、ネックレス、指輪、武器の装備が含まれる)からなるNFTプロジェクトで、ゲームに使えるパラメータだけを配るみたいなものが出たんですけど、結局そのNFTをどう使うかを任されているので、その余白のおかげでめちゃめちゃいいアイデアが出るわけですよ。ゲームに使えるんじゃないか、ストーリー作れるんじゃないかって。Web3は余白がないと人を巻き込めないっていうポイントだと思いますね。
Web3を一番感じる方法
亀井:
なるほど、なるほど。
Web3を一番感じる方法は何ですか?
紫竹:
仮想通貨を持ってみる、それでなくしたりしてみるとか。
だから、管理者がいないんだっていうのがすごくわかるんですよね。やべ、ちょっと管理者に連絡して取り戻そうができないのがWeb3だと思います。ちょっとドキッとすると思うんですけどね。
岡部:
入り口で言うとFractonさんも支援されてるHiÐΞっていうブログみたいなのがあってそれを書くと仮想通貨が降ってくる、あるいはJPYCが降ってくるみたいなやつがあって、それだと結構元手もかからずにWeb3を感じられやすいかなと思ったりはしますね。
亀井:
テレビでもいろんなCM出てて、割と僕の親世代も仮想通貨とか、言葉は知ってて、なんなら口座を作ってみて、日本円で買ってみたりするんですけど、そこってまだWeb2なんですよね。取引所にお金がある時点でそれを銀行から自分の財布に持ってくるようなことがWeb3なので、MetaMaskアカウントを作り、仮想通貨をウォレットに入れるところまでやると一番感じられると思います。
鈴木:
あとMetaMaskとかで言えばテストネットとか、本番環境じゃない環境でも触れます。DeFiに行ってガス代が高いと考えるんだったらテストで1回触ってみるのもありだと思います。
利率は全然違うんですけどすごい実感できると思います。このトランザクションみたいなボタンを押したらこうなっちゃうんだみたいな。1回やってみるっていうのは流れを追う上では非常に大事だなと思います。
本当のリアルなお金じゃなくて、テストのお金でできるので、テストネット版は1ETHでも2ETHでもいくらでももらえるのでぜひ触ってください。
未成年がクリプトを入手する方法
亀井:
未成年は取引所にアカウントを作れないようなのですが、未成年がクリプトを入手するにはどうすればよいでしょうか?
岡部:
これ絶対うち用の質問ですよね(笑)
一応JPYCという便利なものがありまして銀行口座から振込みすると、MetaMask等のウォレットアドレスさえ持ってれば、すぐ振り込んでもらえます。JPYCになってからどうするかは皆さんで考えてください。
エクイティファイナンスとトークンファイナンスの相性
亀井:
ちょっと投資まわりの話で、エクイティファイナンスをするとトークンでの調達ができない。また、その逆があるのはどういう仕組みでしょうか?
鈴木:
仕組み上、できないってことはない、というのがまず結論かなと思います。ただ事例がほとんどないのも事実。問題はエクイティファイナンスとトークンファイナンスはゴールが全然違うことです。
特にトークンファイナンスの場合はお金を集めたいのではなくて、DAOになりたいからトークンの価値を見いだしてくれる人を集めてるという感じ。エクイティファイナンスの場合は、その会社自体が売上を上げて大きくしていくというのも一つミッションなはずなので、そこのゴールが一致しないから両方やるチームがいないんだろうなっていう感じはしてます。ただ、一部海外のチームとかで、時系列的にあまりトークンのセールとかなかった時期にエクイティで調達して、その後トークン出した事例もあるはあるので、そういう会社どうなるのかなは非常に個人的にも興味がありますね。
あとは、相性が良くないというのは正直思っているところです。
岡部:
実は私、前の会社でトークンとエクイティ両方を出したんですけど、やっぱり監査法人が付きにくいとか証券会社が受けてもらいにくいとかですね。IPO側は結構きつくなります。トークンを出すと出口がSPACとか特殊なケースを除けば、IPOじゃなくなる可能性が高い。だからIPOした後にトークンを出すのはいいけど、IPO前にトークンを出すのはやめた方がいいといろんな人に言われましたね。IPOした会社がトークンを出した事例はいくつかあります。
鈴木:
あと、IPOしても厳しそうだなと思うのは、まだトークンありきの会計基準が整っていないので、監査法人の話もそうですが、従来のエクイティネイティブな領域の方が困るという感じですかね。前例がないことをやってるので、なんだこれみたいになってるという理解です。
Web3におけるExitの定義
亀井:
Fat Protocolsという考えがある中で、プロトコル開発以外で大きなExitを狙える領域はどこになると思いますか。
岡部:
やはりステーブルコインですよね。実際に集まってるし、海外だとUSDCとかが去年の段階でSPACで5,000億円ぐらいの価値が付いていたりとかするので、大きなExitもできているっていう事例で、やっぱりステーブルコインは本当にキーになるところ。本当に大事な領域だと思って我々は信じてやってます。
鈴木:
その場合って、USDCはEXITでSPACを利用するということは、ナスダックとかに上がるわけじゃないですか。彼らはどうしていきたいんですか。つまり何を目的に上場するんだろうと思ってるんですが。
岡部:
いわゆるステーブルコインの場合は、信頼というのがすごく大事なんですよね。会社が潰れちゃったらステーブルコインって価格がかなり下がってみんな困っちゃうと。だから潰れないような体制、IPOに耐えうる体制を作ることも必要だし、あとはちゃんと会計をタイムリーに開示するとかですね。そういう部分も含めて、ステーブルコインはIPOとの相性が比較的いいんだと思うので特殊ですね。トークンWeb3系の中でステーブルコインだけ特殊だと思ってます。
亀井:
他に何かEXITの事例とかあります?最近の事例とかの紹介でもいいんですけど。
鈴木:
Web3においてやっぱりEXITを求めちゃいけないと思うんですよ。終わりという概念が、誰かが決定できるから決められるものであって、コミュニティが例えばDAOをクローズしますと言えば、おそらく唯一のEXITじゃないかと思うんですよね。
だから、そのときに自分がトークンをたまたま持っていて、DAOが大きくなったときに資産価値の上がったトークンを売るのは、個人としてみたらExitだと思うから、それは別にやりたい人はそういうふうになればいいと思うんですけど、何かWeb3でExitってやっぱ合わない。
紫竹:
MakerDAOが少し失敗してたけど、その運営がみんないなくなりますっていうのはExitに近いのかなと。
亀井:
DAO化みたいなのが、Web3におけるExitですよね。
紫竹:
完全に自分たちの手離れを起こした組織になる。その瞬間が、本当の意味でのExitっぽいものなのかなと思っています。
DAOの収益配分の原資の源泉
亀井:
DAOの収益配分の原資ってどこから来ているのですか、という質問が来ています。
岡部:
これも結局、DAOによって真ん中のミドルマンがいなくなりました。今まではそういう人たちの高い人件費が払われてたんだけど、それがゼロになる。これによって置き換えが効いたときのコスト優位性が源泉になるんですが、例えば銀行で言うと、預金者の金利が上がる、あるいは借りる人の金利が下がるといった形で原資にもなります。また、それの一部が収益のDAOへの分配の源泉にもなるということです。結局何かを効率化して、その浮いた分しか源泉はないはずなんで、それはやっぱりDAOによって中抜きができたいうことが源泉なんだと思ってますね。
亀井:
うん。なるほど。他の皆さんはどうですか?
紫竹:
例えば、さっきも出たCurveだったらCurveでステーブルコインのスワップがあったときに、その手数料をいくらか取られている。それが原資になってDAOの運営費に使っています、ネットワーク維持に使っていますよっていう、そういう建て付けだと思うので、そこは便利だし甘んじて払うべきだと思っています。それが原資となってちゃんと配分されているCurveトークンとなってもらえてるっていうことだと思うので、プロトコル自体に収益ポイントは必ずあるように設計をしなきゃいけないとこだと思ってます。
岡部:
多分収益ポイントがありつつ、今までより安くないと意味がないんだと思うんですよね。ミドルマンより何かコストがかかってる〇〇DAOとかそういうのはあまり意味がないんだと思うので。今までコストが多分にかかっていたようなところを、自動化して楽になるということを、みんなでやらないといけないですね。
鈴木:
同じです。ちなみに私1個思ってて、まあDAOにっていうかクリプト分野に来るお金がそもそも原資だと思うわけですよ。それさかのぼってどっから来てんだろうと思うと私は資本市場の金余りだと思ってて、結局投資するアセットがなくて処分しようと滞留してるお金がクリプトに儲かりそうだからって言ってボンと流れ始め、流れたお金がそんなプロトコルにどんどん流れていき、結果プロトコルはDAOにトレジャリーに入っていくってそんな循環なんじゃないかなと思います。
岡部:
そうですね。ちょっと補足すると金利差がやっぱり出てくるんですよ。さっきの中抜きがないっていうとこと繋がってることによって、やっぱりコントラクトやプログラムのリスクとかあるんだけどそれでもDAOの方が条件が良いことが多くて、そうすると条件が悪い今までの世界から条件の良いこれからの世界に、徐々に流れ始めていてこれがもう止まらなそうだなっていうのがしばらく続いてますね。
Web3関係の方はサウナが好き
亀井:
最後1個質問、絶対これ聞いておきたいなっていうのがあったので聞きます。どうしてWeb3関係の方はサウナが好きなんですか?
紫竹:
たまたまじゃないですか(笑)
岡部:
生存者バイアスだと思っているんですよ。サウナに入ってない人から倒れて退場していくっていう。サウナに入ってる人だけが生き残るってもうそれで多分、生存者バイアスだと思ってますねこれは。
鈴木:
僕はサウナ入らない側なんで、敗者になっちゃうんで、サウナに入ってから生存者だっていいきろうと思っています。