【日本語訳】オーストラリアによる中国の南シナ海領有権否定の宣言

N°20/026


オーストラリア連邦の国連代表部は、国連事務総長に敬意を表するとともに、次の口上書、2019年12月12日付「No. CML/14/2019」、2020年3月23日付「No. CML/11/2020」、2020年4月17日付「No. CML/42/2020」、2020年6月2日付「No. CML/46/2020」、2020年6月18日付「No. CML/48/2020」、および2019年12月12日付でマレーシアが大陸棚限界委員会に提出した「HA 59/19」に関する2020年6月9日付の中国の国連代表部から事務総長宛の国連提出書簡の付属文書を参照しつつ、オーストラリア連邦の立場を表明する光栄を有する。

オーストラリア政府は、1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に適合しない中国の主張、特に基線、海域、および地形の分類に関する規則に準拠していない海洋に関する主張を拒否する。

オーストラリアは、南シナ海における長年の歴史的慣習で確立された「歴史的権利」または「海洋上の権利および利益」に対する中国の主張を拒否する。 2016年の南シナ海仲裁判断において仲裁廷は、これらの主張はUNCLOSと矛盾しており、その矛盾の範囲では無効であると認定した。

中国が南シナ海の「四沙」もしくは「沿岸上」または「遠洋上」の群島を含む海洋地形または「群島部」の最も外側の点同士を繋ぐ直線的な基線を引く法的根拠はない。オーストラリアは、そうした直線基線に基づいた内水、領海、排他的経済水域、および大陸棚に対するいかなる主張も拒否する。オーストラリア政府は、国家は特定の状況下でのみ直線基線を引けることに留意する。 原則として、UNCLOSの第7条第1項は、「海岸線が著しく曲折されている場所、または海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所の場合に、直線基線を採用できる」と規定している。さらに、UNCLOSの第47条第1項は、第46条で定義されているように、群島の直線基線の使用を群島国に限定している。これらの要件を満たしていない場合、国家は島を含めて、第5条に従って通常の基線を引かなければならない。

オーストラリアはまた、海中の地形または低潮高地によって、UNCLOSに適合しない方法で作り出された海域に対する中国の主張を拒否する。土地造成活動またはその他の方式による人工的な変化は、UNCLOSに基づく地形の分類を変更できない。 UNCLOSに基づけば、海洋の地形が自然状態の地形を超えた海洋上の権利を生み出す法的根拠はない。この点で、オーストラリア政府は、人工的に変形された地形がUNCLOSの第121条第1項に基づく島としての地位を取得できるとは認めない。さらに、UNCLOSの第60条第8項は、人工島は「島としての地位を有していない」と規定している。人工島に固有の領海はなく、それらの存在は、領海、排他的経済水域、または大陸棚の境界画定に影響を与えない。

オーストラリア政府は、中国によるパラセル諸島とスプラトリー諸島に対する主権の主張が「国際社会によって広く認識されている」(ベトナム(「No. 22 / HC-2020」、「No. 24 / HC-2020」、「No. 25 / HC-2020」)およびフィリピン(「No. 000192-2020」)のこの点に関する抗議に言及しながら)という主張を受け入れない。オーストラリア政府はまた、低潮高地が国家の領土の一部を形成していないという前提の下、低潮高地に対して「継続的かつ効果的に」主権を行使するという中国の主張に関して強い懸念を表明することを望む。

オーストラリア政府はまた、仲裁判断に拘束されないという中国の主張にも異議を唱える。仲裁判断が中国に拘束力を持たない理由の説明として中国が提唱した理論的根拠は、国際法によって支持されない。 UNCLOSの第296条および附属文書VIIの第11条に従い、仲裁廷の決定は最終的であり、紛争の両当事者を拘束する。

オーストラリア政府は、中国を含む南シナ海のすべての当事者に、国際法特にUNCLOSに従って、海洋に関する主張を明確にし、その違いを平和的に解決することを求める。

オーストラリア政府は、上述の3つの口上書において中国から為された主張のその他の点に関して従来とは反対の立場を採る。

オーストラリア連邦の国連代表部は、本口上書を国連事務総長が国連海洋法条約の締約国および国連加盟国に回付するよう要請する光栄を有する。

オーストラリア連邦の国連代表部は、以上を申し進めるに際し、重ねて国連事務総長に敬意を表する。

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