永遠の理想の親を求めて

深海に親や家族という身近な人間に落とされながら
浮かぶ方法も知らずにいる人たち。
彼らは渇望する。
「永遠の理想の父」を。
「永遠の理想の母」を。
きちんと実感した「父」や「母」ではなく
渇望するのは、ただぼんやりとした
”無制限に庇ってくれるもの”や
”どこまでも守ってくれるもの”のイメージ。
いくら甘えても
いくら無理を言っても聞いてくれるぼやけた絶対者。
年齢を重ねれば重ねるほど
実際の父や母は「人間」になり
絶対的な存在ではなくなる。
それどころか、とても悲しいけれど
父母は年をとれば取るほど、
ゆっくりと子供に帰っていく。
そして、我々は子を持ち
「父性」や「母性」をはぐくみながら
実際の父母の「父」や「母」の面を自覚していく。
多分、それが家族というものの一つの面。
深海に住む彼らは
父や母が人間になっていくのを目の前にいながら
許容できない。
絶対的な、求めても求めても足りない父性や母性を
永遠に追い続けて止むことをしらない。
でも、現実の世界は、そんな絶対者はいないのだ。
理屈では判っていても
本能が
欲求が
求めてしまう存在。
とてもはかない、そして乾いた欲望。
とても深く、とても悲しい欲望。

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