『はじめてのひと』最新刊第9巻を読んで。橘与(たちばなくみ)ちゃんの、一生忘れられないであろう恋に、触れる。
こんばんは。今宵はみなさん如何お過ごしでしょうか?
今回は、谷川史子先生著、「はじめてのひと」について少し語らせてください。まず本作品は、集英社ココハナで連載中。第1巻は2016年5月に発売、現在9巻まで刊行されています。谷川史子先生と聞くと、「世代だなあ」と感じるりぼんっ子の方も多いのではないでしょうか?私は30代で、ど真ん中世代!ではないのですが、大人になってから先生の作品が大好きになり、読み続けています。
さて、前置きはこの辺にして、「はじめてのひと」最新刊、読み終えて、私すごく悶えているんですが、そういう感覚抱いた方は、私だけではないのでは?と思って綴っています。共有したい!
この作品は基本主人公が一定の期間ごとに変わるオムニバス作品。だけど私は、どうしても橘与ちゃんについて触れたい。というのも、まあ先生自身がどう考えているか私は勿論分からないのだけど、1巻から登場して最新刊まで登場する、結構思い入れが強そうな登場人物だと、私的には思っていて。
そして私は、先生の意志とは関係なく、与ちゃんの恋に一喜一憂し、涙し、最終的に恋っていいなと思いつつ、うーー!!と悶えている。のでした。なので、与ちゃんピックアップ記事始めます。めちゃくちゃ短いです。
初めてで、全てが本当だった。抱きしめて抱きしめ返す、鮮やかな恋
絵画の修復士(キュレーター)として働く与ちゃんは、ある日諏訪内さんという、16歳の年上のチェリストと出会うんですが…。というストーリーは皆さんご存じかと思います。
与ちゃんは諏訪内さんに惹かれ、初めての恋を進行させ、恋の幸福を知っていくんですよね。だけど、諏訪内さん、実は結婚していて子供もいた。お互い途中からそれを承知で付き合いを続けるのだけど、まあ、辛い辛い。
諏訪内さん、ずるいし、そもそもこの人が悪いんだけど、本当にずるくて憎めなくて、何より与ちゃんが、本気で愛した人だ。
与ちゃんも与ちゃんで、不倫という罪悪感に押しつぶされそうになりながら、それでも彼といたい、彼と一緒にいる…汚れても…という覚悟を見せるのだけど、その覚悟に応えられなかった諏訪内さんは、彼女に別れを告げます。
この一連のストーリーが、うん、切なくて辛くて苦しくて、もう、もう……という感じで。私は不倫を容認しないし応援できないけど(とは言え口出しはしない)、だけど、「運命の人」ってどのタイミングで出会うか分からない。他の誰かと婚姻後に出会う可能性だってあるから、「運命の人」って厄介だな、といつも思っています。ちょっと恐いこと言うと、結婚したその人が運命の人かどうかも、実は私たち、分からないわけで。終わらせた恋にこそ、運命の人がいた可能性だってあるわけで。
別れを告げられ当然ひどく傷つく与ちゃん。どんなに胸を痛めたろうな。
どんなに、諏訪内さんの胸に、もう一度飛び込みたかったろうな。
諏訪内さんも諏訪内さんで、最後彼女がいないときに、はじめて「与」と名前を呼ぶんですよね。苦しいーー……。
閉じ込めた想いを受け止めて導いた彼との、新たな恋?
そして3年後、与ちゃんは職場で後輩もでき、仕事に精を出す日々。
恋愛とは遠ざかっています。
諏訪内さんのことも、思い出さなくなった日々。
けれど、指導していた後輩くんに、あるとき突然食事に誘われます。彼の名前は白石くん。
所謂、「好意を持っているので食事に誘っています」的な意味合いなんですが。
与ちゃんの心の中には、やはり無意識に諏訪内さんがいて、白石くんと関わる中で、それを実感していくんですよね。
忘れたはずだった。もう大丈夫なはずだった。だけど…。
ただこの白石くんというのが、これまたすごいスペックというか、私的大ヒットキャラで、谷川先生こういう子も描くの?!と驚かされました。端的に言うと、ゆるだるZ世代系なのに、攻めるとこ攻めるし、つけ込むタイミング・ポイントも分かっている(嫌がられて失敗することもあるけど)。見た目も個人的にすごく好き(笑)
何より、傾聴が、すごい。本音を引き出すのが、上手い。
白石くんがちゃんと優しく時に強引に引き出したから、与ちゃんは誰にも言えなかった本音や悔しさを、話せたんだと思う。私はそう思っている。
与ちゃんも頑張ったけどさ、白石くんは本当に、頑張ったし、頑張ったというか、好意を持った上で、最も誠実なやり方で彼女に寄り添ったのではないかなと、感じています。……どうか、報われて欲しい!
さてクリスマス。与ちゃんは白石くんと、諏訪内さんの出演するコンサートに行くことを、決意します。
個人的には諏訪内さんのコンサートに行くきっかけとなる、諏訪内さんと白石くんのやりとりが、激アツというか、何よこれ、もう、ずっと見ていたい……!という感じでしたが。諏訪内さんの、「いいなきみは そんなに素直に好きだって言えるんだよな」が切なすぎる……!うん、でも仕方ない。(と自分に言い聞かせています)
そしてコンサートは始まり、チェロを弾く諏訪内さんを見て、彼が奏でる音色を聴いて、与ちゃんは本当の意味で「さよなら」を果たすんですよね。
最後まで聴かないで、会場を後にする与ちゃんと白石くん。それをきっと、目にした諏訪内さん。うん、もう、言葉が出ないです。
最後、会場を出て、やはりまた白石くんがいい仕事して、与ちゃんのより深い本音を、引き出します。
「憎みましたか?俺がガキだから分かんないだけすか」
と訊かれ、
「憎んだ、私と同じくらい傷つけばいいと思った」
「だけど、でも、すごく好きだった。全部ほんとのきもちなんですね」
という会話をします。途中省いている台詞あります、すみません。
だけどこれ、「だけど、でも、すごく好きだった。全部ほんとのきもちなんですね」と白石くんが優しく象りまとめてくれたから、与ちゃんは、更に前に進むことができたのでは?と私は考えています。↓最新刊から。画像粗くてすみません。
最後に…。
最後に分かるんですが、諏訪内さん、離婚しているんですよね。
何という運命の廻り巡り。きっと諏訪内さんなりのけじめなんだろうし、与ちゃんを傷つけたことに耐えられなかったのかな、なんて勝手に想像したりして。何にせよ、最後の最後でもう消化できない気持ちでいっぱいになりました。いや、もやもやとかではなくて、切ないなあ、辛いなあ、そっかあ…谷川先生ー!みたいな(笑)
でも、仕方ないですね。諏訪内さんが悪いよ。(←そういうこと?!)冗談ですが、どうしても、そのときそのときで風向きは変わるから、何が正解かなんて分からないし、もしかして正解なんてないのかもしれないし、けどその瞬間、笑っていられる選択ができたなら、誰にとっても一番だよな、なんて思いました。
与ちゃんストーリーまだ続くかな?
まだまだ読みたいし、何より白石くんとの関係が気になる!
白石くんが見たい!
というわけで、「はじめてのひと」は有り難くもまだまだ続いていきます。
今後も楽しみにしています。
谷川先生のペンネームの由来のページもなるほど~と納得でした。
谷川先生のセンスや独創性、感性はもちろんだけど、ルーツはそこなのかな、などと勝手に想像しました。台詞やモノローグを本当に読み入ってしまう。引き込まれる美しさを放っている。
ではこのへんで。
今回も読んでくださり、ありがとうございました。おわり。