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おとなの掟(mf記)

『カルテット』というドラマにはハマった。
登場人物が弦楽器の演奏する人達だし、キャストもたまたま『民王』を見て高橋一生よいな、と思ってたところだったし(もちろん他のメンバーも良い)何処かミステリアスな雰囲気も悪くないぞと思って見始める。
これがストーリー展開も面白いし軽井沢のロケーションも素敵だし勿論音楽も良いしで大好きなドラマになった。

しかも名台詞の宝庫である。
それがとってつけたような名台詞ではないのにビシビシ響いてくる。
最も有名なのは高橋一生演じる家森諭高の言う「唐揚げにレモンするのは不可逆」という一連のやり取りだろう。

ドラマの内容や他の台詞にもいいのが沢山あるが、ここは歌のコーナーと自分で決めているので、主題歌『おとなの掟』について書いて行く。
この歌が超格好良くて、以前も書いたがこれで俄か椎名林檎ファンになった程にしびれた。
選び抜かれた言葉もメロディーも、そして出演者達によるМVのような映像も本当に素敵なんだなぁ。

恋愛において「白黒つけるのは恐ろしい」ことだと歌われている、その視点が面白い。
ドラマの中でもカルテットの4人はそれぞれが片思いをしていて、決着がつくわけではない。でもそれが一番、本人たちも見ているこちらも居心地がよいのだ。

ここで誰かと誰かが結ばれたら他の誰かは切り捨てられるのか?そうなってしまわないで欲しい、今の関係性のままでいて欲しい、と思ってしまうのだ。

【自由を手にした僕らはグレー】

そう、両思いになったところで束縛が始まる。彼らはその点、自由なのだ。


更に、ドラマの中で天気について語る場面がある。
「曇りは決して天気が悪いわけではない」
「曇りが好きだ」
などと登場人物が語る。
その曇り空はまさしくグレーではないか。
そして、終盤出てくる富山という地名。
ここはグレーの空のメッカである。

白黒、それは一方が晴天、もう一方が雨や雪を指すのなら、曇天こそが、どっちつかずに見えて自由でいられる空間なのかもしれない。

こんなことを考えるのはズバリ(薬の名前ではない)私が富山に住んでいるからだ。

正直、グレーの空は嫌いだ。ドラマの主人公とはそこが違う。
冬場は雪が降らなくても時雨模様で晴天の日は少なく、気持ちも鬱々としてしまいがちだ。冬季うつなんて言葉もある。
空が暗くジメジメしていると心にも影響を及ぼす。
それがある種のコンプレックスを抱くことにも繋がってしまう。こんな場所に本当は住みたくなかったのにな、みたいな。

でも、ドラマの中で真紀さんが実は昔富山にいたとわかり、すると彼女が曇りが好きだと言うのは何処か納得出来ることだったりして、ただでさえ面白く見ていたドラマが更に私の中で輝いて見えて来た。私と違ってそんな空模様が悪くはないと思っている人は確かに存在するだろう。

そうなると、歌の中の「グレー」も輝く。

グレーゾーンに居ることを良しとするのは「NOと言えない日本人」を象徴しているようでもあるけれど、それとはまた違って、関係性が儚いように見えて実は強いことを表しているように思える。
自由を手にした最強の色なのかもしれない。

優柔不断と紙一重のようにも見えるけれど、キッパリ決めたことに後悔なく生きて行ける人はどのくらいいるのだろうか。決めたから後戻り出来ないと自分を縛ることもあるんじゃないだろうか。
(決断について書いた『その橋を渡る時』という歌の時と矛盾しているようだけど、それぞれの考察があるってことで)

私はどうしてもグレーの空の下生きてると青空が恋しくなってしまうけれど、主に人間関係はあまりキッパリしてると落ち着かない場合があるのなら、グレーも決して悪くない。そこはやはり曖昧さを良しとする日本人らしい感覚なのかもしれないけれど。

余談ながら、グレーヘアというのも、髪を染めなければという強迫観念から逃れて自由になることかもしれないな、と年齢を重ねると思う。

【手放してみたいこの両手塞いだ知識どんなに軽いと感じるだろうか】

何もかも手放して一旦無垢になって、白から黒へ染まるまでの過程がグレーだとしたら。
個人的なことだが自分は射手座なのでそこが居心地いいと思うのかも。目的を達成してしまうよりは狙いを定めている時が好きだ。
曇天も、希望のある晴天への過渡期ならそれもいいかもしれない(逆は…まぁ、そんな日もあるさと思うしか)

こうして、穿った見方を色々したけれど、とても心に響く歌であるのは間違いない。それぞれに小さな嘘を抱えているけどお互い許し合ってその秘密を守るのが大人なのだ。そこが曖昧というかグレーに見えるかもしれないけれど生きて行く上でたいせつなことなのではないか。

ドラマと切り離してもいい歌だと思うけれど、やはりセットで味わいたい。


#おとなの掟
#カルテット
#椎名林檎
#Donutshole









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