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『佐藤勝利のすべて』ライブ感想

単独コントライブには年に何回か見に行くが、ここまで普段お笑いに縁のない方々に囲まれて見る、というのは初めてだった。彼女たちも慣れない現場にドキドキしていたのだろうが、私も逆に慣れない現場にドキドキしていた。

蓮見さんと勝利くん、両者のファンとして盛り上げぬわけにはいかない!と初日のチケットを取ったがゆえに、演者のドキドキも感じ取れる面白楽しいライブだった。



コント①三国志ごっこ

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舞台:職場
蓮見・勝利:会社員
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↓概要↓

舞台に机が3つ。勝利くん真ん中の机に板付きで明転。勝利くんの電話が終わったところで蓮見さんが入ってきて、下手の机付近で探し物をする。蓮見さんが忘れたものが「三国志を元にした小説」だったことから、三国志をメインテーマに会話劇が行われる。

蓮見さんが三国志の3つの国を説明しようとするも、「魏呉蜀」を「ギーゴとショク」と勘違いする勝利くん。蓮見「GiGOってゲームセンターかよ。えっ知らない?イオンモール行ったことない?」

勝利くんは3つの机を魏と呉と蜀に、自分の鞄に入っていたものを登場人物に見立てて三国志を説明させようとする。魏の人はメガネケースで、呉の人はタンブラー、蜀の人はメガネケース……は被ってるので、この本にしよう!ってそれ蓮見が探してたやつ!なんで持ってんだよ!

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↓個人的感想↓

圧倒的シンプルな会話劇…!初めてコントを見に来る人、しかも普段歓声あげることを生業としている人も多いだろう、と思って明転時の演出を考えたそう。まあ勝利くんは舞台もやってるから、静かに見るというのは意外と慣れてるんですよ。

固有名詞がたくさん出てくる、蓮見さんらしいコントである。「魏呉蜀」「GiGO」「イオンモール」「週刊モーニング」などなど。初めての人が多いとわかっているのに、三国志だなんて硬すぎるのでは……?と思ったけど、(初回だからか)段々客席がほぐれていくのを感じられて良かった〜。本気を伝えるためには良かったのかも。

私はGiGOを蓮見さんのラジオで知ったので、これは蓮見チョイスすぎる……意地か……?と思ったら本当にそうだった。面白さがわかるために固有名詞を知っているに越したことはないけど、こういうところで学んでいくのも個人的には楽しい。今後その言葉が出てきたときに、あのとき知ったワードだ…!と楽しい記憶を結びつけられるからね。


幕間①OP映像

チョコパの音楽とともに。YouTubeに出てきた映像をもとにしたアニメーション。この2ヶ月本当に楽しかったなあとしみじみ。


コント②彼女の香水

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舞台:香水ショップ
(香水をカスタマイズできるお店)
浦井:店員
蓮見・平井・勝利:客
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↓概要↓

蓮見さん浦井さん板付きで明転。浦井さんが蓮見さんの香水を作っていたところで平井さんが登場。あーだこーだいらない状況説明も含めて淀みなく喋る平井さんの話をまとめると、「フラれた彼女の香水の匂いが忘れられないからここで同じものを作りたい」とのこと。

蓮見さんの作った香水が、平井さんの探している香水に似ていたことから、あと1個の決め手を探すために3人で奮闘する。とそこへ勝利くんが登場。彼女へプレゼントする香水を求めていたが、なんと勝利くんのつけていた香水が平井さんの探している匂いと同じだと判明する。

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↓個人的感想↓

このネタから男性ブランコが登場。2人ともメガネ男で紛らわしいけれど、どちらかといえば浦井さんの方が真面目で、平井さんの方が変と思われるかもしれない。それを活かしてか浦井さんは常識的なことを穏やかに言うツッコミ、平井さんはずっと変なことを変な喋り方で言うボケとなっていて、当て書きウマー!と唸る。ちなみに実際は浦井さんも変です。

勝利くんは最後数分の登場で、そんな大ボケにしかならないような役どころを!と再度唸る。蓮見さんは普段わかりやすくボケることが少ないけど、スーパーツッコミの浦井さんがいるから、ボケる蓮見さんが見られたのも嬉しかった。蓮見平井のボケコンビ最高でしたね。

「もしかして…」からの「本当にそうだった!」「違うんかーい!」という展開も多く、笑いどころがわかりやすいネタだったと思う。1本目で本気を伝えつつ客席を温めてからの、絶対ウケる2本目、構成ウマ……。


幕間②お笑い勉強中の佐藤勝利

稽古日が勝利くんの誕生日だったためケーキを用意……したけど、ケーキの姿が変だったら?というドッキリ。で、勝利くんがなんてツッコむか3人それぞれ予想しよう!という企画。

ドッキリには2段階あり、まずはケーキが細かったら?というお題。平井さんは「ほそスイーツ、ほスイーツ?!」という平井ワールド全開の回答。蓮見さんは「え?な、なんだよこれ!おい!」みたいな、どうせツッコミは失敗すると見越しての回答でしたが、"ツッコミは失敗する"もわかるし、勝利くんの言い方のモノマネがうますぎてめちゃ笑った。本当に言ってそうだった。さすが当て書き王。

いやいやちゃんと用意していますよ!ということで再度ケーキが出てくるも、次はプレートが"佐藤敗北"になっていたら?というお題。蓮見さんが「1回目はどうせ失敗するから、2回目は取り返そうとして、めちゃくちゃ勢いよくツッコむと思う」というようなことを言っていて、わかるわかる勝利くんの解像度高すぎ〜〜〜〜〜!

結局勝利くんの1回目のツッコミは「ホールでくれよ!」となかなか良い感じでしたが、2回目は「もうムリ!疲れてんだよ!」と回答放棄。"諦める"というのもそれはそれでお笑いになってて良かったですよ。

YouTubeでも公開されたほスイーツ(リンクは下記)

コント③小道具

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舞台:稽古場
勝利・浦井・平井:コント芸人
蓮見:3人の先輩
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↓概要↓

4人板付きで明転。先輩の蓮見さんに、銀行強盗設定のネタを見てもらっている。小道具を一切使わず、ある"テイ"で身振り手振りしながらネタが進んでいく。台詞が飛んでしまったところで一旦講評。蓮見「小道具は使わないの?」3人「はい!今回は小道具なしでやろうと思ってて!」蓮見「最初地べたに座って胡座かいてたけど、本番はフラットな会場だから、後ろの方の人見えないと思うよ?」3人「そうか…じゃあソファに座ろう!」

3人は"見えないソファ"に座りネタを始めようとする。蓮見「待て待て待て、小道具はあったほうが良いって!」3人「いや、今回は一切使わないと決めていて」蓮見「なにやってんの?小道具を使えよ!」結局蓮見さんに怒られた3人は、実は用意していた小道具を次から次へと持ってくる。

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↓個人的感想↓

コント芸人の小道具事情は深掘りすると面白いですよね。椅子だけで複数の場面を表現しているのスゴ!とか、この壁どうやって運ぶんだろう!とか、同じ社会人でも服が変わると違う役に見えるな!とか。だから"小道具が豪華"というだけでめちゃくちゃ笑った。

2本目と同じくツッコミ1人ボケ3人の構造だけど、今度は蓮見さんがツッコミ、浦井さんがボケになっている。先程はツッコミの穏やかさが面白かったけど、今度はツッコミがめちゃくちゃ叫んでて面白い。構成ウマ……。

「小道具を次から次へと持ってくる」と書くとすごくシンプルだけど、ゴルフ、野球バットの並びでアメリカンクラッカーを持って、そしてそれがちゃんと意味あるの面白すぎ。このホワイトボードを裏返したら地図が出てくるやつ!と予想させて、ちゃんと期待を超えて来るのウマすぎ。勝利くんがバランスボールを持って来るの、需要がわかってて最高。

出落ちで笑かすのも、説明で笑かすのも、絵面で笑かすのも、ジワジワ笑かすのも、"小道具"だけでここまでできるのスゴすぎるよ〜〜


幕間③サウナ耐久レース

サウナにどちらが長く入っていられるか?!という耐久レースがスタート。蓮見さんは12分1セットやることが多いけど、勝利くんは10分以内を3セットくらいやってる、という話をラジオで聞いていたので、蓮見さんが勝つだろうと思ってました。

狭いサウナの中で2人で会話しているだけなわけですが、その会話の面白いこと面白いこと……。「熱くないの?」と当たり前のことを聞く勝利くんに対して、勝利くんが神業に出たときのVTRへのコメントが誰でも言えることだったとイジる蓮見さん。勝利「テレビって誰にでも言えることを真っ直ぐ言う仕事なんだよ」

蓮見「見た?俺のプレバト」勝利「俳句王のあれでしょ?」蓮見「バイク王みたいに言うなよ、ゴー🎶バイク王🎶じゃないんだよ、フリーダイヤルないよ」(←蓮見さんが畳み掛けるのは楽しいときだと思う)

蓮見さんは炎帝なのでサウナなんか熱いわけない!と予想通り13分すぎた頃には勝利くんがギブアップ寸前。蓮見「もう諦めろよ。負けを認めろ」勝利「なんでそんな喋れるの?」(←画面上で見てもなかなかキツそうな勝利くん)蓮見「参りましたって言って出てけ」勝利「参りました」

会話のテンポの良いこと面白いこと……本当に仲良いんだなあと思って尊くて泣きました。


コント④彼女の悪口

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舞台:旅館の銭湯の前の休憩所
勝利・浦井・蓮見:彼氏
平井:3人の彼女と一緒に女湯にいた人(女役)
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↓概要↓

彼氏3人板付きで明転。男湯女湯の暖簾の前で、椅子に座っている。勝利くんの彼女の誕生日に合わせて、彼女の友人とその彼氏さんと旅行に来た。あと20分ほどで勝利くんの彼女の誕生日になるためプレゼントを渡したいが、どうやって渡そうか浦井さんと蓮見さんに相談している。

そこへ女湯から平井さんが出てくる。一緒に入っていた女3人が、彼氏の悪口で盛り上がっててうるさかったそう。どんな悪口を言われているのか気になる3人は、平井さんと交渉して情報を得ようとする。

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↓個人的感想↓

設定が面白かった〜平井さんが女役で出てくるだろうとは予想ついたものの、3人と関係ない第三者だとは…!3人の関係性も気になるし、このあとどうなったかも気になるので、ぜひ続編が見たい!

平井さんはボケだろうが、他3人は勝利くんはわりとボケ、浦井さんは両刀、蓮見さんはわりとツッコミ…という緩やかな感じで、人数が多いならではだな…!と楽しめました。

前述のとおり平井さんに変な役が似合うのはもちろん、浦井さんの「すごく真面目そうで良さそうなのになんか変」な役もわかるすぎて、本当〜に蓮見さんは当て書きがうまい。それぞれにどんな彼女がいるのか…の背景設定も気になるので、また見られたら良いなあ。


幕間④漫才

YouTubeの第7話にあった光石研作(?)の漫才を披露!光石さんがツッコミ、勝利くんがボケなのですが、光石さんのツッコミが全部「間違ってるよ」で、ボケを間違えてると言われるのは恥ずかしいし優しすぎる!という勝利くん。ということで、もう少し厳しいバージョンでTake2。すると今度はツッコミが怖すぎてしまう。蓮見「アウトレイジかと思いました」今回はコントライブだけど、漫才やる勝利くんもまた見たいな〜。


コント⑤エモいフードコート

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舞台:イオンモール春日部のフードコート
勝利:佐賀の山奥の金持ちの坊っちゃん
蓮見:貧乏経験のある社会人の庶民
浦井・平井:坊っちゃんの付き人
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↓概要↓

舞台に机2つ。蓮見さんが上手側に板付きで明転。すぐに勝利くんがやってきて、下手側に座る。フードコートの仕組みに慣れていない勝利くんに、「フードコート初めて?」と問う蓮見さん。勝利「はい。僕、めちゃくちゃお金持ちなんで」

めちゃくちゃお金持ちなせいで、世の中のことを何も知らないのが嫌になって逃げてきたと言う勝利くん「さっき初めて映画を見たんですけど、貧乏だから電気がつかなくなるってのはリアリティがなくてあんまりでした」蓮見「えっ電気料金を払えなくて電気がつかなくなること、あるよ」勝利「え?」蓮見「みんながみんな自家発電できるわけじゃないよ」勝利「そうなんですか?!」

蓮見さんから"エモい"を学んで、それをやってみたい!という勝利くん。浦井さん平井さんが勝利くんを連れて帰ろうとしたときも、「エモいことしたいんだ!」と叫んで留まろうとする。

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↓個人的感想↓

貧乏を経験したこともありエモをたくさん知ってる芸人の蓮見さんと、中学生でデビューしてからずっとキラキラした世界にいるアイドルの勝利くん。そんな2人で遊ぶことについて、蓮見さんが「世間知らずな殿をお城の外に連れ出している感じ」と言っていたのを思い出すメタな作品。

貧乏庶民の"エモ"の描写は、蓮見さんの得意中の得意なわけですが、同じ目線にいる人とのコントが多いから、"めちゃくちゃお金持ち"な人とのコントは少し新鮮だった。


蓮見さんはコントライブで伏線回収するのが嫌い…というのは、ダウが演劇公演もやっており、伏線回収は演劇でやるからコントライブはひとつひとつのネタを楽しんでほしい、と思うがゆえのようである。

しかし今年3月に行われたダウ単独『30000』は、最後に『メタの夜』という伏線回収もメタもあるネタで終わった。これについて蓮見さんは「やるか悩んだけど、個々が売れてきて、個々を知ったうえで見に来る人も増えたから、やることにした」というようなことを言っていた。

今回は「勝利くんが出るから」見に来た人も多いわけで、『30000』の話に当てはめると、このようなネタで終わるのは納得である。

勝利くんは確かに普通の学生生活や、貧乏ならではのエモを経験してないだろうけど、決して"何も知らない"わけではない。むしろ浅草のホッピー通りなど、庶民の私でも経験ないことを知っている。知ってる/知らない、経験している/していないは人それぞれだから、型にはめ込んでああだこうだ言うのも不健全だと思う。だから型に飲まれる必要は決してないんだけど、こうして笑いにしてくれるのは楽しみたいし、嬉しい。そしてなにより面白かった。


エンディングトーク

勝利くんが「小さい頃からの夢が叶いました!」と元気に言っていて、泣きそうになった。お笑いの仕事で"すごく熱心で真面目だった"と色んな人に言われてきたが、その熱意がつながってここまで来たんだ、と思うとすごい、エモい。

とは言いつつ、『グラタングミ』を出したときの客席ヒィ~~~~~~~って反応は本当に面白かった笑。「自信を持って言ったのに、思ってた反応が来ない」というのは芸人さんなら一生に一度は経験しているであろう。最後の最後に勝利くんのその姿を見ることができてクゥ~~~~~~ッッてなりました。良。

勝利くん、蓮見さん、橋本さん、浦井さん、平井さん、スタッフのみなさん、楽しいライブを本当にありがとうございました!