Giving Campaignの狙い

Alumnote代表の中沢です。

私たちは「次世代の教育に資本をまわす」をミッションに掲げ、大学に新しい財源を構築するためのソリューションを開発している東大発スタートアップです。


私たちが企画・運営をしている「Giving Campaign 2024」が開始して早5日が経ちました。累計参加人数10万人突破を記念して本イベントの狙い・背景を簡単にご説明させていただきたいと思います。

10/15 3時半時点(ほぼ折り返し地点)での参加人数と創出寄付金額

Giving Campaignは日本最大級の”学生による”資金調達イベントです

Giving Campaignは、日本全国の大学生がSNSやOB・OGネットワークを活用して、部活動やサークル、研究室への支援を募る10日間のオンラインイベントです。

  • 2021年冬に第1回が東京大学にて開催、第5回になる今回は100大学での同時開催+文部科学省による後援

  • 在学生・卒業生・保護者等の大学関係者は、スマホで簡単に団体に対して「応援投票」を行うことができます

  • 各団体は獲得した応援投票数に応じて、Alumnoteと本イベントを支える協賛企業から支援金が分配されます(応援投票を行った後、任意で寄付を行うことができます)

下記の動画を見ていただくのと

下記のリンクから実際に投票してもらうと簡単なイメージを掴んでいただけると思います。(10/20まで投票可能です)

コンセプトは「寄付を依頼しないチャリティーイベント」

既存のクラウドファンディングとの最大の差分は、Alumnoteから学生・大学に事前にコミットする資金プール(=Alumnoteと本イベントを支える協賛企業から支援金)の存在です。

分配する資金プールがはじめにあることで「応援投票の獲得=支援金の獲得の仕組み」が可能になっており、同時に学生に対して資金調達活動の結果の保証も一定してあげられます。

誰にとっても寄付の依頼はハードルが高いが、アニメの人気キャラ投票のような「オンライン推し活イベント」に落とし込めば絶対に盛り上がる。イベント全体の盛り上がりに乗じて、学生の呼びかけがOB・OG等に行き届くようになれば、個人による学生・大学に対する寄付も自然と発生するはず、そういう設計となっています。

下記は学生によるSNS投稿の一例です。ぜひご覧ください。

(その他投稿は、X、Instagram共に#GivingCampaignでご覧ください)

また大学目線でのGiving Campaignに参加する意義は大学コミュニティの活性化です。

多くの大学では、卒業生とのつながりが薄れており、卒業後に大学のデータベースに登録された連絡先が更新されないケースが多々あります。連絡先が更新されないままだと、卒業生に連絡できる手段が実家の住所への郵送に限られてしまい、重要なステークホルダーである卒業生とのコミュニケーションは、ほぼ途絶えたも同然です。

一方、部活動・サークル・研究室には今も尚縦のネットワークが強く残っています。大学全体に対してはそこまで愛着を感じていない人も多いかもしれませんが、自分がかつて所属していたこうした小さなコミュニティには、誰しも一定の思いを持っているのではないでしょうか。

したがって、大学関連団体を多く巻き込むGiving Campaignを毎年開催していくことで、大学本体の縦の繋がりをも強固にしていくことにも寄与できると考えております。

さらに、Giving Campaignを1大学単位ではなく100大学で同時開催する規模感にすることによって、民間企業の参画を可能としています。

上述の学生・大学にコミットする資金プールを営利会社に拠出していただくためには、相応の費用対効果の説明が必要ですが、過去4回のイベント開催実績を通じて、事前に数十万人規模のイベントになることを一定担保できるようになりました。これにより人的資本への先行投資・ブランディングの一環で出資してくださるスポンサー企業様が見つかるようになってきました。

とはいえ企業様向けのご提案はまだまだ発展途上の段階にありますので、Giving Campaignの理念への共感と弊社への今後の期待込みで、今回スポンサードしてくださった企業の皆様には、改めて感謝申し上げます。

また「応援投票の獲得=支援金の獲得の仕組み」や上記全てのフレームワークを構築する上で、Alumnoteにも大きなリスクが伴います。

  • 大学と学生にGiving Campaign案内をする前に、事前の資金プールの全体額をAlumnoteがコミットする必要性

    • 仮にスポンサー企業から集まる金額が必要金額に満たなかった場合は、Alumnoteによる持ち出しで補填することを事前に約束

    • 参加大学数と各大学ごとの参加団体数の規模によって資金プールの必要金額は変動、またAlumnoteが掲げるミッション的に全ての大学・団体を対象としなければならない→資金プールの必要金額は最大値となることを前提に計画を練る必要性

  • 企業にGiving Campaign案内をできるタイミングは参加大学が確定してから

    • 今年の参加大学数が確定したのは8月後半、Giving Campaignの開始は10/11→ざっと2ヶ月程度でスポンサー企業を募る必要性

    • 参加大学確定後に初めて学生へのGiving Campaignの案内が可能→スポンサー企業の募集と同時に学生への説明活動が100大学で同時に進行

とはいえ、今年でGiving Campaignの運営の仕組み化がほぼ完了したので、来年以降は上記のリスクは基本的にありません。

大胆かつ大きなリスクの取り方を許容してくれた投資家の皆様にも、改めて感謝申し上げます。

次の10年で、大学の資金不足問題を解く

2024年は数多くの大学の財政難に関するニュースが取り上げられました。
いよいよにっちもさっちもいかなくなっていることが伺えます。

(この記事に関しては4日前にリリース)

大学にお金がないことで、例えば、経済的な不安により研究者になりたい人が減ったり、研究者が資金調達活動に忙殺されて研究に時間を使えなくなったり、優秀な人材が海外に行ったっきりといったことが今現に起きています。

早急な課題ではありますが、この問題を短期で解決することはほぼ不可能ですし、解決を急ぐべきでもありません。

1-3年で2桁億の収入を大学が作り出そうとすると、知財収入や授業料収入をその期間で引き上げることは困難ですから、遺贈寄付や大口寄付を期待できる富裕層への営業が唯一の手段となります。

しかし、大学の経営に大きなインパクトを与えるためには、大学の規模を考えると毎年安定して100億円ほどの資金が必要です。周年事業をきっかけに一度限りの大口寄付を集めることはもちろん大きな意味はありますが、それを長期的な大学運営の基盤とすることはできません。

目先の収入源の確立を急ぐのではなく、潜在的な寄付者層の愛校心を醸成するためのサービスを考えたり、大口寄付者になりうる富裕層の全体数を増やすため施策を打ったり、大学が織りなす社会的なインパクトを広報して裾野を拡大していくことが、10年以上のスパンでは間違いなく本質です。

大志を抱き続ける若者をどれだけ増やせるか

言うまでもなく、日本の人口は今後減少していきます。

そして人口とGDPは強い相関関係にあり、2025年にはインド、2050年にはインドネシアにまで追い抜かされてしまうのではと言われています。

自分が身を置くスタートアップ界隈では、既存業務をAIやソフトウェアで効率化する事業が流行っていますが、人口減少がもたらす大きなダウンサイドを鑑みると、全ての微々たる話のように思えてしまいます。この必ずくる右肩下がりに立ち向かうには、全く新しい産業を0から勃興させたり、一人当たりの生産性を飛躍的に向上させるイノベーションが奇跡のように沢山生み出されないといけない気がします。

そしてそれらを生み出す可能性をもつ大学や若者に、国全体としてフルベットする他ないと私自身考えているのですが、あまり投資が集まっていない現状に甚だ疑問です。

研究者としての道を宣言していた友人が将来の不透明さからアカデミアを諦め、民間企業に就職したり、官僚になって国家を支えると宣言していた大学の同級生が外資系企業に就職する場面に何度も遭遇しました。もちろん、それ自体は悪いことではありませんが、どこか寂しさと日本の将来への不安を覚えます。

優秀な若者が未知に挑戦したり、自分の枠を超えて他者と次世代を見据えた行動を取るためには、セーフティーネットの存在と挑戦を奨励する雰囲気が必要です。そしてこれらの整備さえできれば、逆転満塁ホームランが連発されてもおかしくないとも信じています。

最後に

Giving Campaignは僕が大学4年生のときに企画したイベントです。コロナの到来で暇になり、海外大学の資金調達事例を漁っていた時に、1日で30億円もの寄付が集まるコロンビア大学の「Giving Day」を発見し、これを日本でやりたい!と思ったことがきっかけでした。

「Giving Day」は、投票という概念がなく純粋なチャリティーイベントで、それでは日本では全く盛り上がらないと思い、あれこれこねくり回して(笑)ローカライズしたのがGiving Campaignです。

「Giving Day」とGiving Campaignでは、集まる金額の規模は違えど、学生や大学が毎年お祭り感覚で寄付を募っている様子がサイトから伺えます。

このカジュアルな雰囲気から、重要なのは集まった金額というよりも、どれだけ多くのステークホルダーを巻き込めたかだと勝手に想像していて。

資金の恩恵を受ける学生自らが資金調達に参加し、その険しさや有り難さを体感することで、将来的な「被支援者→支援者」への自然な転換を促すプログラムとなっているのだと思います。

Giving Campaignもまだまだ始まったばかりですが、今後長い年月をかけて寄付文化醸成に身を投じていきたいと思います。

まだご参加されてない方は是非こちらから。


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