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夜桜と共に恋がパッと散った話


東京に住んでる頃私にはいい感じの彼がいた。
仮に柏原と呼ぶ。

良く二人で遊んでいかにも東京観光みたいな!デートみたいな!事をしていて私はとてもウキウキしていた。

飲みに行くデートもあったけど、浅草で鰻重を食べて寺をブラブラして煙を浴びたり、ドライブして寿司を食べたり、夜の葛西臨海公園をブラブラ散歩して止まっている観覧車を見たりした。
止まっててもいいの。だって楽しいから。

私は散歩が好きなのでとても楽しかったしどれもちょうど良いデートだった。

ある日[背中になんて書いたでしょうかゲーム]というしょうもない事をしていた。
でもお気に入りの柏原とは何をしても楽しかった。マリカーでもしりとりでも何でも楽しい。
私は[りんご]とか[なにたべる]とかしょうもないゲームでしょうもない事を書いていた。
柏原から私の背中に書いたものは
[ぬき]だった。
「あ!わかった!ぬき!」とすぐ答えたが
「あ〜…うん」みたいないまいちな反応だった。
後日あの時もしかして[ぬき]じゃなくて[すき]って書いてくれたんじゃないか?!と思い焦る。
この時の話は【ぬきとすきは似ている】というタイトルが友達内で付いて三年に一回くらい思い出す伝説になった。

柏原とのデートがあるが進展のない日々。
季節はちょうど春だったので夜桜を見に行くことになった。
なんて素敵!いかにもデート!場所は上野公園!めちゃくちゃ最高だ!

上野公園は夜桜がめちゃくちゃ咲いててとても綺麗だった。上野の動物園は行った事があるが夜桜は初めて。
花見ウェーイみたいな人も少しいたけど気にならないくらいだった。
東京の春は夜でも心地よい暖かさで気分も最高。何度もデートを重ねいい感じの柏原といい感じのデート。最高だ。

そこで買い替えて半年以上が経ち完全に使いこなせているiPhoneが鳴る。
メールを確認するとチアキからだ。

【今ぬきんちの近くでみんなで飲んでる!今日泊まるから!早く帰ってきて!!!】



…最悪だ。


これ以上最悪なタイミングがない。
「今週遊ぼう〜!」とか「今月みんな集まれる日いつ〜」とかの連絡は今まであったけど
今!家の!近くで!飲んでる!!!
なんて連絡はその日が初めてだった。
終電までそんなに時間がない。
というか私が本当に帰らないとチアキ達が泊まる所がない。
それは別にいい。勝手に来てるんだから勝手にホテルでも公園でも泊まれば良い。
私が住んでる亀戸からチアキんちは1時間以上かかるのになんでいるんだ…なんで今日なんだ…なんで今日空いてる?の一言がなくてもういるんだ…何のためのiPhoneなんだ…
亀戸の良いところは飲み屋さんが多く平日の昼間からどこでも酒が飲める。
でも悪い所は開店が早い分閉店も早い。
夜の12時を過ぎてやっている店が当時あんまりなかった。

どうしようか3秒迷って私は帰る事にした。

せっかくの上野デート!せっかくの夜桜!だったけど突然のお泊まりが決まってちょっと楽しみになってしまった。

亀戸につくと「こんな時間まで何してたの?男?」と聞かれた。

なぜわかる…
今までそんな話しした事なかったのに。
さすが自称女子高生探偵。
その後のお泊まりでいろんなデートの話しをしたり【ぬきとすきは似ている】と名言が出たりした。
チアキの彼氏殺し屋は「お前絶対今日帰るの間違いだったよ」と言っていた。
あなた達のせいなのに。

後日柏原からメールが来た。

[彼女が出来たからもう会えなくなった。今まで楽しかったよ。 柏原]

フラれた。
告ってないのにフラれた。
あんなに進展の無いデートしてたのに!
彼女って!同時にデートしてた人がいるんですか〜私もいたけど付き合ったんですか〜
メールの最後に自分の名前を書くのはなんなんですか〜
なんか自分に酔ってて嫌だわ〜

そうして私の恋は上野の夜桜と共にパッと散った。
散歩したり映画を見たり楽しかったし「劇団四季を見に行きたい」という提案以外は何でも受け入れてくれたのに。

誰かこれを読んで一曲書いてほしい。

#夜桜 #桜 #上野 #上野公園 #葛西臨海公園 #失恋 #凸 #お節介な友達

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