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『秒速5センチメートル』から学ぶ、人の惹き付け方と過去を乗り越える大切さ


こんにちは、あもんです。

映画考察3作目『秒速5センチメートル』

難しすぎる...。これを題材として選んでしまった自分に少し後悔しながら、2回観ました笑

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あらすじ


小学校の卒業と同時に離ればなれになってしまった遠野貴樹と篠原明里。2人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけがただ過ぎていった。そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行こうと決意する...。

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まず、この映画は三部に分かれていて、


第一部『桜花抄』
第二部『コスモナウト』
第三部『秒速5センチメートル』


という感じなんですが、テーマとしては「儚き初恋」ですね。


桜が枝葉から地面に落ちるまでの、儚く、そしてどうしようもない主人公の初恋の模様を描いている短編映画です。


『桜花抄』は、桜が枝葉から離れたときの情景

→主人公(以下貴樹)と明里が恋に落ちる辺り


『コスモナウト』は、桜が地面に落ちるまでの情景

→貴樹が初恋と向き合い、もがいている辺り


『秒速5センチメートル』は、桜が地面に落ちたときの情景

→貴樹が初恋を乗り越え、次に進もうとする辺り


こんな感じで話を分けていました。


※秒速5センチメートル = 桜の花が落ちる速度


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●世界観に入り込ませる作り方


あまり数は観ていませんが、新海誠監督の映画の多くはナレーションを含んでいます。

「秒速5センチメートル」も「君の名は。」も「天気の子」も、すべてナレーションが入っていたと思いますが、新海誠監督は


『いかに観衆を映画に入り込ませるか』


ということを意識して映画を作っています。ナレーションというのは、そのための1つの技術ではないかと。

ナレーションが入るとき、人はそれに耳を傾けながら、映画を観ますよね。

この映画ではいかにも小説チックなナレーションが多く入っていました。

主なのは第一部『桜花抄』で、貴樹が明里に会いに電車で向かっているとき。

・乗り換えのターミナル駅は、帰宅を始めた人で混み合っていて、誰の靴も雪の水を吸ってぐっしょりと濡れていて、空気は、雪の日の都市独特の匂いに満ちて、冷たかった。
・窓の外の、見たこともないような雪の荒野も、じわじわと流れていく時間も、痛いような空腹も、僕を益々心細くさせていった。
・たった1分がもの凄く長く感じられ、時間ははっきりとした悪意をもって、僕の上をゆっくりと流れていった。僕はきつく歯を食いしばり、ただとにかく、泣かないように、耐えているしか、なかった。

などなど、最初は「小説の映画化かな?」と思ったくらい、情景描写のナレーションだらけでした。

小説というのは絵がない分、情景描写を描くことで読者に情景を想像させる必要があります。

それを映画でやることで、さらにその世界観に入り込ませるために、これだけナレーションを入れたんだろうな〜という感じですね。


第一部『桜花抄』で、長い旅路のあとに明里と会ったときの灯の光などは、それまで不安だった貴樹の心情が少し明るくなったのを示していますし、次の日の晴れやかな天気も、前日と打って変わった心情を表しています。

この天気と心情のリンクがあることで、より惹き込みやすくなるんですよね。


そしてもう一つのテクニックですが、それは『二項対立』です。

新海誠監督の映画は、二項対立というのがとても多いです。1年くらい前に「君の名は。」の考察をインスタに投稿したんですが、


『君の名は。』が大ヒットした理由を分析してみたらわかった魅力を生む技術


そもそも、人は潜在的に二項対立、二元論で物事を見る特性があります(単純で分かりやすいから)。


そしてこの映画では、


男:女
都会:田舎
光:闇
桜:雪
春:冬
海:陸
室内:室外
向かう:待つ
不安:安堵
赤:青
幻想:現実
虚しさ:温かさ
朝:夜
晴れ:大雪
バイク:徒歩
手紙:メール
1人:2人
優しい:冷たい
ショート:ロング
覚悟:不覚悟
静寂:喧騒
近く:遠く
追う:追われる


などの二項対立が出てきました。

それらを上手くいれることで、男性でも女性でも、都会住みでも田舎住みでも感情移入しやすくなるし、

観衆の儚い想い出が春でも冬でも、室内でも室外でも、追う側でも追われる側でも、晴れでも大雪でも、手紙でもメールでも、自分の当時の想い出を当てはめやすくなるんです。


多くの人が若い頃、儚い恋の経験があります。

こうして二項対立のものを多く取り入れることで、そういった儚い恋の経験を思い返しやすくさせて、映画の世界観に入り込んでもらう。

これが、新海誠監督の映画の1つの特徴ですね。


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これを映画ではなく日常で使うにはどうすればいいのか。


①自分の脳内のイメージをそのまま相手にもってもらうこと

②相手にジブンゴトとして考えてもらうように話すこと


この2つですね。



コミュニケーションにおいて大切なのは、自分のイメージをそのまま相手に共有してもらうことです。

例えば、「犬!」と言ったときに、相手が自分と同じ犬種、もっと言えばその犬種の中でも、さらに細かいところまで一致させてあげることが、コミュニケーションの理想です。

これを「犬と言えばチワワでしょ!」と押し付けてしまうと、価値観を共有することはできません。

だからこそ、脳内描写をしっかりと相手に伝えてあげればいいんです。



現在、オーストラリアで大火事が発生して、甚大な被害をもたらしています。

Aさん→オーストラリアに行ったことない
Bさん→オーストラリアに旅行経験あり
Cさん→オーストラリアに3年間住んでた

この場合、今回の大火事で一番反応するのはCさんですよね。なぜならCさんは3年間住んでいて、オーストラリアの都市や自然などを知っているからです。


『自分と関係のある場所』だからこそ、反応するんですよ。


自分の家の近くで殺人事件があるのと、遠い土地で殺人事件があるのとでは、関心が変わるでしょう?

であれば、「どうすれば相手がジブンゴトのように考えてくれるか?」を意識して伝えてあげれば、相手の反応率は自ずと変わってくるんです。

自分が伝えたいように伝えるのではなく、相手の立場は心境を考えながら伝えてあげるだけで、全然変わります。

この2つを意識すれば反応率も上がるし、相手も自分の話にしっかり耳を傾けてくれやすくなるし、会話がすれ違うことも減るので、意識した方がいいことですね。


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●過去はさっさと乗り越えろ


第二部の『コスモナウト』のとき、貴樹は同級生の花苗に好かれていました。

しかし、貴樹は明里との想い出を引きずって、現実を生きるのではなく『幻想の世界』をずっと生きていました。

その結果、種子島では虚無感のある日々を送っていたんですよね。

花苗が帰り道、告白しようとして涙を流したとき、宇宙に向けてロケットが発射されました。

あのロケットは貴樹自身です。観た人は分かると思うんですが、ロケットの飛行機雲は明と暗をハッキリと分けていました。

あれは恐らく『(明)現実世界に戻るか』それとも『(暗)幻想世界に残るか』を分ける大きなポイントが〝告白〟という一大イベントだったんだと思います。

そして、そこで告白されなかったことで、貴樹は幻想の世界に取り残されてしまったんです。


第三部の『秒速5センチメートル』では、明里は既に違う人と婚約していて、幸せな生活を送っていました。

一方貴樹は、幻想世界から抜け出そうと違う人と付き合ってみたものの、心は抜け出せず、相手にも見抜かれて破局に至りました。

エンディングのとき、中学時代の途中で明里から手紙が届かなくなったことが映されています。


つまり、明里は早い段階で幻想世界から抜け出した(または抜け出そうとしていた)んです。

だからこそ、貴樹が社会人になって、幻想世界から抜け出すための一歩として会社を辞めた頃には、明里は違う幸せを手に入れていたんです。


女性は『上書き保存』
男性は『フォルダ保存』

恋愛においてよく言われていることですが、この映画でもその通りになりました。

女性の方が良い意味でリアリストであり、今を生きることができます。逆に男性の方がロマンチストで、過去を引きずりがちです(もちろん個人差がありますけど)。


ここから考察すると、恋愛に限らず、過去をひきずって今を生きている人ってとても多いですよね。

「以前鬱だったから...」
「過去にいじめられたから...」
「あのとき大失敗したから...」

そうやって過去起きた出来事を引きずって、過去の呪縛から逃れられずに苦しんでいる人がとても多いんですが、


さっさと乗り越えましょう。


この映画では乗り越え方は言及されていませんが、さっさと乗り越えないと、貴樹のように自分と自分の周りの人を傷つけてしまいます。

明里のように、なるべく早く区切りをつけて、次のステップに進まなければいけません。


何か過去の出来事をいまだに引きずっている人は、なるべく早く乗り越えましょう。


そのために、もう一度その過去と真剣に向き合って、認めて許してあげること。


認めて許した瞬間に、その過去を乗り越えて、糧にして生きることができるようになりますから。

誰かのためになるよりよい発信のために精進させて頂きます。