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川端龍子と会場芸術 その3
リクエストにお応えして、の「川端龍子と会場芸術」その3です。
こんなに長くなるとは思わなかった!との声が聞こえてくるようですが
後悔先に立たず!
どうぞ最後までお付き合いください。
とはいえ、川端龍子のネームバリューにあやかったおかげか
たくさんの方に読んで頂いております。
どうもありがとうございます。
その1「川端龍子=愉快犯説」
その2「川端龍子は愉快犯ではなかったのだよ説」
さて、愉快犯ではなかった川端龍子。
絵を観る人と自身の感動を考えた結果「会場芸術」を牽引しました。
今回は龍子が想いを懸けた、「会場芸術」はどういう背景に生まれたのか、なところに焦点をあてて参りましょう。
TOP画像は私の卒業制作(1530×8415㎜)です
明治に入ってからの日本絵画は西洋の影響を受けて揺れに揺れます。
従来の材料・描法、美術教育まで変え、
ハト派もタカ派もこれまでのままではいられなかった時代。
明治の終わり1912年には
洋画と足並みを揃え、日本画壇も公募展を開始しました。
そんな中、洋画家だった龍子、1913年に渡米します。
渡米しますが日本人が描いた西洋画の映えなさに愕然。
龍子、むしろ平家物語絵巻カッコイイ!となって日本画に転身します。
とはいえこのギャップに見舞われたのは彼だけではありませんでした。
1920年代には、各国から日本へ海外展示のお誘いがきます。
そこで展示運営側に聞かれるわけです。
どんな風に展示したいかと。
その時の日本画勢の困惑たるや!
言えるものなら言いたかったでしょう、
日本画を活かす展示とか考えたことないです、と。
運営によっては「日本画って座って鑑賞したり、床の間に合うように描いているから展示スペースを和室にしようよ!」なんていう、
素晴らしいプランを立ててくれる場合もあったようです。
そうした陽の当たる場所に出ることなど考えていなかった日本画。
見事に映えません。
幽玄な霧の表現とか、まったくもって映えません。
これはまさしく読んで字のごとく、場違いであったことでしょう。
さて困った日本画壇、二手に分かれます。
「そうか、床の間が俺たちの生きる場所」の大観
「床の間を捨てて百貨店に出よう」の龍子
百貨店展示は、彫刻や油絵の新たな発表の場にもなっていきます。
必然的に会場は、どんな分野でも展示しやすいニュートラルな空間となり
それはやはり「床の間」とは異なる、白く明るく広い場所。
そこに似つかわしい作品を追い求め、
大型で濃厚な色づかいの絵、「会場芸術」が刻々と形成されていったのです。
こうして見てみると、
龍子がいなくてもやはり「会場芸術」は現れたでしょう。
画家個人の「こう描きたい!」とは別のところで
できあがっていくものがあります。
見てもらう場所
見てもらう人
会場芸術を進めていった絵描きたちが抱いた、
「そういう風に描きたかった」「描いて楽しかった」とは別に
展示する場所があり、それに見合う大きさ・色あいがあり。
自身の描きたいものとそれらが一致する場所を獲得できることが
描き手にとって幸せなことだと思います。
現に今の日本画壇でも、
年に一度、大型作品を展示する公募展があります。
そこに応募する描き手は
否応なしに2m四方のパネルを買い、描くという。
このサイズ描きたかったんだよね!と思っている人はあまりいないように思います。
これもまぁこうしてみるとエライことです。
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私は好んで大型作品を描く派です
余談ですが、一方の大観、
けして保守的な意味での「床の間芸術」だったわけではありません。
むしろ「日本画とは何なのか」という問題に気付き
その答えの1つに「床の間」を据えました。
絵だけが「日本画」たらしめているのではないとわかったからこそ、
「日本画」を追究するために「床の間芸術」をあえて進めていく。
「全ての絵画が同じ展示方法であって良いはずがない」という、
これまた革新的な課題を突き付けた形です。
次回は(まだ続く)
アートと展示の関係性について書きたいなぁと考えています。
(会場芸術、床の間芸術とは異なる「卓上芸術」というのがありまして…)
気持ちはどんどん広がります。
またお付き合い下さいますと幸いです。
おまけ
下記リンク記事の終盤で
大観、龍子に加え川合玉堂の仲良しコラボ「松竹梅」が見られます。
「大観、龍子 2ショット」で画像検索すると
とても良い笑顔の二人が見られますのでそちらもどうぞ!
新たなアートシーンに対峙した際、見つけた道は異なりましたが
二人とも仲良しで何よりです。
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